友人の紹介からの転職(リファラル採用)のメリットとデメリットを解説
友人から、「うちの会社で働かない?」と誘われたら、どうすればいいのでしょうか。
自分を評価してくれた喜びと共に、具体的な話に興味が沸く人もいるでしょう。
今回は、最近注目が集まっている、「リファラル採用」(社員による知人紹介で採用する手法)について、約500名の転職支援に携わった組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に伺いました。
リファラル採用とは
リファラル採用とは、企業に所属している社員が、自社にフィットしそうな人材を自分の友人・知人の中から紹介し、自社の採用選考につなげる、という採用手法の一つです。
企業にとっては、潜在的な転職希望者と自社の接点を作ることができるとともに、社員によるスクリーニングで、スキルや企業カルチャーがフィットした人材を確保でき、採用コストを下げられるというメリットがあるため、新しい採用手法として注目されています。
リファラル採用のメリット
では、応募者側には、リファラル採用での転職はどのようなメリットがあるのでしょうか。
仕事、働き方、環境、労働時間、人事制度などの実態がわかるのでミスマッチが防げる
応募者側にとっても、ミスマッチを防ぐことは重要です。仕事の内容・働き方・職場環境・人事制度について、紹介者を通して確認することで、リアルな実態を理解することができるでしょう。
リモートワークの導入具合や人事評価の基準・方法も、紹介者に確認できますし、面接で聞く場合も、社員の紹介で臨んでいる立場上、一般選考ほど構えることなく質問ができるでしょう。
また、企業側も紹介者側も、より誠意をもって、正確な情報を伝えようとします。
企業側は自社の社員の知人・友人ですから、社員の信頼を損なわないためにも誠実に対応しますし、紹介者側は、自分の知人・友人との関係性を大切に考え、率直に職場の実態を伝えるでしょう。
それぞれ既存の信頼関係がある上で、オープンに誠実に対応しようとするため、情報の齟齬が少なくなり、ミスマッチを防ぐことができます。
社員が満足している会社に転職できる
一般的に、自分の会社が他社と差別化できず、これといった魅力がなければ、大事な友人を誘うことは難しいものです。
働き方やカルチャー、上司や同僚など、仕事内容プラスアルファの要素に魅力を感じ満足している会社だからこそ、紹介できます。
紹介者が満足しているというお墨付きがあれば、全く知らない企業に転職するよりも安心感があります。特に、紹介者が満足しているポイントを教えてもらい、その点に共感できるかどうかで、自分に合っているか判断していくことも可能です。
選考がスムースに進む
紹介者は、応募者の仕事ぶりや価値観、人物タイプをある程度把握した上で自分の会社に合っていると判断しています。つまり、紹介者が応募者と企業のマッチングをしてくれているため、フィット感が高い状態で面接を進めることができます。
また、企業側でも紹介者の推薦が一つの評価ポイントになるため、選考自体がスムースに進みやすくなることが多いでしょう。
リファラル採用のデメリット
では、リファラル採用は応募者にとっていいことばかりなのでしょうか。デメリットについてもみてみましょう。
主体的に懸念点を確認せず入社後ミスマッチになる可能性
紹介者が応募者の過去の経験を考慮して紹介してくれていても、「友人にとっていい会社=自分にとっていい会社」とは言い切れない場合があります。
紹介者からの情報をうのみにしてしまい、自分が気になる点や自分の場合はどうなるのかという点を確認できないと、ミスマッチになる可能性があります。
例えば、紹介者からは、残業がほとんどないと聞いていたものの、実際には想像以上に残業時間が多く、負担に感じた、ということがあります。
紹介者と一緒に働いていたころはお互いに独身だったけれども、自分の方は家族が増えたこともあり、以前と状況が異なっていたことが理由であったりします。
紹介者の情報を参考にするものの、自分が担当する業務内容や職場に関する懸念点は、改めて自分から確認するよう、注意が必要です。
他社と比較しないまま転職活動が終わる可能性
転職活動は、転職市場で自分がどのように評価をされるのか確認し、視野を広げるチャンスでもあります。
紹介を受けて、とんとん拍子に選考が進み、内定が出たので承諾。しかし、改めて転職サイトをみたり、転職エージェントで話を聞いたりすると、実はさまざまな選択肢があったことに気づき、「もっといろんな企業へ応募してみればよかった」と後悔することがあります。
紹介を受ける際は、本当に転職を考えるタイミングなのか、ほかの企業を検討しなくてもよいかという点も踏まえて、慎重に考えた方がいいでしょう。
能力への期待値の高さ
紹介された以上は、期待されるパフォーマンスを発揮しなければならないと考えるものです。
それがモチベーションになり、よい成果へつながる場合はいいのですが、転職先ですぐにパフォーマンスを発揮できない場合、焦って余計に成果につながらなくなる場合もあります。
例えば、大手企業にいた方が、スタートアップベンチャーに紹介者を通して転職した際、会社の事業フェーズによっては、以前の企業での優秀さがすぐに発揮できないこともあります。
転職先の「もっとできると期待していたのに」という期待値とのギャップが生じ、本人も焦り、本来の力が発揮できなくなってしまうのです。そうならないためにも、面談や面接、紹介者との対話で、具体的に対応できる業務内容を伝え、任される仕事内容を確認し、期待値調整をしていくことが大切です。
選考辞退、退職しづらい
紹介者を通して選考に進んだ場合や、入社した後、ミスマッチに気づいたとしても、選考辞退や退職をすることで紹介者に迷惑をかけると思うと、簡単に辞退・退職することは気が引けます。
特に、自発的に転職活動を始めず、紹介されたために選考に進んだ人に多く見られます。前職の上司など、影響力が強い人からの紹介で断れずに面接を受けてしまい、選考は進むものの、本音では転職を希望していない場合などもあるようです。
リファラル採用が通常の採用方法よりもフラットな関係で進められるものであっても、転職活動に真摯に向き合い、本当に自分が行きたい企業であるかどうかを見定めていくことが必要です。
もし、合わないと判断したのであれば、なるべく早い段階で意志を伝えた方が企業や紹介者も納得しやすいでしょう。
リファラル採用は新しく注目されている採用方法の一つですが、メリットがある一方で、デメリットもあります。特徴を理解した上で、転職活動の中にどう取り入れるか判断していきましょう。
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