仕事は充実しているが、労働環境に不満がある。転職しても良い?【転職相談室】
仕事内容に不満はないが、労働環境に不満があり転職を考えているというYさん。
労働環境への不満を理由に退職・転職しても良いかという相談に、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんがお答えします。
目次
仕事内容には満足していますが、労働環境に不満があり転職しようか悩んでいます(Yさん/27歳/エンジニア)

現在、ITベンチャー企業のエンジニアとして働いています。
上流工程の設計をしながら、自分でプログラミングコードをバンバン書いてスキルを高めたいと思い、職務領域が広い現在のITベンチャー企業に就職しました。仕事は願っていた通りに進めることができて充実しています。実力もついてきたように思いますが、労働環境に不満があり、転職を考えるようになりました。仕事に不満はないのに、こんな理由で転職をしても良いのでしょうか?
また転職する場合、労働環境を改善するために事前に気をつけておくべきことはありますか?
労働環境への不満は退職理由として珍しくないが、面接での転職理由には使えない
アドバイザー
労働環境への不満がきっかけで、転職活動を始めるか迷っているとのことですね。結論から伝えると、労働環境への不満を理由に退職するケースは珍しくありません。
ただし、面接で企業から転職理由を聞かれた際の回答としては十分ではないので、転職で何を叶えたいのかを深掘りしていく必要があると思います。
相談者
そうなんですね。仕事に不満あるわけではないのに、労働環境への不満が理由で転職をするなんて贅沢なのかな、やめておいたほうがいいのかな…と悩んでいました。
アドバイザー
具体的には、現職の労働環境のどんなところが不満ですか?
相談者
まず思いつくのは労働時間が長く、有給休暇などプライベートな時間を確保しにくいことです。長時間労働が原因で体調を崩して休職する人もいるので、いつか自分もそうなるかも…という不安でもありますね。
アドバイザー
なるほど。ベンチャー企業では、様々な職務を自ら担当できる機会に恵まれる反面、どうしても労働時間が長くなりがちですからね。他にも不満はありますか?
相談者
最近のIT企業やエンジニア職って、リモートワークや副業OKという組織も多いと思うんですが、現職では社員管理の環境が整っていないためどちらもできません。会社から貸与されるパソコンや開発に必要なツールのスペックも低く、自腹で有料ツールを導入したりしているので、それもなんとかしたいです。
アドバイザー
確かに、業務に必要なツールを自費で賄っているのは、なんとかしたいですね。エンジニア育成に力を入れている会社では、参考書の購入費や社外の技術セミナーへの参加費を支援していることも少なくありません。
相談者
そうですよね。どんどん新しい技術が生まれるので、ITトレンドについていくためには勉強は欠かせなくて…。今の会社は、仕事内容は充実していますが、そういった技術獲得のための支援はないので、一人で頑張っていくのに限界を感じているのかもしれません。
アドバイザー
仕事でスキルを高めたいという思いが強いのであれば、「一人で頑張るのに限界を感じる」というのは、Yさんが考えている以上に大きな不満に繋がっているのかもしれませんね。
転職して労働環境を改善したい場合
アドバイザー
さて、これまでに様々な不満がありましたが、この中でYさんが1番解決したいものは何ですか?それをベースに、仕事内容との兼ね合いも含めて、転職先企業を選ぶ条件のMUSTとWANTを整理してみましょう。
相談者
仕事内容との兼ね合いも含めて…ですか?
アドバイザー
そうです。例えば、「リモートワークできること」をMUST条件にしても、リモートワークさえできれば、働き方や仕事内容は何でも良いということにはなりませんよね。現状の一つひとつの労働環境への不満を全て解消できても、それがYさんにとって本当に働きやすく、やりがいのある仕事とは限りません。
相談者
確かにそうですね…。うーん、僕の場合は一つひとつの労働環境が不満で解消したいというよりは、ITベンチャーなのに、エンジニアが大切にされていないなと感じることが多くて嫌なのかもしれません。
アドバイザー
「一人で頑張るのに限界を感じる」とも、おっしゃっていましたね。
相談者
はい。スキルを高めて実力をつけたいので、自分でコードを書ける仕事内容で、エンジニアの成長を後押ししてくれる環境の会社で働きたいです。それがMUST条件ですね。
WANT条件は、メリハリをつけて長く健康に働きたいので、きちんと有給休暇も取れるようなところがいいです。どうやって探せばいいのでしょうか?
アドバイザー
まずMUST条件を満たすには、企業中でのエンジニアの立ち位置と、エンジニア職に対して経営陣の理解があるかどうかが大切です。
先ほど話に上がった参考図書購入や社外セミナーへの参加支援などの制度のチェックと合わせて、例えばエンジニア職出身で技術理解のある経営陣がどのくらいいるかなどを確認すると良いでしょう。
相談者
技術理解のあるエンジニア職種出身の経営陣がいると、何が良いんですか?
アドバイザー
技術への理解度が高い経営陣がいると、会社としてもエンジニア職の重要性や人材としての市場価値の高さを理解している可能性が高いので、様々な支援が期待できます。
例えば、新しい技術を習得するための学習支援やツール提供、能力を最大限発揮するための労働環境が整備されているかもしれません。社内でのエンジニア職の発言力・影響力にも期待ができると思います。
相談者
確かに会社によっては、営業部やマーケティング部、企画部などのビジネスサイドに言われたことを構築するだけの存在になってしまっているケースもありますよね。確かに、エンジニアが重宝されている会社なら、そういったことは少なくて、僕の希望にもあっているかもしれません。
アドバイザー
他にも、エンジニア採用に力を入れている企業では、採用サイトなどで自社情報をありのままに伝える採用ピッチ資料掲載しているケースも増えています。
在職エンジニアによるセミナー登壇資料をインターネット上でシェアしているケースも多く、資料上に会社組織や働き方について触れられていることもあるので、いくつか見てみるのも良いでしょう。
相談者
わかりました。SNSやブログなどでも情報発信をよくしているエンジニアも多いので、そのあたりも含めてチェックしてみます。
アドバイザー
そうですね。場合によっては、WANT条件として設定した、有給休暇の取りやすさなど、メリハリをつけて働きやすい環境かどうかを推察することもできると思います。有給休暇の取得率自体は、求人票に掲載している企業も多いですよ。
相談者
ちなみに有給取得率って、一般的にはどのくらいなんでしょう?現職では、ほとんど取得している人がいないので、目安がわからなくて、数字を見てもそれが凄いのかどうか判断がつきそうにありません。
アドバイザー
厚生労働省が発表した「令和3年就労条件総合調査の概況」によると、令和2年の1年間に企業が付与した繰越日数を除く年次有給休暇日数の労働者1人平均は17.9日。このうち労働者が取得した日数は10.1日なので、平均取得率は56.6%とされています。
もっとも取得率の低い業界の平均取得率は45.0%のため、この2つの数値を参考に考えてみると良いでしょう。
相談者
なるほど。ありがとうございます。
志望理由では、転職先で何を実現したいかをポジティブに伝える姿勢を忘れずに
アドバイザー
さて、最後に注意点として志望理由を企業に伝える際には、「労働環境への魅力」ばかりにならないようにしましょう。
相談者
それは、現職への不満ばかり伝えないようにするということですか?
アドバイザー
それもありますが、それだけではありません。志望理由には、その企業の仕事内容や働き方などどこに魅力を感じているかに加えて、自分がそこに入ることでどんなことを実現して、どう貢献していきたいかを伝える必要があるからです。
相談者
なるほど。労働環境が魅力的というだけでは、企業にどう貢献できるのかは入っていないということですね。
アドバイザー
そうです。労働環境が良い企業は、転職市場でも人気が高く、求職者も集まりやすい傾向にあります。そういうところに面接で「労働環境の良さに惹かれました」とだけ伝えても、ライバルと差別化できません。
自分の強みを踏まえた志望動機をきっちり伝えられるようにすることが大切です。
相談者
自分本位な理由だけではなく、どう企業に貢献できるか、自分をアピールできるように準備しておきます。
アドバイザー
Yさんの場合は、労働環境を改善したいという思いの根底には、スキルを磨いて成長し、仕事で成果を出したいという気持ちがあるはずです。そこを踏まえて、応募先の企業でどんなことにチャレンジしていきたいかを答えられるように準備しておくと良いでしょう。
相談者
わかりました。しっかり準備して、転職活動にのぞみます。本日はありがとうございました。
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