今の会社ではなかなか昇給できないので転職しようか迷います【転職相談室】
昇給を期待して仕事をコツコツ進めてきたけれど、なかなか機会をもらえないというSさん。
将来への不安から転職も考えているといいます。
転職の前にやれること、転職の際に考えるべきことを、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんがお答えします。
目次
今の会社ではなかなか昇給できません。転職しようか迷っています(Sさん/メーカー・経理/30代/男性)
今の会社で3年ほど働いていますが、昇給する気配がありません。
転職時の求人情報には「昇給あり」と記載されていましたし、面談でも定期的な昇給の機会があるといわれました。
現在は、3人のチームリーダーを任されており、このまま仕事量ばかりが増えて昇給できないのかと不安があります。
転職を視野に入れて考えるべきでしょうか。
転職を検討する前に、まずは上司と話し合いをしてみては
アドバイザー
転職を考える前に、まずは現状の理解から始めましょう。
一般的に、会社には3ヶ月から半年など、定期的に業務達成度を振り返る評価の機会があり、それに基づいて昇給・昇格の判断がなされています。
個々人やチームの目標に対して、達成できたかどうか、未達であれば次の半期で何に取り組むべきかといったフィードバックの時間が設けられていることもあります。
Sさんの会社ではどうですか?
相談者
半年に1回、上司との面談があり、仕事の悩みやチームメンバーのことを相談したりしています。
仕事内容に関しては、業務の目標数値のクリアや納期の厳守など、大きなミスなく3年間やってきているのですが…。
アドバイザー
きちんと評価制度やフィードバックの機会がある中で、昇給の打診がないということですね。
もしかしたら、Sさんの自己認識とは異なり、会社や上司から仕事内容を評価されていないのかもしれません。
相談者
やっぱりそうですか…。
自分なりに、効率よく仕事を進めてきて、これでいいんだと思い込んでいました。
何を直していくべきなのでしょう。
アドバイザー
まさにそれを、上司の方に聞いてみてはいかがでしょうか。
仕事の悩みや相談を打ち明けられるような関係でしたら、正直に「昇給したいのですが、今の自分には何が足りないのですか」と聞いてみてもよいでしょう。
今後、転職を考えるにしても、「自分としては結果を残しているつもりだった」という認識のままでは、また同じことを繰り返す可能性があります。
今まで昇給できていなかった理由をきちんと聞いて、今後の取り組みを話し合うことで、次の仕事にも活かせるのではないでしょうか。
昇給を実現するために押さえておきたいポイント
相談者
では、昇給に近づくために、どんなことを意識すべきでしょうか。
会社の賃金相場を教えてもらい、目標(相場)について確認し合う
アドバイザー
まずは、会社の人事制度や賃金体系を理解することが大切です。
人事制度には、能力や職務、役割などによって等級を定める「等級制度」があり、「メンバークラス」「マネージャークラス」などのレイヤーによって給与水準が異なります。
そこで、自分がどのレイヤーに所属していて、次の等級への昇給によっていくらのアップが見込めるのかを確認しましょう。
具体的な賃金相場が見えてくれば、どこを目標にすべきかがわかります。
相談者
昇給にも細かい仕組みがあるのですね。
単純に会社に貢献したらすぐに昇給するものだと考えていました。
アドバイザー
はい。主な評価項目には、能力評価・業績評価・態度評価などが挙げられ、とくに能力評価の部分は、基本給や等級アップに直結してきます。
つまりは、能力評価に対する目標について上司と確認し合うことが、昇給への近道とも考えられるでしょう。
会社が求めるものをクリアできるように経験・スキルについて考える
相談者
なるほど。
でも、目標が見えたところで、具体的に何を改善すべきかがわからなければゴールに到達できませんね…。
アドバイザー
そうですね。
会社が求める成果や取り組む姿勢のレベルを理解することが大切です。
上司の方や人事担当者などに、会社がSさんに具体的にどんな経験・スキルを求めているのかを考え、評価が芳しくないポイントはどこかを確認し、クリアにしましょう。
例えば、Sさんはきちんと納期を守り、自分の業務に取り組んでいると思っていても、会社は、さらにチームリーダーとしての育成、マネジメントスキルまでを期待しているかもしれません。
また、効率化の観点からSさんのスピード感に物足りなさを感じていたり、部署を横断した社内の取り組みにもっと積極的に取り組んでほしいと思っていたりと、Sさんが気づいていなかったさまざまな改善点が見えてくるかもしれません。
相談者
なるほど。
これまで会社が自分に求めているのはどんな役割かを、よく考えて行動していませんでした。
アドバイザー
上司との認識が異なっていると、「成果を上げる」方向を間違えてしまい、「こんなに努力しているのに昇給につながらない」とさらに不安が募ってしまいます。
評価者である上司の言葉を素直に受け止め、改められる点は改める姿勢が大切です。
相談者
「自分はこういう働き方をしたい」「やってきたのだから評価して」と一方的に思っていたのかもしれません。
昇給を目指す以上は、求められることに応える姿勢が大切ですね。
転職する場合のアドバイス
アドバイザー
もし「昇給したい」という理由で転職を考える場合、難しいのは情報収集です。
具体的な昇給頻度や金額の上がり幅などは、企業にとって機密情報であることが多く、事前に知ることが難しいケースがほとんどです。
相談者
確かにそういった情報を入社前に確認できたことはありませんね。
昇給の仕組みを知るのが難しい場合、どんなことをチェックするとよいですか。
アドバイザー
「昇給したい」=「年収を上げたい」という認識だと思うので、転職を検討する際は、年次に対する年収例や、賞与はどう出ているのか、手当てによって生活にゆとりが出そうかなどの観点で見てみてはいかがでしょう。
相談者
なるほど。
確かに年収アップできるなら、とくに昇給にこだわる必要もないですしね。
他に気を付けるポイントはありますか?
アドバイザー
転職活動では、入社後にどんな役割でどんな成果を期待されているのか、お互いの期待値調整が重要です。
例えば、自分の業務領域をコツコツ進めることが得意なのであれば、チームやグループのマネジメントを期待されても、求められる成果を上げるのが難しい可能性もあります。
自分はどんな働き方でパフォーマンスを発揮してきたのか、ご自身の強みを整理しておくことも大事です。
相談者
どんな会社に入っても、上司が求めるスキルや成果をすり合わせながら、期待に沿うことが大事なんですね。
アドバイザー
その通りです。
もし、一人では十分な情報を集められそうにない場合は、転職エージェントに相談し、業界動向やSさんの経験、スキルを考慮したアドバイスをもらうのも一つの方法です。
転職のプロが第三者視点でSさんの強みを整理してくれたり、Sさんに合った求人情報を提供してくれたりするので、転職時の強い味方になってくれるでしょう。
相談者
ありがとうございます。
転職の前に、現職内でまだまだやれることが多そうなので、まずは上司とのコミュニケーションから進めていきます。
昇給に関するQ&A
ここからは、一般的によく聞かれる「昇給に関する質問」について整理してみましょう。
Q:大手企業と小規模企業では、昇給頻度などは異なるものですか?
A:大手企業では、3ヶ月から半年、1年以内に行われる評価制度のもとで昇給が決まるケースが多いです。
スタートアップやベンチャーなどの小規模企業では、制度設計が整っていない場合も多く、経営者の考え方次第で昇給が決まったり、業績次第でアップしたりすることもあります。
制度がどれほど整備されているかは、選考段階で確認すると安心です。
Q:「昇給あり」と記載されているのに昇給しないこともあるのですか?
A:あります。昇給の機会が定期的に設けられていたとしても、確実に昇給できるとは限りません。
会社の業績にも関係するなど、昇給はあくまでもその人への評価次第。入社してからでないとわからないといえます。
Q:一般的に昇給の平均額はどれくらいですか?
A:昇給の平均額については会社ごとに異なります。
また、「○年でいくら昇給する」などの詳細は、入社してみないと開示されない情報であることが多いです。
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