仕事が中途半端になるタイミングでの転職はやめたほうがいいでしょうか?【転職相談室】

キャリアチェンジしたいという思いは強いものの、プロジェクトリーダーという立場を考えると安易に転職には踏み切れない。
そんな悩みを抱える社会人に、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタント・粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
プロジェクトが未完という中途半端なタイミングで転職を考えていますが、周囲への迷惑や上司の引き止めが気になって踏み切れません。(Nさん/29歳/IT系)

【相談内容】
現在、長期プロジェクトの責任者を任されています。プロジェクトに携わる中で他業界の人たちと接する機会があり、キャリアチェンジを考えるようになりました。リファラル採用の話もあって転職を考えているのですが、途中で抜けると現職場に迷惑をかけそうで悩んでいます。(Nさん/29歳/IT系)
まずは自分軸で考え、会社とのバランスにも配慮する
▶アドバイザー
29歳でプロジェクトを任されているとは、会社からかなり期待されているようですね。
▶相談者
新卒で入社以来、営業職に集中して取り組んできました。若手の中では営業成績がトップレベルだったこともあり、今回、大手企業向けのDX案件プロジェクトリーダーに抜擢されたんです。
▶アドバイザー
すごいですね。ところで、今の会社でのキャリアパスについてはどんなイメージを持っていますか?
▶相談者
このプロジェクトが無事完了すれば、課長に昇進するかもしれません。その後は、30代半ばで部長になり、40代前半で役員に…というイメージです。このプロジェクトに携わるまで、自分の頭にあったのは現職でキャリアアップしていくことだけで、転職など考えもしませんでした。
▶アドバイザー
プロジェクトの途中で転職したいと思うようになったのは、なぜですか?
▶相談者
プロジェクトを通じてコンサル企業と接点があって、興味を持つようになりました。コンサル業界に身を置いて、論理的思考力やプレゼンスキルなどのビジネススキルを磨きたい、彼らのような優秀な人材から刺激を受けながら、より幅広くより深い知見を得たい、と考えるようになったんです。
▶アドバイザー
プロジェクトを通じて新しい企業や人と出会い、違う世界を知ったことで、転職を考えるようになったわけですね。
▶相談者
はい。現職でもキャリアアップは望めますが、マンネリを感じているのも確かです。良くも悪くも将来の路線が見えているので、外に出て違う環境に身を置き、違う視点で仕事に取り組みながら成長していきたいという気持ちが強まっています。
▶アドバイザー
一方で、プロジェクトの途中で転職することに負い目を感じているわけですね。
▶相談者
そうなんです。優先すべきは自分のキャリアだと思う反面、会社に迷惑をかけたくないという気持ちもあって葛藤しています。
▶アドバイザー
確かに、中途半端な状態で転職することは、自分の気持ちにも現場にもモヤモヤを残すことになるでしょうね。
その葛藤が生じる理由は2つあります。1つは、組織から期待されてプロジェクトリーダーに抜擢さたので、その期待に応えなくてはいけないという思いからです。日本の学校教育を経た場合、周囲の期待に応えて評価される、期待に応えなくてはいけないという考え方が自然と培われる人も多く、そうした背景もあると思います。
▶相談者
それは私にも当てはまるかもしれません。
▶アドバイザー
もう1つの理由は、日本の企業に多い“メンバーシップ雇用”にあると考えられます。
▶相談者
それは何ですか?
▶アドバイザー
職務を限定せず、転勤や異動などを繰り返し経験させながら長期的に人材を育成していくのがメンバーシップ雇用です。キャリア構築も組織に委ねられているので、自分のキャリアを優先して考えることに慣れていないのです。こうした背景は年々変わりつつありますが、社会全体がすぐに切り替えられるものでもないでしょう。
▶相談者
なるほど。ここは割り切って“自分ファースト”で考えたいところですが…。
▶アドバイザー
まずは、会社よりも自分軸で考えてみる。その上で、会社とのバランスも考えていくのがいいでしょう。
▶相談者
具体的に、どのように考えていけばいいでしょうか?
▶アドバイザー
大前提として、「上司にこう言われたから」「会社にこう期待されているから」という発想で進んでいかないことです。一方で、プロジェクトを任されている立場でもありますから、転職する場合は会社への迷惑を最小限にとどめるようなタイミングを考えることも大切です。
▶相談者
わかりました。
▶アドバイザー
まずは、「絶対に転職する」というスタンスではなく、転職市場の動向や自分の市場価値、転職後のキャリアの可能性などを探ることから始めませんか?
外を見て内を知る…つまり、現職や現在の自分の評価を客観的に見ながら、さまざまな選択肢を考えてみるんです。
▶相談者
選択肢は何が考えられますか?
▶アドバイザー
転職する以外にも、現職に留まる、副業するという選択肢が考えられます。
▶相談者
なるほど。ですが、現職に留まりつつ、マンネリを脱する方法などあるんでしょうか?
▶アドバイザー
例えば、営業から企画職に異動すれば、自社サービスを育てるという新しい経験ができます。昇進すれば、マネジメントスキルや経営視点を養うなど、高度なビジネススキルを高めていけるはずです。
▶相談者
確かにそうですね。
円満退職となるような“区切り”を設定する
▶相談者
いろいろな選択肢を検討した上で転職するとしたら、どんなタイミングを区切りと考えるのが適切なんでしょう?
▶アドバイザー
担当しているプロジェクトの進行具合にもよりますが、プロジェクトが既に始まっているのであれば、不安定な時期を抜けて運用の役割分担が整った時点などが適切でしょう。また、サブリーダーになるようなメンバーがいれば、その人を育てて自分の役割を任せていく方法も考えられます。
▶相談者
退職の意思表示については民法上だと14日前までにすればいいようですが、時間的にはどれぐらいを目安にするのが妥当ですか?
▶アドバイザー
1カ月半から2カ月前には退職の伝えておくのが一般的です。「立つ鳥、跡を濁さず」と言いますが、円満に退職することを考えてください。今の会社と将来的に仕事でつながりができるかもしれませんし、出戻る可能性もないとはいえませんから。
ご自身の評判にもかかわることなので、会社への迷惑を最小限に抑えるよう配慮するのが賢明です。
上司に伝える場合は覚悟を決めてから
▶相談者
プロジェクトの途中で転職する際の注意点などはありますか?
▶アドバイザー
プロジェクトの途中だからということに関係なく、Nさんの場合、会社からの期待が大きいので、上司に転職の意思を伝えたら引き止めに遭う可能性がかなり高いと思います。
▶相談者
やはり、そうですか…。
▶アドバイザー
カウンターオファーと言うんですが、会社から昇給や昇格、あるいは本人が希望する部署に異動させるなどの条件を提示して、上司が引き止めるかもしれません。ですから、転職を決意したら、カウンターオファーに心が揺らがない強い覚悟を持って退職の意思を伝えるようにしましょう。
▶相談者
わかりました。まずは、転職市場や自分の市場価値などをリサーチして、転職することが最善策なのかを冷静に考えてみます。貴重なアドバイスをありがとうございました。
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