転職したものの、前の会社に戻りたい…戻るのはアリ?【転職相談室】
今回は、「以前働いていた会社に戻りたい」という方のご相談にお応えします。「不満はなかったが、当時はやむを得ない事情で辞めた」「辞めた後で、いい会社だったと気付いた」などの理由から、再入社を望む方もいらっしゃいます。
前の会社に戻る方法や注意点について、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
転職しましたが、前の会社に戻りたいです。戻るのはアリですか?(Mさん/営業職/32歳/男性)

新卒で大手流通企業に入社しましたが、家族の介護をサポートするため故郷に戻ることになり、退職。地元の企業に転職したんです。
それから3年経ち、介護の必要がなくなりました。今の仕事にはやりがいを感じられないため、転職活動をしています。いろいろな会社を検討しましたが、以前に在籍していた企業ほどには魅力を感じられず……「前の会社に戻る」という選択はアリでしょうか?
転職して前の会社に戻ることはアリですが、注意点もあります
結論から言えば、前の会社に戻るという選択肢は「アリ」です。労働人口が減少し、採用難が課題となる中、企業側としても経験がある即戦力人材は獲得したいもの。また、昨今はフリーランス人材の活用やリモートワークの拡大など、多様な働き方を柔軟に受け入れる企業が増えていますので、いわゆる「出戻り」への抵抗感も薄れているといえます。
ただし、どの企業も歓迎するとは限りません。その時々の人事戦略や採用計画により、対応は変わります。また、前の会社に在籍していた頃の業績や評価なども、受け入れるか否かの判断基準になるでしょう。前の会社への再入社を目指す場合、どのように動けばいいのか、どんな点に注意すべきかを詳しくご説明します。
転職して前の会社に戻る方法
まずは、前の会社に戻るためにどんなアクションを起こし、どう進めていけばいいかをお伝えします。
信頼できる人に相談し、受け入れられる可能性を探る
まず、前の会社に在籍中の元上司・元同僚・人事担当者など、「信頼できる人」「自分を評価してくれている人」に相談してみましょう。
その人から、採用権限を持つ上長に対し、「再度入社したいという人がいるが、受け入れる可能性はあるか」を聞いてもらいます。できれば、元の部署・職種・ポジションに戻れるかどうかも確認してもらうといいでしょう。
再入社までのプロセスを確認する
受け入れられる可能性がある場合、その後のプロセスは会社によって異なります。「人事や配属先の上長との面接のみでOK」というケースもあれば、「一般応募者と同様に一次選考から受けてもらう」というケースもあります。その会社のルールに従い、面接に向けて準備しましょう。
「戻りたい理由」を整理し、伝えられるようにしておく
面接では、「一度辞めたのに、なぜ戻りたいのか」を問われます。相手が納得する理由を語れるよう、自分の考えを整理・言語化しておいてください。
納得を得やすいのは、「外に出たことで、この会社の魅力を実感した」という理由。ただし、給与や福利厚生といった待遇面の魅力ではなく、「仕事の面白さ・やりがい」「組織・チームワーク」などの魅力について詳細に語れるようにしましょう。
ただし、前の会社を持ち上げようとするあまり、転職先企業の批判や不満を口にするのはNG。「自分勝手な人」という印象を与えないよう、謙虚な姿勢であることが大切です。
「再入社後、どう貢献したいか」を整理し、伝えられるようにしておく
「別の会社を経験したことで、新たにこんなスキルを身に付けた。そのスキルをこの会社で、こんな風に活かしたい」というアピールができれば、プラス評価につながる可能性があります。
一度、その会社で勤務した経験があるからこそ、その会社を客観的に見つめ、課題に気付けることもあると思います。「他社で培ったノウハウを活かし、業務改善や新たな手法の導入を図りたい」といったように、その会社に貢献できることを伝えましょう。
なお、前の会社を辞めたとき、「十分な成果を挙げられていなかった」「評価が下がったタイミングだった」という場合は、退職後から現在に至るまでに自分が成長を遂げていることを伝えたいものです。転職先の会社で挙げた成果、学んだことなどを語れるようにしておいてください。
転職して前の会社に戻る際の注意点
前の会社への再入社を目指すにあたり、注意すべきポイントをお伝えします。
退職交渉を早まらない。「社内合意」が取れているか確認を
前の会社の元上司に「戻りたい」と伝えたら、「大歓迎だよ」と言われて安心し、今の会社に退職意思を告げた。しかし、後になって「やっぱり君を受け入れるのは難しい」と言われてしまった――これはよくあることです。
戻りたい職場の上司や同僚があなたを迎え入れたいと思っても、人事部門による採用計画や予算の都合でNGとなるケースもあります。あるいは、「話を進めている途中、優秀な人材を採用できたので、君を受け入れられなくなった」というケースも。
また、他の応募者と同様に一次面接から受けた結果、思ったほど優遇されず、不採用になる可能性もあります。今の会社との退職交渉を始めるなら、前の会社に戻れることが確実となってからにしましょう。
なお、前の会社の人から「戻ってきてほしい」と請われた場合も、「誰がそれを言っているか」「社内の合意は取れているか」によって実現の難易度が異なります。部門長や役員クラスなど、採用の決裁権を持っている人であれば、戻れる可能性が高いでしょう。しかし、同期や先輩など、決裁権を持たない人が「君が戻れるように働きかける」と言っても、どう転ぶかわかりません。くれぐれも油断しないようにしてください。
再入社後の条件・役職は、以前と同じではないこともある
一度退職した会社に再入社する場合、以前の部署・職種・役職に戻れるとは限りません。「もともといた部署にはポストがない。別の事業部門・職種でもよければ受け入れる」といったことも起こり得ます。
また、想定よりも年収が低くなるケースもあります。辞めずに続けていた場合の給与額を想定していたら、中途入社者の初年度給与額が適用されたり、あるいは人事評価制度が変わっていたりすることも。「完全に元通り」とはいかないこともありますので、確認しておきましょう。
選択肢を増やし、比較検討しましょう
転職に踏み切る場合、前の会社に戻ることは、以前の経験・スキルが活かせるという点でメリットが大きいといえます。
しかし、これまでお話ししてきたとおり、簡単には受け入れられないケースもありますし、戻れたとしても自分の希望通りにはいかないこともあります。今の会社でもう少し頑張ってみる、他の会社も探してみるなど、選択肢を広げることも検討してみてはいかがでしょうか。
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