大学卒業後ずっとフリーランス。初めて企業に転職する場合の注意点は?【転職相談室】

大学卒業後に企業に就職せず、フリーランスのマーケッターとして働いてきたというAさんは、正社員として会社勤めをしたいという思いを持っています。
組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに、フリーランスから初めて企業に転職する際のポイントや注意点などについてアドバイスいただきました。
目次
【転職相談】フリーランスから正社員になりたい。初めて企業勤めをすることになるが、転職活動では何に注意すればいい?(Aさん/25歳/マーケティング職)

■相談内容
大学時代、ゼミの先輩が経営する広告代理店で、学生向けのマーケティング業務を手伝っていたのですが、卒業後も就職せず、フリーランスとしてそのまま働き続けました。ただ、2年ほどが経ち、「もっと幅広いターゲットに向けた大きなプロジェクトを経験したい」と思うように。企業のマーケティング職に正社員として転職したいのですが、どんなことに気をつけたらいいでしょうか。フリーランスしか経験していない人が正社員に転職するのはやや難易度が高い
▶アドバイザー
大学卒業後に就職せず、フリーランスになられたのですね。なかなか思い切った決断ですが、なぜフリーランスを選んだのですか?
▶相談者
ゼミの卒業生である先輩が大学生向けの広告代理店を立ち上げたので、大学3年生のときからその会社のマーケティング業務を手伝っていたんです。統計学を専攻していて、マーケティングの基礎知識があったので声をかけてもらいました。4年生になり、ちゃんと就活しようとは思っていたのですが、仕事が面白かったのでそのままフリーランスの道を選びました。
▶アドバイザー
先輩の会社に就職するという方法はなかったのですか?
▶相談者
先輩の会社はスタートアップの小さな会社なので、あまり社員を抱えられない。「まずは営業職の採用に力を入れたい」という思いがありました。私自身も、会社勤めをするメリットがそこまで理解できていなかったので、ごく自然にフリーランスになった形です。
▶アドバイザー
では、なぜ今、企業に勤めたいと思うようになったのですか?
▶相談者
先輩の会社は、ごく限られたターゲットにだけ展開している広告代理店で、マーケティングの範囲がとても狭いんです。予算も潤沢ではないので、マーケッターとしてできることも限られています。自由に新しいマーケティング手法を試すことができないなど、裁量権がない点にも不満を覚えるようになり、もっと幅広いターゲットに向けて、さまざまなマーケティング手法を駆使して課題解決に尽力したいと思うようになったんです。
▶アドバイザー
事情はよくわかりました。ただ、フリーランスから正社員への転職は、一般的な転職よりも少し難易度が高くなります。そのため、しっかり準備をして臨むことが大切です。
▶相談者
え!?そうなんですか?
企業がフリーランスに対して懸念を抱くこと
▶アドバイザー
企業勤めをしたことがないフリーランスの方に対して、企業はさまざまな懸念を抱くものです。まず挙げられるのは、組織の中で働くことに馴染めるかどうか。フリーランスとして一匹狼的な働き方をしてきた方に対しては、仕事はできたとしても「協調性に欠けるのではないか」「同僚と協働するのが難しいのではないか」など、どうしても不安を覚えてしまうものです。
組織の中で一定のルールに沿って働けるかどうかも懸念材料です。フリーランスは組織に縛られず、自分のペースで自由に働けるのがメリットですが、正社員はそうはいきません。
例えば、労働時間。最近はフルフレックスの会社も増えてきてはいますが、多くの会社においては、9時~18時など始業時間と終業時間が決められています。毎朝同じ時間にきちんと出社(始業)できるかどうかを、不安に感じる企業は少なくありません。
▶相談者
なるほど…そのような懸念を持たれるのですね。フリーランスと言っても、仕事をしていたのは先輩の会社1社だけなので、基本的には先輩の会社の始業・終業に合わせて仕事をしていました。週の半分は先輩の会社に出社して、会議でアイディアを出し合ったり戦略を練ったりしていたので、周りとの協働経験も普通にあると思っています。
▶アドバイザー
規律ある働き方をされていたのですね。それは転職を目指すうえでプラスに働くと思います。
ただ、ほかにも懸念点はあります。例えば、携わった業務が限定的なのではないかという点。基本的に、フリーランスの方にお任せする仕事は、会社の業務のごく一部です。経営の根幹にかかわる部分は、セキュリティの問題やコンプライアンスに関わるので、社外にはオープンにできません。「一部分の専門性はあっても、それ以外の知識に欠けるのではないか?」と考える採用担当者もいるでしょう。
ほかにも、「フリーランスの不安定な生活が嫌になって、正社員への転職を目指しているのでは」という見方をする採用担当者もいるかもしれません。転職活動で評価されるためには、これらの懸念を払しょくできるように、回答を準備しておく必要があります。
フリーランスになった理由、正社員になりたい理由の両方を伝えよう
▶相談者
どのように払しょくすればいいのでしょう?
▶アドバイザー
一番重要なのは、「なぜフリーランスになったのか」と「なぜ今、初めて企業勤めをしたいと思っているのか」の2つです。この2点を、企業が納得できる形で伝えることが大切です。
先ほど、「手伝っていた仕事が面白かったので、そのままフリーランスになった」とおっしゃっていました。面白かったこと以外にも「就職ではなくフリーランス」を選んだ理由が何かしらあるはずです。2年ちょっと前の大学時代の気持ちを、振り返ってみてください。
▶相談者
そうですね…。卒業後は勉強してきたことを活かして、マーケティングの仕事に就きたいと思っていたんです。ただ、仕事研究をしてみて「新卒ですぐにマーケティング職に就けるとは限らない」ということがわかって…。今の仕事は面白いし、マーケティングの経験も積めると考え、他のメリット・デメリットはあまり考えずにフリーランスの道を選んでしまいました。
▶アドバイザー
マーケティングに関われることが面白くて、このままもっと経験を積みたいと思ったのですね。リアルな意見で、いいと思います。
正社員として初めて企業勤めを目指す理由は、先ほどおっしゃっていた内容でいいと思います。ただ、先ほどの話は「不満」がメインでしたが、不満をそのまま伝えるのではなく、不満の裏にある前向きな思いに焦点を当てたほうが、好印象を与えられると思います。
例えば、「一部のターゲットに向けたマーケティングを経験したことで、もっと幅広いターゲットに向けたマーケティングを手掛けてみたいと思った」「マーケティングの戦略立案からかかわり、自社の課題解決と業績向上に貢献したいと思った」などと伝えられるといいでしょう。
▶相談者
なるほど、確かに印象が違いますね。
▶アドバイザー
加えて、フリーランス業務の中でも、正社員のような働き方をした経験があれば、それをしっかりアピールしましょう。例えば、プロジェクトの立ち上げを担った、サブリーダーを任された、ほかのフリーランスやアルバイトなどを束ねたり、業務を教えたりする経験をした…など。このような、責任ある役割を任された経験があれば、正社員としてのポテンシャルを感じてもらえるでしょう。
これらのことは、応募書類の段階でアピールしておくことが大切です。フリーランス経験しかないことだけに注目されてしまい、書類選考で落ちてしまうのを避けるためです。応募先企業の目線に立って、懸念材料を消していくことを意識してください。
▶相談者
わかりました。ありがとうございます!
本当に正社員がいいのか、改めてじっくり考えてみては?
▶アドバイザー
ただ…蛇足かもしれませんが、本当に正社員のほうがいいのかどうか、この機会に改めてじっくり考えてみてはいかがでしょうか。
フリーランスにはフリーランスの、正社員には正社員のメリット・デメリットがあります。正社員になれば、裁量権を持って責任ある仕事を任される可能性がある一方で、事業目標に沿って、不本意だとしても与えられたミッションをこなさなければならない側面もあります。
働き方も、働く時間もある程度決められているので、メリハリはあるかもしれませんがフリーランスほどの自由さはありません。給与面でも、Aさんは社会人3年目ですから、フリーランスよりはもしかしたら一時的に収入が下がるかもしれません。
ゆくゆくは昇給やボーナスなどによる収入増が考えられますが、それを「良し」とするのか、今一度考えてみましょう。もちろん、正社員であれば会社が用意してくれる各種手当や福利厚生も受けることができるので、生活は安定すると思います。
これらのメリット・デメリットを整理したうえで、自分のキャリア観と照らし合わせ、総合的に判断してはいかがでしょうか。もちろん、無理にどちらかを選ぶのではなく、まずはAさんの今の思いを大事にして正社員を目指し、ある程度組織の中で経験を積んでからまたフリーランスになって、実績を武器にいろいろな企業と取引する…という道だってあります。
▶相談者
確かにそうですね。いろいろ考えた上で、正社員への転職を決意したのですが、将来のことまではあまり考えていませんでした。もう一度、じっくり考えてみます。
▶アドバイザー
「正社員になりたい」と思ったことを、キャリアを考える機会と捉え、自分の将来をじっくり考えてみて下さい。じっくり考えた上で、納得感を持って転職活動をすれば、その思いと覚悟が企業にも伝わると思います。
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