社会人歴10年目。想像していた自分よりも未熟だと感じる【転職相談室】
社会人として10年働いたのに、想像していた10年目の自分ほど経験やスキルを積めておらず、自分は未熟だと感じているSさん。
理想と現実のギャップを埋めるために出来ることを組織人事コンサルタントの粟野友樹さんがアドバイスします。
このままでは「ずっと未熟なままかもしれない…」と不安です(Sさん/SESエンジニア/32歳/男性)

新卒で入社したSES企業(技術者派遣の会社)に、エンジニアとして勤めて10年が経過しました。学生の頃に想像していた社会人歴10年目のイメージと今の自分がかけ離れていて、「このままでいいのだろうか」と不安です。学生時代には、入社10年目ともなると、役職を持ったり、部下のマネジメントをしたり、大きなプロジェクトを牽引したりしている自分を漠然と想像していたのですが、実際には全くそんなことはなく、仕事をしていても、まだまだ自分が未熟だと感じる場面も多いです。
SESエンジニアとして、会社にも派遣先のクライアント企業にも馴染んでおり、働きにくさを感じたことはありませんが、だからこそふとした時に「今の職場は自分にとってぬるま湯のような環境になっていて、このまま働き続けていたらずっと未熟なままかもしれない・・・」と心配になることがあります。
Sさんが考える未熟さとは
アドバイザー
社会人としての自分が、学生時代にイメージしていたような状態とは違うというのは、多かれ少なかれ、誰しもが抱えている思いでもあると思います。一方で、自分を未熟に感じるという気持ちには、「本当はこうなりたい」という隠れた欲求があるのかもしれません。Sさんが、「自分は未熟だ」と感じるのはどういった時なのでしょうか。
相談者
そうですね。同年代の友人と自分を比較した時が多いです。社会人10年目というと、社内でも頼られて、マネージャーなどの役職について、いろんなことを牽引していく存在だというイメージがあって…。現実の自分はそうではないのに、実際にそういった働きをしている友人を見ると、羨ましい気持ちと焦る気持ちとの両方が湧いてきます。
アドバイザー
周囲と比較して焦ってしまう気持ちはとてもよく分かります。では、働く前に想像していた社会人10年目のイメージと、現在の自分との乖離の中で、特にできるようになりたいことや実現したいことなどの希望はありますか?
相談者
やっぱり、マネジメントをもっとやってみたいですね。今の会社は個人プレイなことも多く、チームマネジメントはおろか、後輩への指導経験もなかなか積めません。でも、社会人10年目というと、友人はマネージャーに昇進していたりすることも多いので、そういったことを目指せたらいいなと思います。
アドバイザー
SESとして働いている場合、現場によっては自社から1人しか派遣されないといったケースも多いでしょうし、短期間で現場が変わることも多いので、長期にわたって後輩指導などに携わる機会はどうしても少なくなってしまいますよね。
相談者
そうなんです。自社から複数人が派遣されるような大規模プロジェクトでは、自社の社員を取りまとめる立場になることもありますが、決して多くはありません。それにプロジェクトが終わると、チームは解散になるので、「この子には、もっとこんな技術を強化してあげたい」と思っても、どうしてもその場限りの指導しかできないことが多くて、それもジレンマの一つですね。
アドバイザー
なるほど。Sさん自身には、マネジメントへの興味だけではなく、熱意や素質もあるのかもしれませんね。では早速、どうすればマネジメント経験を積んで、理想の自分に近づけるかを説明していきますね。
相談者
はい、お願いします。
理想と現実のギャップを埋めるために出来ることとは?
相談者
まず、気になっていたのですが、自分の未熟さを変えるためには、転職などをして働く環境を変えたほうがいいのでしょうか?
アドバイザー
それは、自分のどんなところを未熟と捉えて、どんな経験を積みたいのか、またそれを行うことが現職で可能かどうかにもよりますね。場合によっては、現職でも十分にギャップを埋めることはできますよ。もちろん、転職によってそれを叶えるのも一つの手です。
相談者
そうなんですね。では、現職でできることと、転職を考える場合との両方で教えて欲しいです。
現職で働き続ける場合
アドバイザー
では早速、現職でギャップを埋める方法についてです。この場合は、派遣先を決定する責任者に、なるべく自社社員が多く参加しているプロジェクトへのアサインを依頼し、社員を取りまとめるリーダー役をかってでるのが良いでしょう。2次請け、3次請けの現場ではなく、なるべく自社が元請けとなる案件に参画できるように働きかけるのもオススメです。
相談者
自ら働きかけて機会を増やすんですね。確かに、これまで、自分から派遣される現場についての希望を出したことはなかったので、やってみます。ただ、自社が元請けとなる案件に参画できるように希望を出すのはどうしてでしょうか?
アドバイザー
将来的にマネジメントを行いたい場合には、後輩指導だけではなく、要件定義や上流工程の仕事内容についても経験を積んでおいたほうが良いでしょう。2次請け、3次請けの現場ではそういった業務は元請け企業から指示が降りてくる場合がほとんどですが、自社が元請けとなる案件であれば経験を積むことができるかもしれません。近くでその業務を行なっている人を見ているだけでも、学べることは多いでしょう。
相談者
確かにそうですね。できることを少しでも増やしておくのは良いことですしね。
アドバイザー
そうです。同様の理由で、プロジェクトマネジメント(PM)に関する経験、教育、知識を問うPMP試験や、プロジェクトマネージャ試験を受けてみるのも良いでしょう。これらの資格は、プロジェクトの責任者として、プロジェクト計画の作成、要員などプロジェクト遂行に必要な資源の調達、プロジェクト体制の確立及び予算・納期・品質などの管理を行い、プロジェクトを円滑にするための手法を学べます。いずれマネージャーを目指すのであれば、勉強していて損はありません。
相談者
わかりました。ちなみに現職では、マネージャーのポジションは多くはないのですが、目指す場合にはどういったことをすると良いでしょうか。
アドバイザー
まずは、率直に上司にマネージャーになりたい旨を伝えて、どのような道を辿れば良いかを相談しましょう。企業によってマネージャーに求める資質は様々です。現職ではどんなところを評価されるとマネージャーになりやすいのかを確認して、必要な経験やスキルを磨くことが大切です。
相談者
なるほど。
アドバイザー
ただし、SESの会社の場合、マネージャーになったとしても、部下は常に複数の現場に出ているため、常日頃からメンバーの成長や動向をみて、細かくサポートするようなマネジメントはなかなか難しいと言えます。Sさんがきめ細やかなフォローやマネジメントができる人材になりたい場合には、転職を視野に入れたほうがいいかもしれませんね。
転職する場合
アドバイザー
転職をする場合には、上流工程のシステム開発や運用などを請け負うSIerなどをみてみると良いでしょう。こういった企業は元請け企業になることが多いので、自社が抱えるエンジニア社員も一定数いて、一つの案件に腰を据えて携われることが魅力です。プロジェクトマネジメントの機会はもちろん、常任リーダーとしてピープルマネジメントをする機会も、現職よりも恵まれるでしょう。
相談者
確かに、元請け案件を多く保有するSIer であれば、今よりももっと中長期で、プロジェクトに関わることができそうですね。
アドバイザー
他には、自社プロダクトを持っている会社のエンジニアや、社内SEとして転職するのも一つの手です。SEやプログラマーとしてのスタートにはなるでしょうか、中〜長期での開発に携われるので、自身のキャリアも長いスパンで捉えて考えることができるようになるのが魅力です。
相談者
なるほど。どちらも魅力的ですね。ちなみに、社会人歴が10年もあるのに、常任でのリーダー経験もなく未熟な場合、転職には不利でしょうか?
アドバイザー
そんなことはありません。特にエンジニア職の場合、経済産業省の「IT 人材需給に関する調査」によると、将来的なIT人材不足が懸念されています。つまり売り手市場とも言えるため、10年目なのにマネジメント経験がないという理由だけで、気後れする必要はありません。
相談者
そうなんですね。それを聞いて少し安心しました。ちょっとしたコンプレックスでもあったので、どう評価されるのかが怖くて、転職活動に少し尻込みしていました。
アドバイザー
お気持ちはわかります。ただ、完璧な人というはどこにいません。自分に足りていないと感じる部分がある場合には、そこを補う姿勢を見せれば大丈夫ですよ。例えば、先ほど伝えたような資格試験に挑戦するのも良いですし、顧客との折衝経験や自社社員への指導や教育で心がけていたことなどを具体的にアピールするのも有効です。
相談者
なるほど。これまでの自分が行ってきたことを棚卸して、強みとしてアピールできる部分を見つけていけばいいんですね。
アドバイザー
その通りです。SESだからこそ、リソース不足や技術不足などで立ち行かなくなった現場に戦力して投下され、顧客の課題解決に一役買った場面もあるはずです。これまで様々な現場で働いてきた経験をもとに、自分の得意な分野や業界を整理してアピールしてみてくださいね。
相談者
わかりました。これまで自分のマネジメント経験のなさが、密かなコンプレックスでもあったのですが、これからはそれを改善していくために行動してみます。今日はありがとうございました。
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