幅広く浅い業務経験は、どうアピールすると効果的?【転職相談室】
会社の事務仕事を幅広くやってきたけれど、「とくに専門性もスキルもない」と話すYさん。広く浅い経験をどう強みとしてアピールすべきか。
組織人事コンサルタントの粟野友樹さんが、キャリアの整理の仕方を教えます。
目次
幅広く浅い業務経験では、「中途半端」「専門性がない」と思われそうで不安です(Yさん/32歳/人事・労務・総務・経理)

家族経営の会社で人事・労務・総務・経理を担当しています。
会社内の事務仕事はほとんど引き受けており、幅広い業務をこなしているといえば聞こえは良いですが、小さな会社なので実際にはどれも難しいことはしておらず、基礎的な業務ばかり。専門的なことは外部の専門家などに委託していたため、どれも中途半端な状態です。
この度、会社をたたむことになったので転職を考えていますが、専門性が薄いので、自分には強みがないような気もしています。いろんな業務を幅広く、そして浅く経験してきた場合、どうアピールすれば良いのでしょうか?企業側に「なんでもできそうで何もできない」「専門性がない」と思われそうで心配です。
(Yさん/人事・労務・総務・経理/32歳/女性)
広く浅い業務経験も強みになる!アピールポイントを整理していこう
アドバイザー
会社を支えるあらゆる業務を担当してきたのですね。自信を持てないとのことですが、Yさんならではの強みは必ずあります。一緒にアピールポイントの探し方を考えていきましょう。
相談者
そうでしょうか。小さな会社だから通用するような、簡単な仕事をマルチタスクでやっていただけなのですが…。
アドバイザー
そんなに謙遜しすぎることはありません。
ご自身のキャリアを整理し、言語化するには、
- 経験や業界・職種のテクニカルスキル面
- 仕事のスタンスやポータブルスキル面
それぞれで考えることができます。具体的に見ていきましょう。
経験や業界・職種のテクニカルスキル面では、「やってきた職務経験の中でやりたいことを探す」という整理の仕方があります。人事・労務・総務・経理の各仕事の中で、最もやりがいを感じた仕事や、成果につながった仕事は何かを考えていきます。
あるいは、「これから一番伸ばしたいことを探す」のも一つの考え方です。成果が出たというだけではなく、今後身に着けたいことや今学んでいること、価値を感じることでもいいと思います。
相談者
うーん。職種で考えても、あまりピンと来ないのが正直なところです。「この仕事にやりがいを感じる」というよりも、「会社のメンバーのために動いている」のが好きだったので、業務内容自体にあまりこだわりはないのかもしれません。
アドバイザー
そうすると、仕事のスタンスやポータブルスキル面で考えるといいと思います。ポータブルスキルというのは、どんな仕事、職場環境でも生かせる「持ち出し可能なスキル」のことです。
例えば、計画力、情報収集力、分析力、正確性、柔軟性、主体性、協調性・調整交渉力など、さまざまな力が当てはまります。
相談者
うーん…。ポータブルスキルを意識して仕事をしたことがなかったです。これまでの業務をどう整理していくと、強みが見えてくるのでしょう。
アドバイザー
例えば、人事や労務であれば、「法改正への対応に向けて、専門家へのヒアリングなどを事前にきちんと準備を進めて情報収集に努めた」などがあるかもしれません。
また、マルチタスクの仕事を進めるにはスケジュール管理が非常に重要だと思うのですが、「細かなタスク管理、納期管理を徹底し、期限に間に合わないことがないよう努めた」ことなどはありませんか?
これらは、計画力、情報収集力、正確性などのポータブルスキルになりますし、円滑に組織が回るように動く仕事へのスタンスも見られます。
このように、普段、Yさんがどんなことに意識を向けて仕事をしてきたのかを振り返ってみてはいかがでしょうか。
相談者
なるほど。各業務の専門的な部分は外部専門家に外注していたので、私にはとくに専門的なスキルも経験もない…と思っていました。でも、専門家との連携では事前の情報共有を細かく詰めていて、社内外、両方がスムーズに動けるような工夫はしてきました。
アドバイザー
いいですね。そういったことを見つけていくと良いと思いますよ。
相談者
小さなことでも、振り返っていくと、アピールできることが出てくるかもしれないんですね。
アドバイザー
そうです。そもそも、「管理部門のかなり広い部分を一人でカバーできるユーティリティ性」は、Yさんの大きな強みだと思います。
例えばスタートアップ、ベンチャーなどでは、「まだ総務専任の人材は採用できないけれど、人事と総務を兼任できる人がいたらぜひほしい」というニーズもあるでしょう。
こうした組織制度が未整備の環境では、特定の仕事にだけ対応するというより、降りかかってくる仕事をカバーすることが求められます。Yさんの“広く浅く”対応できる力が強みになるのではないでしょうか。
転職で幅広い経験をポジティブにアピールする方法
相談者
少しずつ、転職活動に前向きな気持ちになってきました。ちなみに、私のような幅広い経験を「中途半端」「専門性がない」と思われないようにするために、転職活動ですべき工夫はありますか。
アドバイザー
職務経歴書では、職種ごとに経歴をまとめるのではなく、ポータブルスキルなどの「強みを軸に書く」といいと思います。
職種経験を並べて書くと、キャリアがバラバラな印象になり、「複数の職務経験を通じて何を得てきたのか」が伝わりません。
そこで、「正確なスケジュール管理能力」「事前の情報収集力」などの軸に対して、「人事業務ではこんな風に仕事を進めた」「経理ではこんな点を意識して働きかけた」とまとめると、Yさんの強みがより伝わりやすくなりますよ。
相談者
確かに、その方法なら、幅広い仕事をしてきたことをメリットとしてアピールできそうですね。
転職する場合の注意点
アドバイザー
転職活動の企業選びでは、これまで多くの職務経験があるからこそ、人事も総務も経理も…と目についた求人すべてに応募したくなってしまい、決めきれないかもしれません。
そこで、これまで整理してきた強みに応じて、転職先の方向性を決めてから動くことをおすすめします。特定の伸ばしたいこと・やりたい職種に絞るのも一つですし、ユーティリティ性を強みに転換できる、スタートアップベンチャーなどの転職先に絞るのもいいでしょう。
相談者
確かに、求人数が多いのでどう絞ればいいのか迷っていました。職種や条件を絞り込みすぎると求人数は減るのですが、求める人材要件のレベルが上がるので「私のスキルじゃ受からないんだろうな…」とマイナス思考にもなってしまっていました。
アドバイザー
応募先は、条件を絞り込みすぎず、Yさんの強みを評価してくれる企業はどこか、比較検討しながら探していってみてください。
ご自身の経験を卑下したり気おくれする必要はまったくありません。幅広く対応できることを強みに、選考でもぜひ自信を持ってこれまでの経験を語ってほしいと思います。
相談者
ありがとうございます。「私なんて転職できないだろうな」と思うくらいネガティブな気持ちでしたが、「いろいろやってきたことが強みなんだ!」と思えるようになりました。
これまでの業務上の工夫を丁寧に振り返って、自分のアピールポイントを整理していきたいと思います!
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