「出社が増えたから」は転職理由になりますか?どう伝えればいい?【転職相談室】

コロナ禍で在宅勤務になったことを機に、家賃が安い地方に引っ越し快適に暮らしていたAさん。しかし、勤務先が出社を増やすことになり、真剣に転職を考えているとのこと。
そんなAさんに対し、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏が転職理由の考え方などについてアドバイスしました。
目次
「出社が増えたから」は転職理由になりますか?どう伝えればいい?(Aさん/27歳/マーケティング職)

■相談内容
コロナ禍で在宅勤務になりました。特に出社しなくてもできる仕事内容なので、家賃が安く実家にも近い地方に引っ越してしまいました。
しかし、今秋をめどに勤務先がテレワークをやめ、オフィスへの出社に方針転換するとのこと。現在の家からオフィスまでは片道2.5時間以上もかかるため、転職を検討しているのですが、「出社が増えたから」は転職理由になりますか?
「出社が増えたから」は退職理由であって、転職理由にはならない
▶相談者
今の勤務先は、コロナ禍でいち早く在宅勤務に切り替え、リモート会議やビジネスチャットを導入するなど、テレワークの環境整備に注力してくれていました。
私が所属するマーケティング部の仕事は、対面が必要な仕事とは違い在宅でも仕事がしやすいので、今後もきっとテレワークが続くと考え、1年前に家賃が安く、かつ実家にも近い場所に引っ越したのですが…。
コロナがひと段落したことで、出社が増えることが決まってしまいました。今の家からオフィスまでは往復5時間以上かかるので、真剣に転職を考えています。
▶アドバイザー
なるほど、事情は分かりました。ただ、「出社が増えたから」は今の会社を辞める理由にはなりますが、「転職理由」にはなりません。
応募先企業に対する前向きな思いや意欲が伝わりませんし、「テレワークができるならば当社でなくてもいいのでは?」とネガティブな印象を与えてしまう恐れもあります。
もし、「出社が増えたから」以外に転職理由が思い浮かばないのであれば、転職するのは時期尚早ではないでしょうか。
▶相談者
うーん、確かにおっしゃる通りなのですが…今の家から毎日のように出勤するのは現実的ではありません。
かといって、都心に引っ越しし直す資金もないので、テレワークのみの起業に転職する以外に策はないと思っています。
▶アドバイザー
国土交通省の「テレワーク実施状況の変化」によると、雇用型テレワーカーの割合として、令和3年をピークにその後は上下しつつも減少傾向にあります。
つまり、今はテレワークを謳っている企業であっても、Aさんの勤務先のように後に出社に切り替える可能性があるということです。
また、同調査の「テレワーク実施頻度(令和6年)」においては、テレワークの実施を「週5〜7日」とする企業は16.7%となっており、決して多いとは言えません。
さらにその中からマーケティング職の求人を行っている企業を探すとなると、かなり選択肢が狭まると思われます。
▶相談者
そうなのですね。いったい私はどうすればいいのでしょう…。
仕事への思いを整理し、テレワーク以外の「転職の軸」を明らかにしよう
▶アドバイザー
まずは、転職成功の確度を上げることが重要です。自分の思いと向き合い、退職理由ではなく「転職理由」を明らかにしていきましょう。
つまり、テレワーク以外の視点で、自分が仕事に求めるものを整理するのです。
テレワークのことはいったん脇に置いておいて、Aさんはマーケティング仕事において、どんなことをやってみたい、成し遂げたいと思っていますか?
▶相談者
今の仕事には十分やりがいを感じているのですが…あえて言うならば、新商品のマーケティングに携わってみたいという思いがあります。
これまでの3年間、主力商品のWebプロモーションの企画・設計に携わってきましたが、まだ世に出ていない新商品を軌道に乗せるのは、マーケティング担当者の腕の見せ所。責任も重いですが、それだけやりがいも大きいのではないかと思っています。
ただ、今の勤務先はそれほど新商品開発に力を入れていないので、なかなかチャンスが回ってきません。転職するならば、新商品やサービスの開発に力を入れているところがいいなと思います。
▶アドバイザー
いいですね。その思いを軸に、「新商品のマーケティングに関われる×テレワークも行っている(できればテレワークのみ)」で転職先を探してみるといいでしょう。
そして応募書類や面接では、「出社理由が増えたから」という退職理由を伝えるのではなく、「新商品のマーケティングに携わり、マーケティング担当者としての知見を増やしたい」という転職理由を伝えれば、応募先企業の納得度も高まりますし、仕事に対するAさんの熱意、意欲も伝わります。
▶相談者
ありがとうございます。試してみたいと思います。
▶アドバイザー
なお、転職先を探す際には、完全テレワークであることを必須条件にしないほうがいいとは思います。
先ほどご説明したように、テレワーク実施企業は減少傾向にあるので、応募先の選択肢がかなり狭まってしまうことが予想されます。
そして、くり返しになりますが、たとえ今はテレワークのみであっても、Aさんの勤務先のように方針がガラリと変わる可能性もあります。
選択肢を広げるためにも、「週1~2日出社」の求人まで視野に入れてみるのはいかがでしょう。毎日出社は現実的でなくても、週1ぐらいならば対応できるのでは?
そして、出社日は「通勤時間をインプットの時間にする」と決めるなど、時間を有効活用することを考えれば、出社にも前向きになれるのではないでしょうか。
▶相談者
週1~2日程度であれば、何とか通えると思います。ちょうど英語の勉強を始めたところなので、TOEICの問題集を読む時間に充てるのもいいかもしれません。
ただ…できればテレワークのみの企業に転職して、在宅勤務を続けたいですね。そして、将来出社が増えた場合に備えて、引っ越し資金を貯め始めたいと思います。
▶アドバイザー
そういう心構えで臨むのがいいと思います。
なお、求人企業の中には、入社にあたって引っ越し費用を負担してくれる企業や、社員寮や社宅に入居できる企業、手厚い家賃補助がある企業などもあります。
そういう企業を選び、費用負担を抑えながら勤務先近くに引っ越しし直すという方法もありますよ。
▶相談者
なるほど、そのような手もあり得ますね。出社が急に増えることばかりに気を取られて、視野が狭まっていたかもしれません。
まずは自分の仕事に対する思いを大事にしつつ、希望に合った転職先を探してみたいと思います。ありがとうございました。
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