キャリアの停滞に危機感を覚えています【転職相談室】
30代半ばになると、自分のキャリアの停滞や会社の将来に危機感を抱き始める人が増えるようです。
このような悩みにはどんな解決策が考えられるのか、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタント・粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
30代半ばに差しかかり、キャリアの停滞に危機感を抱くようになりました。転職すべきか迷っているのですが、解決策はありますか?(Mさん/34歳/金融系)

地方銀行に新卒で入行以来、法人営業を担当しています。職場環境も取引先もほとんど変化がなく、自分のキャリアの停滞に危機感を覚え始めています。大学時代の友人の活躍ぶりを聞くと、ますます「自分だけこのままでいいのか…」という焦りと不安を感じます。思い切って転職するべきでしょうか?
キャリアの停滞を感じる理由を明確にする
▶アドバイザー
ご自分のキャリアが停滞していると感じる、詳しい理由を聞かせてください。
▶相談者
新卒で入行し、ずっと法人営業を担当してきました。大規模な案件はありませんし、取引先もほぼ同じなので、仕事がマンネリ化して成長している実感が持てません。営業経験しかない自分には、この先も同じ仕事しかないのではないか、現状に行き詰まったら転職するしかないのではないか、と思えてしまって。
▶アドバイザー
自分のキャリアの選択肢が少なく、限定されていると感じていて、その不安が危機感につながっているようですね。実は、何らかの理由で不安や危機感を抱く社会人は少なくありません。
▶相談者
ほかの人たちは、どんなことに対して危機感を覚えるものなのでしょうか?
▶アドバイザー
1つは、会社の将来性に対してです。支店の閉鎖や吸収合併の噂などを聞いて、「会社がなくなったらどうしよう」「このまま年収が上がらなかったら、経済的に不安定になりそう」などと考えてしまうのです。30代半ばになると家族を持つ人が増えて、プライベートへの影響も心配になるのでしょう。
また、仕事内容に対する危機感もあります。仕事に慣れすぎてモチベーションを保てない、仕事に意義・やりがいを見出せない、成長実感を持てないと感じるようなときです。
例えば、世間では働き方改革やDXが進んでいるのに、社内はアナログで旧態依然な慣習が残っているという現実に、「このままでいいのだろうか?」と不安になってしまうのです。
Mさんの状況と似たようなケースですね。
▶相談者
珍しくはないケースということでしょうか。
▶アドバイザー
そうです。そして、社内でのキャリアアップに対して不安を感じる人もいます。自分の業績評価がパッとしない、出世コースの支店・部署に在籍していない、直属の上司の姿に「10年後も、仕事内容や年収はあまり変わらないのでは…」と、自分の将来に希望が持てなくなってしまうのです。
▶相談者
私も、上司を見ていてそう感じることがあります。
▶アドバイザー
ほかにも、誰もが知っている有名企業に転職していった同期を見て、置いて行かれたように感じたり、転職して久しぶりに会った同僚の身なりや雰囲気が洗練されていて、キラキラしているその姿にうらやましさを感じるといった、他者との比較から感じる危機感もあります。
▶相談者
わかります。私自身も、同じ大学の友人と同じスタート地点だったはずなのに、いつの間にか友人はいろいろな経験・スキル・能力を手に入れ、自分はそのまま停滞しているように思えて、焦りを感じていますから。
▶アドバイザー
中には、世の中の動きから遅れてしまうことに危機感を感じる人もいます。現在のような予測不可能な時代には、自律的なキャリア形成、リスキリング(デジタル化などで生まれる新しい仕事や新しい仕事の進め方に適応するために、新しいスキルを習得すること)などの変化対応力が求められます。
ところが、変化対応力と言われても、「今の会社での経験しかないから、自分にできることは少なそう」「社内でキャリア研修があっても参加できる機会は少なく、結局は自分で学ぶしかなさそう」という不安があるかもしれません。
また、世の中の動きから遅れているとは思うものの、特に変化を求めない社内メンバーに囲まれ、自分も何となく流されてしまっている。そのような状態でいると、危機感を覚えることもあるのです。
▶相談者
なるほど。危機感を覚える理由は本当に人それぞれなんですね。
▶アドバイザー
Mさんの場合は、他者との比較から感じる不安もありそうですが、最大の理由は「キャリアの選択肢が限定されていると感じている」ことのようですね。
▶相談者
確かにそうです。お話を聞いて、漠然としていた不安がハッキリしました。
会社の環境が変えられないか、行動してみる
▶相談者
キャリアの選択肢が限定されているように感じる不安は、どうすれば払拭できるのでしょうか?
▶アドバイザー
まずは、どんな選択肢があるのかを考えてみましょう。「自分にはこれだけの選択肢がある」とわかれば不安が緩和され、解決に向けた具体的なアクションにつながっていくはずです。
▶相談者
わかりました。具体的に、どんな選択肢が考えられるのでしょう?
▶アドバイザー
最初に、現職の中での選択肢を探ってみましょう。選択肢を知るためにも、上司や他部署の先輩、同期などの社内人脈を駆使して、キャリアに関する話を聞いてみてはいかがでしょうか。
そして、社内でキャリア研修などがあれば積極的に参加し、自分の領域を広げたり、専門性を高めたりしていきましょう。
▶相談者
それが、具体的なアクションということですね。
▶アドバイザー
ほかにも、自分の専門性を高める部門に異動する方法があります。Mさんの場合、例えば、M&A・事業承継や地域活性化ファンドの運営などの部門があれば異動したり、社内で何かやりたいプロジェクトを見つけて応募するのです。
思い切って事業会社に出向し、金融・コンサルの専門的知見を得たり、事業づくりや事業運営の経験などを積んでいくのもいいでしょう。
すぐに形にはならなくても、発信したり対話したりを継続していくことで、さまざまな選択肢が見つかると思います。
▶相談者
わかりました。異動や出向を含め、社内にどんな選択肢があるのか探ってみます。
難しいようなら転職を検討する
▶アドバイザー
社内でアクションを起こしても状況が変えられそうにないなら、転職を検討してもいいでしょう。
▶相談者
転職といえば、35歳限界説という言葉を聞いたことがありますが、私の年齢も近いです。大丈夫でしょうか?
それに、私は金融の営業経験しかないので、「同業種・同職種という今の延長線上の転職以外には想像できない」というのが正直な気持ちです。
▶アドバイザー
転職においても、自分で選択肢を広げていくことは可能です。近年は30代後半や40代の転職も活発ですし、異業種・異職種への転職は今や珍しくありません。
Mさんの場合、業務で培った財務諸表を読み解くスキルなどを活かして、事業会社の経理・財務への転職、金融系コンサルへの転職、ITやWeb系の成長業界への転職など、“金融×営業”という以外の選択肢も考えられます。
▶相談者
それを聞いて安心しました。とはいえ転職は初めてなので、どのように活動を始めればいいかアドバイスをお願いします。
▶アドバイザー
複数の転職サイトや複数の転職エージェントに登録して、広く情報を収集するといいでしょう。転職した元同僚に話を聞いたりするのも、参考になると思います。
▶相談者
わかりました。転職エージェントを利用すれば、専門家にいろいろと相談に乗ってもらえそうですね。
▶アドバイザー
自分には選択肢が少ないと思うと、どうしても危機感が募ってしまいます。Mさんには、現職・転職以外の選択肢があるということも、是非知っておいていただきたいです。
▶相談者
それは何ですか?
▶アドバイザー
現職で培った金融知見を活かして、将来的にはコンサルとして独立する方法もある、ということです。公認会計士資格、中小企業診断士、税理士、社会保険労務士の資格を取得する、MBAなどで学び直しをしてスキルを補強する、オンラインでプログラミングやWebデザインのリスキリングをする、などして自己投資をしていけば選択肢はもっと広がります。
▶相談者
将来的に独立、という選択肢…考えも及ばなかったことですが、お話を聞いて未来への希望が湧いてきました。
▶アドバイザー
複数の選択肢があるのに、きちんと検討もせずに慌てて転職してしまうのは勿体ないと思います。転職すれば危機感を払拭できると考えがちですが、それは環境が変わって一時的な満足を得るに過ぎない、ということもあります。
実際にキャリアの停滞を招かないためにも、将来のキャリアプランをしっかり考えてアクションを起こしていくことが大切です。
▶相談者
わかりました。いろいろなアドアイスをいただいて、気持ちが前向きになりました。本当にありがとうございました。
キャリアの停滞に危機感を覚えて転職した事例
キャリア停滞への危機感を理由に転職した、30代半ばの社会人の事例を2つ紹介します。
【成功事例】専門的なスキルを自力で補強して転職し、キャリアアップへの危機感を解消
新卒で証券会社に入社し、個人を対象とする営業を続けてきた。営業スキルはあるものの、専門性が不足していることに危機感を覚え、独学で証券アナリストと日商簿記検定試験2級の資格を取得。M&Aコンサルに転職し、新たな仕事に就いて専門性を深化させている。(証券会社・営業 → コンサルティング会社・M&Aコンサルタント)
【失敗事例】社内のIT理解を深める行動をとっていれば、転職せずに危機感を解消できたと後悔
地元の地方銀行に新卒で入行し、社内SEを担当してきたが、社内の前近代的なシステムや上司のITに対する理解の低さに危機感を感じ、東京にあるSIer企業に転職した。しばらくして、退職した銀行でもDXの導入などが始まったことを知り、「自ら行動を起こして、もっと社内のIT理解を深めるよう努力していれば、地元を離れて転職する必要はなかった」と、少し後悔している。(地方銀行・社内SE → SIer企業・社内SE)
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