会社が業績不振により希望退職者を募集中…。転職した方がよいでしょうか?【転職相談室】
勤めている会社が業績不振となれば、これからのキャリアを不安に思う人も多いでしょう。
先を見越して転職するのが賢明か、現職に留まってキャリアアップのチャンスに期待するか悩む相談者へ、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんがお答えします。
目次
会社が業績不振で希望退職者を募集しています。転職した方がよいでしょうか?(Yさん/アパレル企画/30代/女性)
老舗のアパレル企業に勤務しています。ものづくりへの真摯な姿勢に共感し、7年前に飲食業から転職してきました。
3年前からは、やりたかった商品企画職に就かせてもらい、チャンスをくれた今の会社に感謝しています。
ただ、ファストファッションやECの台頭など時代の変化に押され、IT導入の遅れも重なって業績は年々悪化傾向に…。
さらにコロナの影響で大きな打撃を受けました。
今では、年配層を中心に希望退職者を募っており、このまま現職に留まることに不安を感じています。
私は希望退職募集の対象外ではありますが、将来を考えて、今から転職を考え始めた方がいいでしょうか。
将来性がないと判断するなら転職もアリ。まずは情報収集から始めよう
アドバイザー
好きな仕事ができているからこそ、苦しいご状況ですね。
Yさんは希望退職募集の対象外ですので、転職するかしないかの結論をすぐに出さなくてもいいでしょう。
ただ、今の会社に将来性がないと判断するなら、「転職活動」は今すぐにでも始めることをおすすめします。
相談者
転職するかしないかを決めずに、転職活動は始めるべき…? どういうことでしょう。
アドバイザー
転職活動のゴールは、必ずしも転職することではありません。
情報収集を進めて、現職とほかの会社の条件や仕事内容を比較検討した結果、「現職に留まって新しいキャリアを模索しよう」という結論になることもよくあるのです。
転職と転職活動を別々に捉え、情報収集の一環として始めてはいかがでしょうか。
相談者
そうなんですね。
転職活動は、転職することを決めてから動くものだと思っていました。
アドバイザー
社会変化が激しい今は、どんな業界・企業でも、他社に買収されたり倒産したりする可能性があります。
今から転職市場の情報に触れ、自分にはどんなキャリアの選択肢があるのか、自分の市場価値を見ておいて損はないでしょう。
状況が悪くなってから、「すぐに会社を探さなくては…」「早く仕事に就こう」と焦って行動すると、きちんと比較検討せずに入社を即決したり、自分の価値を下げて悪い条件で転職してしまったりと、さまざまなミスマッチのリスクが高まります。
相談者
最悪のケースを鑑みて、早めの行動が大事ということですね。
話を聞いていると、やはり将来性を考えて、転職した方が安心な気がしてきました。
どう判断すべきか、正解がないだけに迷います。
アドバイザー
もちろん、転職するのも一つの選択でしょう。
一方、希望退職によって社内のポジションが空けば、新たに仕事を任される可能性が出てくるかもしれません。
Yさんの会社が、今の業績不振の原因をどう考え、今後どう改善していこうとしているのか、経営陣の方針にもヒントがあります。
IT導入の遅れを巻き返すために「〇年以内には○○を取り入れた社内変革を進めます」「EC強化により、〇年後には事業の売上比率をこうすべく○○に取り組みます」など、はっきりとした経営方針やメッセージを打ち出しているか。
そして、そこに共感できるか。他業界、他企業と現職の状況を比較するためにも、情報収集は大切です。
業績不振・希望退職者の募集が理由で転職したい人へのアドバイス
相談者
では、情報収集の結果、転職に向けて具体的に動き出したいと思ったら、何に気をつけるべきでしょう。
業績不振を機に転職する際のポイントを教えてください。
前向きな志望動機・転職理由にする
アドバイザー
転職活動では、応募先企業に対して「自分を採るべき理由」を伝えましょう。
実際の転職理由が業績不振や希望退職者の募集であっても、採用する側にとって、それは関係のないこと。知りたいのは、候補者のスキル・経験が自社でどう活きるのかです。
業績不振を機に転職を考えたことを否定する必要はありませんが、次のキャリアでは何に挑戦したいのか、前向きな志望動機に置き換えて伝えることが大切です。
相談者
確かに、ネガティブな理由だけでは、企業側も採用したくないですね。
アドバイザー
例えば商品企画職をする中で、業績不振によりもどかしい思いをすることがあったのなら、志望動機として伝えるのはいかがでしょう。
以下は、志望動機の一例になります。
現職ではアパレルの新商品企画を担当し、○○や〇〇といったブランド立ち上げも経験しました。
ただ、ここ数年は業績不振により品質を追求できず、コストダウンに追われることが増えていました。
企画職で培った提案力や社内外の関係者との折衝・交渉力、進行管理や予算調整の経験を活かし、より品質にこだわれる環境で働きたいと、御社を志望しました。
相談者
なるほど。志望動機のイメージが具体的になってきました。
アドバイザー
自身の経験・スキルを転職先でどう活用できるのか、ポジティブにアピールしてほしいです。
以下の動画を参考に、志望動機や転職理由を作り込んでみましょう。
自身のスキルを整理し、異業界・異業種にも応募する
アドバイザー
業績不振が理由の場合、Yさんに似たキャリアの方が、一斉に転職市場に出てくる可能性もあります。
競争率が高くなるので、自分にしかない強みをしっかり言語化しておくといいでしょう。
企画職には、仮説に基づいたマーケティングリサーチ力、プレゼンテーションスキル、多くの利害関係者との折衝力など、多様なスキルと経験が求められます。
ご自身のスキルを整理すれば、異業界・異職種も幅広く選択肢に入ってくるでしょう。
相談者
そうですか。
これからの事業成長を見据えて、どの会社に応募するとよいのか考えていかなければいけませんね。
アドバイザー
そうですね。
BtoB領域であれば、ITやコンサルタント業務でYさんの企画経験や業界知識を活かせるかもしれません。
BtoC領域は、コロナの影響で、売上を伸ばした商材と落ち込んだ商材が明確に分かれています。
総務省が出している消費行動調査(3か年(2019年~2021年)の4月の推移)※を見ると、日用品や医療系商材など伸びている領域が分かるので、そこをヒントに企業選びをするのも一つの方法です。
また、最近は製造者が消費者に直接販売するDtoCのビジネスモデルが広がっています。
自社ECサイトで売上を伸ばしている企業をリサーチするのもよいでしょう。
※参考:「総務省統計局(新型コロナウイルス感染症の影響により 名目支出額に大きな変動が見られた主な品目など)https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_rf1.pdf」
相談者
なるほど。
これまでは「業績が不安」という一点で、早く転職した方がいいのかも…と視野が狭くなっていました。
情報収集により、広く情報に触れてみたら、いろいろな選択肢があるのかもしれません。
ありがとうございました。
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