イマドキ女子は「ズルい」。そう感じたときのマインドリセット|川崎貴子の「働く女性相談室」
「働く女性の成功、成長、幸せのサポート」という理念のもと、キャリア支援やコンサルティング、結婚コンサルタントなど、幅広い領域で活躍されている川崎貴子さん。その経験と、女性経営者ならではの視点から、のべ1万人以上の女性にアドバイスをしてきた川崎さんが、「“働く女性”に立ちはだかるさまざまなお悩み」に、厳しくも温かくお答えするこのコーナー。
今回は、「若い女性社員をズルいと思ってしまう」お悩みについてです。
<今回の相談内容>
私が新卒からずっと勤めている会社では、「女性が働きやすい会社」を目指して多くのルールができました。正直、そのルールを普通だと思っている若い女性社員たちに、イライラします。私が20代のころは、時短勤務もノー残業デーも手厚い育休もセクハラホットラインも何もなく、会社にも上司にも守られず一人で頑張ってきました。なので、当然のように制度を活用する女性たちを見ると、つい「ズルい」と思ってしまい、当たりがきつくなってしまうことがあります。世の中の風潮だと理解していますが…。どうしたらいいでしょうか?(44歳女性、管理職)
<回答>
相談者さんが就職活動をしていた時は就職氷河期で、その後も不況が長い事続き、「女性が働きやすい会社を目指す」なんて、ほとんどの会社が言っていられない状況だったのは、私も同世代として理解しているつもりです。当時は今と比べてびっくりするほどノールールだったし、セクハラおじさんはいっぱいいたし、もっと露骨に男性中心の社会でしたよね!
そんな中で相談者さんは、転職したり辞めたりせずに管理職にまでなったのだから、相当一本気な頑張り屋さんなのだろうと勝手に想像しています。
そして、現状のイライラを負の感情と認識している事や、管理職としてマインドリセットしなければ、という気持ちも文面から伝わってきます。
「心を穏やかにして~、利他愛の精神を育むと~、幸せになれますよ~」
などと言って差し上げたいところですが、
心が穏やかにできないからの葛藤であることは重々承知。
われわれ、酸いも甘いも、苦いもしょっぱいもかみ分けまくっている40代。今回の解決策がそんなまっさらで単純な訳がない、と自身を振り返っても確信しております。
さて、相談者さんが今持てあましているのは、ご自身の「ズルい」と思う気持ちです。自分が得られなかった利益を、後から入ってきた他人(おまけに同性)が何の努力も無しに得ている事に対する妬みや嫉みの感情です。
残念ながら「妬みや嫉み」という感情は誰もが持つものであり、「完全に解脱する事」は、ちょっとやそっと滝に打たれたぐらいじゃ実現できなさそうです。
しかし、考え方や見方を少し変えることで相談者さんが楽になる可能性が高いので、今回はその方法をお伝えしたいと思います。
「妬みや嫉み」の感情は、どんな時にうまれるか?
誰かに「妬みや嫉み」を感じている時を振り返ってみると、だいたいパターンがあるのです。私の場合、自分の努力が評価されていない、プライベートで関わる人たちに大切にされていない、など「現状の自分に納得がいっていない」時でした。
要は日々の生活で「幸せだなぁ」「手ごたえがあるなぁ」と感じていない時なのです。
ですから、私は「妬みや嫉み」の感情が出てきたら、仕事の仕方やアプローチを変え、友人関係を見直す、という抜本的な一人改革をしてまいりました。
環境を変えるのは面倒ですが、「妬みや嫉み」の感情を持ち続ける方がずっとしんどいものです。
こうした負の感情が出るときは、キャパオーバーだったり、疲れすぎていたりと、大抵は無意識にストレスが蓄積されている状態であり、自分からのSOSだと私は思っています。相談者さんの場合も、妬みの正体は実は若い女性社員に向けられたものではないのかもしれません。
「妬み、嫉み」の感情がうまれたら、まずはご自身のパターンを知る事。そして次に、より得意で、評価されやすい仕事に立候補したり、大切にし合える好きな人とだけ交流したり、プライベート空間を好みの物で埋め尽くしたりと、ご自身を幸せにする事に全力で創意工夫してゆきましょう。
「ズルい」と思う相手は、「手の届く人」
テレビで海外セレブの豪邸や、レッドカーペットを完璧なボディで歩く女優さんを見ても、われわれは「羨ましい」と思うくらいで「ズルい」とは思いません。われわれとは住む世界があまりにも違う、彼ら、彼女らはそんな存在だからです。
どうやら私たちが嫉妬の対象として選ぶのは、自分と似通った環境、もしくはレベルの人であり、その上で「自分より得をしているように見える人」らしいです。
私も漏れなくそうなので自分の器の小ささに眩暈がしますが、それが人間の習性ならばあきらめる他ありません。それよりも注目すべきは、嫉妬対象者と自分自身がそんなに変わらないということです。
私は海外セレブにはなれませんが、嫉妬対象者が得ている利益を自分自身が享受する事はできるのです。だって、同じようなコミュニティで同じようなレベルで生きているのだから、少しの努力で得られる事、考え方を変えるだけで恩恵を受けられる事はたくさんあるはずです。
相談者さんの場合は、「私は○○すべき」「私は○○をしてきた」と頑なにならずに、今、権利を与えられているノー残業デーも福利厚生も、まるっと楽しんでしまいましょうよ。
将来、もしかしたらご家族の介護やご自身の健康で、時短制度を利用するかもしれません。そんな転ばぬ先の杖が会社のルールとしてある事を、「ありがたきこと!」と喜んでしまっていいのです。長い間社員として貢献してきた相談者さんは、その権利があるのだから。
嫉妬対象者を掘り下げ、先人に学ぶ
女性が働く環境はわれわれが20代だったころよりも社会全体として良くなってきたとは思います。では、今20代の働く女性たちは特別ラッキーなのか?というと、私はそうは思えません。
後20年経てば、われわれは60代。するかどうかは別としてリタイア時期が見えます。しかし、彼女たちはその時40代。世界で経験したことのない超少子高齢化社会を、働き盛りとして引っ張ってゆかなければならないのは彼女たちなのです。AIによって必死に努力して得たスキルが必要なくなる事もあるでしょうし、われわれ世代よりもさらに未来の保証がないように思えてなりません。
長い目で見ると、「ラッキーの札」は結構、平等に分配されているのではないかと、最近しみじみと感じています。
「ラッキーの札」と言えば、私の実母(83歳)ですが、我々世代からみるとおそらく「年金勝ち組」です。
昔にしては珍しく38歳まで働いていたからだとは本人談。そして、テレビで痛ましいニュースを見るたびに「われわれ老人が長生きしているから、彼らにお金や仕事が回らずに申し訳ない」が口癖で、定期的に寄付などをしているようです。
東京大空襲で逃げまどい、毎日食べるのもやっとで、小さかったのに親から離され疎開し、想像もつかないような経験をしながら命をつないだ母たち。
その後も家族が食べるために必死で働いた母たち。
その世代が、年金をちゃんともらえて良かった、と個人的には思っていますが。
そして、今私たちが「働きながら自分らしく生きる」なんていう選択肢があるのも、先人たちが屯田兵のように切り開いてくれた道だと思っています。
私たちが働いているのも、相談者さんが辞めないで管理職として頑張っているのも、きっときっと、次世代の女性たちへ良い影響があるはずです。
これまで先人たちが実績を作ってくれたように、より女性たちがイキイキと働けように、私たちより歩きやすい道を次世代に残して順番につないでいきましょうよ。
私たちの足跡が作る、「今よりもっと良い社会」を楽しみに。
回答者:川崎貴子
リントス(株)代表。「働く女性に成功と幸せを」を理念に、女性のキャリアに特化したコンサルティング事業を展開。
1972年生まれ、埼玉県出身。1997年、人材コンサルティング会社(株)ジョヤンテを設立。女性に特化した人材紹介業、教育事業、女性活用コンサルティング事業を手掛け、2017年3月に同社代表を退任。女性誌での執筆活動や講演多数。(株)ninoya取締役を兼任し、2016年11月、働く女性の結婚サイト「キャリ婚」を立ち上げる。婚活結社「魔女のサバト」主宰。女性の裏と表を知り尽くし、フォローしてきた女性は1万人以上。「女性マネージメントのプロ」「黒魔女」の異名を取る。2人の娘を持つワーキングマザーでもある。
イラスト:yoko
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