専門性が高すぎる仕事をしているのではないかと不安。転職も他業種・職種へは難しい?【転職相談室】
仕事の専門性が高すぎるとスキルが偏ってしまい、新たな分野に転職したくても上手くいかないのでは…と不安になっている若手社会人。
組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタント・粟野友樹氏が、汎用性あるスキルの見つけ方などをアドバイスします。
目次
専門性が高すぎる仕事をしていて将来が不安に…。転職するにも他業種・職種へは難しいでしょうか?(Aさん/28歳/アクチュアリー)
【相談内容】
保険会社に新卒入社し、アクチュアリー(保険数理人)として6年が経ちます。仕事と資格取得の勉強との両立が大変でどちらにも身が入らず、このまま続けていける気がしません。転職を考え始めていますが、仕事の専門性が高すぎるので、結局同じ業界の中でしか転職できないのではないかと心配しです。将来を考えて、今のうちに汎用性の高い仕事にキャリアチェンジするべきでしょうか。
ポータブルスキルや強み次第では十分転職可能。まずはキャリアの振り返りをしよう
▶アドバイザー
保険会社でアクチュアリーをしながら、日本アクチュアリー会の資格試験の勉強を続けているんですね。
▶相談者
2年前に第1次試験に合格して準会員になったのですが、その後は足踏み状態です。このまま勉強を続けても、私が近い将来アクチュアリーの正会員に合格できる保証はありません。
それに、仮に正会員になったとしても、その後もずっとこの仕事をしていくイメージが持てないんです。
▶アドバイザー
これまで6年間その仕事を続けてきて、どうでしたか?
▶相談者
大学の数学科を卒業し、専門性が高い仕事に魅力を感じてアクチュアリーを目指しました。
ですが、実際に6年間やってみて、自分には向いていない仕事かも…と感じています。
▶アドバイザー
だから、このまま専門性を追求していくのは危険ではないかと考えているんですね?
▶相談者
そうです。これから数年間、正会員を目指して取り組んで合格できなければ、キャリアチェンジすることが有力な選択肢になり、新しいキャリアを構築するのがそれだけ遅くなってしまう訳ですから。
だったら、もっと早い段階で見切りをつけて、汎用性のある別のキャリアを探るほうがいいのでは、と迷っています。
▶アドバイザー
別の新しいキャリアについて、何か考えていることはありますか?
▶相談者
具体的にはまだ考えていません。将来を考えて、もっと汎用性のある仕事に就こうとは思っていますが、難しそうな気がして…。
▶アドバイザー
Aさんは、今の仕事は専門性が高すぎて、汎用的なスキルを持たない自分には転職の選択肢がないと思われているようですね。
ですが、専門性の高い仕事でも他に生かせるスキルや強みが必ずあるはずなんです。
▶相談者
そうでしょうか。
▶アドバイザー
まずは自分のキャリアを振り返って、スキルの棚卸しをしてみましょう。
例えば、アクチュアリーとしての6年間で、論理的思考力や定量的な分析力、課題発見力や探求心などが養われたのではありませんか?
正会員を目指して勉強してきた学ぶ姿勢も、Aさんの強みです。そのことは、アクチュアリーの準会員に合格した実績が証明しています。
▶相談者
言われてみれば、そうかもしれません。
▶アドバイザー
いま挙げたようなポータブルスキルに加えて、プログラミング(Python)、データ分析(R)、エクセル(マクロ、VBA)など、仕事で身につけたテクニカルスキルもあれば十分アピールポイントとなります。
ほかにも、学生時代に統計学を学んだことや論文のテーマなども、アピールできると思います。
▶相談者
そうなんですね。こうして一つひとつ言語化してみると、自分にも汎用性のあるスキルがあるとわかって、自信が湧いてきました。
スキルを生かせる職種(仕事)に就くには
▶アドバイザー
では次に、こうしたスキルを生かせる転職先の選択肢について考えてみましょう。
▶相談者
どんな選択肢があるのでしょうか?
▶アドバイザー
現在のようなアクチュアリー業務であれば、同業他社をはじめ、コンサルティング会社、証券会社や銀行でクオンツ(※1)を行う仕事、事業会社のリスクマネジメントといった選択肢が考えられます。
あるいは、ガバナンスやコンプライアンス強化が重視されていく中で、ERM(※2)領域に取り組む選択肢も考えられますが、いかがですか?
(※1)高度な数学的手法を用いた金融市場などの分析、金融商品取引、投資戦略の分析、金融商品の開発など
(※2)エンタープライズ・リスクマネジメントの略。全社的リスクマネジメント
▶相談者
今の仕事は自分には合っていないような違和感があるので、それ以外の選択肢も考えられるといいんですが、難しいでしょうか?
漠然とですが、もっと現場感や手触り感のある仕事に携わりたいと思っているんです。
▶アドバイザー
それなら、ご自身が社会人として働く中で気づいた興味・関心を軸に、現職業務で培ったスキルを生かせる仕事を探ってみましょう。
Aさんはいま、どのような仕事に興味を持っていますか?
▶相談者
消費財などの商品や身近なサービスにかかわるB to Cの仕事なら、今までにない現場感を感じられるかもしれないと思っています。
▶アドバイザー
それでしたら、例えば、食品、アパレル、インターネット、広告、医療などの事業会社のデータサイエンティストやWebエンジニア、経営企画などの企画系職種、経営コンサルタントなどが考えられます。
▶相談者
今の私のスキルでも、そんなに色々な業界や職種の選択肢が考えられるんですね。
よりB to Cにダイレクトにかかわったり、物事がダイナミックに動く領域に身を置いたりすることができそうで、何だかワクワクしてきました。
ほかの仕事と比較した結果、今の仕事を続けるという選択肢も
▶アドバイザー
本来、転職活動はキャリアプランや将来ビジョンを明確にした上で始めるのが基本です。
Aさんの場合は、保険以外の別業界・別職種の情報をあまり持っていないので、まずは興味のある企業をじっくり研究し、応募して、いろいろな業界や職種を実際に見て比較しながら、自分のキャリアプランを固めていくスタイルのほうが良さそうですね。
▶相談者
わかりました。
▶アドバイザー
それから、転職活動を通じてほかの業界や職種と比較することで、今の仕事の良さを再認識することも考えられます。
ですから、転職活動をする場合も、今の仕事を続けるという選択肢を排除しないようにしてください。
▶相談者
はい、心に留めておきます。いろいろと相談に乗ってもらったことで、“自分の思い込み”に気づくことができました。
自分が持っている汎用性のあるスキルや強みについて、今一度じっくり見直してみます。本当にありがとうございました。
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