転職先で成果を出すために何を頑張るべきかわからない【転職相談室】
異業界へ転職をしたが、新しく覚えることも多く、営業スタイルの違いなどもあり、思うように成果が出せずにいるTさん。
何を頑張るべきなのかわからないという相談に、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんがお答えします。
目次
異業界へ転職したが、何を頑張るべきか分らなくなってしまった。(Tさん / 営業 / 28歳 / 女性)
実力成果主義で高収入が見込めることに惹かれて、住宅建材メーカーの法人営業から、個人向けにマンション・戸建を販売する不動産営業に転職をしました。
扱う商品は違いますが、同じ住宅市場にまつわる企業なので、ある程度の市場動向は頭に入っており、転職先でも上手くやれるだろうと思っていましたが、実際には新しく覚えることも多く、何を頑張るべきかわからなくなってしまいました。
転職先で成果を出すには、どうすればいいでしょうか?
「何を頑張るべきかわからない」状況はなぜ起こる?
アドバイザー
同じ営業職でも法人営業から個人営業へ、評価制度が成果主義の会社へ転職したところ、なかなか成果が出ず、何を頑張るべきか分からなくなっているとのことですね。
Tさん
そうです。新しく覚えることも多いし、やるべきことも多い。
その上、自分なりに努力しても成果が出ないので、八方塞がりです。
正直、この転職は失敗だったかもな…と考えてしまうこともあります。
アドバイザー
気持ちはわかりますが、Tさんのように、転職後に何を頑張るべきか分からなくなってしまった…と悩む人は少なくありませんよ。
Tさん
私だけじゃないんですね。その事実に、少しホッとします。でも、自分ではもっとやれると思っていたのに…どうしてこうなってしまったんでしょう。
アドバイザー
何を頑張るべきか分からなくなっているケースでは、以下の3つが要因として考えられます。
- やりたいことや目標がない、または見失っている
- やりたいこと、やるべきことが多くて、優先順位を決められない
- 会社からのフォローや支援が不足している
1.やりたいことや目標がない、または見失っている
Tさん
「やりたいことや目標がない、または見失っている」というのはどういうことでしょうか?
アドバイザー
転職そのものが転職活動のゴールになってしまっていた場合、「入社後に何をしたいのか」という本来は考えておくべき部分が曖昧になっていた可能性あります。
その場合、働く上での自分なりの目標がないため、会社から求められる成果にばかり囚われて、思うような結果が出ない場合に必要以上に焦ってしまうことがあるのです。
Tさん
早速心当たりがあります…。
収入を上げる転職をすることが目標になっていたので、入社後に何をしたいのは深く考えていませんでした。
アドバイザー
Tさんの場合は、新卒でも住宅関係の会社を選んでいますよね。
そして今回も同じく住宅にまつわる分野への転職です。
新卒の時には、数ある選択肢の中から、どうして住宅分野を選んだのですか?
Tさん
個人的な話ですが、中学生くらいの頃に両親が新築戸建を購入して、アパートから引越したんです。
庭ができて、広いリビングができて、日当たりが良くなって…たったそれだけのことなのに、それまでは深夜まで働いていた父親が夕飯に帰ってくるようになり、夏にはバーベキューをするようになりました。
家族仲を深めてくれる家ってすごいなぁ…と思ったんです。
アドバイザー
それはTさんにとって大切な原体験ですね。
Tさん
今思うと、法人営業から個人向けの個人営業に挑戦することにしたのも、成果報酬で年収が高まるという面だけではなく、エンドユーザーと直接関わって、住宅を通して家族仲を深めるお手伝いをしたいという思いがあったからかもしれません。
アドバイザー
では、Tさんが働くうえでの目標は「住宅を通して顧客の家族仲を深めること」と言えるかもしれませんね。
Tさん
そう考えると、年収面は希望額まで高まっていませんが、お客様から購入・住み替え後に感謝のお手紙を頂くことは多々あるので、叶えたい目標には近づいているような気もしますね。
アドバイザー
そうですね。
営業成績など会社から定められた目標以外に、自分なりの目標が定まると、定量的な成果がでていない時でも「〇〇はまだ不十分だが、△△は出来ている」と自分を客観的かつポジティブに捉えることもできるようになります。
すると、必要以上に焦ることがなくなるので、次に必要なステップを自分なりに考えていくことができるようになるかもしれません。
2.やりたいこと、やるべきことが多くて、優先順位を決められない
Tさん
2つ目の「やりたいこと、やるべきことが多くて、優先順位を決められない」というのも、まさに今の私です。
やるべきことが多くて、上手く時間を使えていないという自覚があります。
アドバイザー
具体的にはどういった部分で、上手くできないなと感じますか?
Tさん
前職では、既存の法人顧客に対して、前年度の導入実績を参考にしながら新商品紹介をしていたのですが、今は新規の個人が顧客です。
顧客の潜在的な希望をその都度引き出して、それぞれにマッチする物件を紹介していくことになるので、商談準備にとても時間がかかります。
前職では営業アシスタントが何人かいたのですが、今はいないので、アポイント調整や個別の資料作成も自分でやる必要があり、時間がいくらあっても足りません。
アドバイザー
それは、もしかすると法人営業から個人営業の成果主義に転職したことで、効果的な営業スタイル・営業方法が変わったことに上手く対応しきれていないのかもしれませんね。
法人営業と個人営業とでは顧客の意思決定基準が異なるので、前職と同じ営業スタイル、手順、提案資料の構成では成果が出ない可能性も高いです。
Tさん
それはどういうことでしょうか?
アドバイザー
法人の場合は、「企業全体の利益を上げる」という明確な判断基準があるためロジカルに商談は進んでいきますが、個人の場合はその日の気分や、嗜好、営業担当との相性といった不明確で不透明な部分も大きな判断基準になり得ます。
例えば、個人営業においては、丁寧な提案書を作るよりも、いかにその人の価値観を掴んで琴線に触れることができるかが勝負になることも少なくありません。
Tさん
言われてみれば、ほとんどの先輩方は個別の提案資料は作っていなかった気がします。
私は、つい前職の癖で、顧客ごとに丁寧にヒアリングをして、その要望を満たす提案資料を作ることに躍起になってしまっていました。
アドバイザー
一度、社内で成果を出している同僚を中心に、仕事の進め方やコツ、商談時に気をつけている点などを聞いてみるといいですよ。
実際に営業同行させてもらい、顧客との接し方を見せてもらうのもオススメです。
Tさん
それはいいですね。早速、先輩にお願いしてみようと思います。
アドバイザー
基本的な仕事の流れのうち、どこに力を入れると良くて、どこは注力しなくても平気なのかを見極めることができると、優先順位のつけ方も上達していくでしょう。
3.会社からのフォローや支援が不足している
アドバイザー
最後に、「会社からのフォローや支援が不足している場合」です。
これは成果主義、個人主義の会社で、たまにあるケースですね。
Tさん
それはどうしてですか?
アドバイザー
例えば不動産営業などの成果報酬要素が強い環境では、社員がそれぞれ個人の目標達成を目指して能動的に動いている可能性が高いです。
そうなると、全員が全員、自分の目標に集中しがちでチーム意識が薄れ、意図せずとも新人へのフォローがおざなりになりがちです。
Tさん
確かに、チームプレイという風潮はあまりないかもしれません。
アドバイザー
この状況下では、それぞれが必死なので、ただ待っているだけで誰かが困っている自分に気付いて有効な情報を渡してくれるといったことは、まずないと思っておきましょう。
とにかく自分も能動的に動くことが大切です。
Tさん
なるほど。具体的にはどういう風に動けばいいんでしょうか。
アドバイザー
少しでも疑問に思ったことは、積極的に周囲に相談をしましょう。
上司や先輩に状況を説明して、慣れるまでは週に30分でもいいので、定期的に業務確認と自由相談の時間を取ってもらうのも一つの手です。
気兼ねなく相談できる場を設けて、商品についての上手い説明の仕方など、個人に蓄積されているノウハウを共有してもらうことが大切です。
Tさん
なるほど。
汎用的な営業資料は会社が用意してくれていますが、ノウハウの共有まではされていませんでした。
その情報は、自分から取りに行く必要があるんですね。
アドバイザー
そうです。
こういった成果主義の環境では、努力する姿勢をしっかりと見せると、周囲も徐々に気にかけてくれるようになる傾向があります。
自らサポートや支援を引き出すことで、次に何をすべきなのか、今は何を頑張るべきなのかが分かるようになるかもしれません。
Tさん
確かに、同僚は基本的に人当たりが良く、アツイ人も多いので、変な遠慮はせずに、積極的に質問や相談をしてみます。
何をやっても成果が出ず、もう何を頑張るべきかわからずにいましたが、具体的にどうしていけば良いのかが分かりスッキリしました。
今日はありがとうございました。
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