仕事は頑張りすぎず「ほどほどのキャリア」を築きたい【転職相談室】
競争による成長を促し「No.1を目指せ!」という上司に対して、違和感を覚えるというTさん。
頑張りすぎずほどほどのキャリアを築きたいので転職したほうがいいのか…という相談に、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんがお答えします。
目次
ほどほどのキャリアを実現したいのですが、上司の方針とマッチしません。転職したほうがいいでしょうか?(Tさん/23歳/営業)

現在、熱血とも言えるような仕事に情熱的な上司のもと、人材会社で営業として働いています。同僚のことは好きですし、仕事内容や待遇にも不満はありません。ただ、「仕事は少し無理をしてでも、目標達成に向けてやりきることで成長できる!No.1を目指せ!そうすれば年収も上がる!」という上司の方針に馴染めずにいます。
僕の目標は、無理して頑張りすぎず、そこそこの年収を稼いで普通のくらしを安定して続けていくことです。ほどほどのキャリアを実現したいのですが、そう思ってしまうのは会社とマッチしていないからでしょうか?仕事は好きですが、転職したほうがいいですか?
Tさんにとって「ほどほどのキャリア」とは
アドバイザー
まず、ほどほどのキャリアを目指したいとのことですが、Tさんにとっての「ほどほど」とは、具体的にはどの程度でしょうか?
相談者
「ほどほど」というと誤解されてしまうかもしれませんが、決して働きたくないというわけではないんです。楽して大金を稼ぎたいわけでもありません。
ただ、プライベートや健康を犠牲にせず、頑張りすぎず、それでいて贅沢しなければ普通に暮らしていけるくらいの年収をきちんと定年まで稼ぎたいと思っています。
アドバイザー
ちなみに、どんなことが「頑張りすぎ」の範囲に入りそうですか?
相談者
連日の長時間残業や、出世や目標達成のために過度な競争とプレッシャーに耐えて無理やり働くことは、頑張りすぎだなって思ってしまいます。
アドバイザー
では希望としては、出世や目標達成など競争にはこだわらず、心身ともに健康な状態で無理なく効率的に働いて、それに見合った分だけの報酬を長期的に得たい…といった感じでしょうか?
相談者
そうです。そう考えるのっておかしいでしょうか?
アドバイザー
大丈夫です、そんなことはありませんよ。株式会社リクルートマネジメントソリューションズが発表した「2020年新入社員意識調査」によると、Tさんと似たような考え方を持つ若手社員は多いようです。
出典:株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「2020年新入社員意識調査」
相談者
この調査によると、仕事をする上で「競争に勝つ、NO.1になる」の重視度は最下位なんですね。
アドバイザー
図表1にあるように、自分の「成長」と共に「貢献」というキーワードが共に30%超え、続いて「やりがい」や「仲間」が続いていますが、「達成」「創造」「仕事以外」「金銭」「ビジョン」「競争」というキーワードは10%以下の選択率になっています。
もしかすると、Tさんにも共感するところがあるかもしれませんね。
相談者
すごく分かります。今の職場も、仲間と一緒に働くのは楽しいし、顧客に必要とされて社会や企業に貢献することにはやりがいを感じます。
ただ、自分の年収アップや営業成績でNo.1を取るために競争して、目標達成のためなら、何を犠牲にしても頑張る…という価値観に馴染めないだけなんです。
アドバイザー
その気持ちを集約した結果、「ほどほどのキャリアでいい」という言葉に行き着いたんですね。
相談者
はい。上司の考え方とは真逆ですよね。会社の考え方とマッチしていないなら、やっぱり転職したほうがいいんでしょうか?
アドバイザー
今の状況だけでは、一概に転職をしたほうが良いとは言い切れないかもしれませんね。
相談者
えっ、それはどうしてですか?
アドバイザー
前述したアンケートのように、競争による鍛え合いよりも、互いに助け合い成長していく職場を理想とする若者が多いので、企業側がその価値観を受け入れて歩み寄っていくケースも予想されます。
数年後、十数年後には、Tさんの会社もそういう方針になっているかもしれませんよ。
相談者
なるほど。
アドバイザー
それに、Tさんの現在の上司は競争による成長を促しているかもしれませんが、今後部署異動をした際に、別の上司も同じ考えとは限りません。
今の仕事内容が充実していて、同僚とも良い関係を築いており、大きな不満やストレスがないのであれば無理に転職を考えなくても良いかもしれません。
ほどほどのキャリアを目指す場合のキーワードは「効率性・合理性」
アドバイザー
それに、現職のままでもTさんが考える「ほどほどのキャリア」は実現できると思いますよ。
相談者
えっ、そうでしょうか?
アドバイザー
キーワードは、一定の時間内で、無駄のないように物事を行う「効率性」と、昔からのしきたりや慣例にとらわれずに、理屈や道理に合うことを行う「合理性」です。
相談者
どういうことですか?
アドバイザー
まず、会社は成果を上げて利益を生み出す場なので、一定の成果が上げられるのであれば、上司が推奨する方法と全く同じやり方でなくとも構わないということです。
すでに上司のやり方で一定期間取り組んだ後なのであれば、次は自分なりの創意工夫や変更をしてみても良いでしょう。これが、合理性です。
相談者
なるほど。
アドバイザー
次に、心身ともに健康な状態で無理なく成果を出すためには、効率性が求められます。
例えば、営業成績の良い先輩の使っている資料を使わせてもらうことで資料作成にかける時間を減らしたり、事務的なやりとりは営業アシスタントにサポートしてもらったり、周囲の人のスキルをうまく頼ることが大切です。
相談者
なんでも自分一人でやるのではなく、同僚と協力して成果をあげるんですね。
アドバイザー
そうです。「ここぞ!」という商談では、躊躇わずに上司に同行をしてもらうのも良いでしょう。そうやって成果が上がったら、周囲にもその知見をフィードバックすれば、より協力体制が築きやすくなります。
相談者
それはいいですね。自分一人でNo.1を目指すよりも、楽しく働けそうです。
ほどほどのキャリアを目指していても、自己成長は必要
アドバイザー
周囲に頼ることで、時間を効率的に管理することができれば、新しいスキルを磨く余裕も生まれます。
例えば、「より効率的に成果を出すために、もっとプレゼンスキルを磨こう」と思うかもしれません。そうして積み重ねていく時間は、成長にもつながり、いつか転職をしたいと思った時に役立つかもしれません。
相談者
えっ、転職ですか?
アドバイザー
直近では、現職に留まる決断をしたとしても、数十年後に会社や自分がどうなっているかはわかりません。会社の事業が変わっている可能性もあるし、自分も加齢とともに組織での役割が生まれ、育児や介護など家族環境の変化により今とは考え方が変わる可能性もあります。
相談者
確かにそうですね。
アドバイザー
人生100年時代と言われ、将来的には70-80歳まで就労が必要と予想されている状況下で、長く安定して収入を得るためには、必要に応じて転職を選べるだけの、スキルと経験も備えておくと良いでしょう。
相談者
現職でのキャリアだけに固執して、自己成長を疎かにしているといつか困ってしまうかもしれないってことですね。
アドバイザー
その通りです。「ほどほど = 怒られず、目立たない程度の成果を出す」と捉えるのではなく「ほどほど =効率的かつ合理的に成果を出す」と捉え直すと良いですよ。
相談者
わかりました。僕は、体調を崩すほど長時間働いたり、無理して頑張りすぎたりしたくないだけで、新しいスキルを習得するのが嫌なわけではないんです。業務内でそういったことに取り組む余裕が生まれたら、すごく素敵だと思います。
アドバイザー
ぜひ今の会社を利用してスキルを磨き、お手本となるロールモデルや協力し合える仲間を見つけて、効率的・合理的に成果を出すことを意識してみてください。
転職や独立などの変化にも対応できるように自己成長を心がけることが大切ですよ。
相談者
わかりました。しばらくは現職で効率をキーワードに頑張ってみます。今日はありがとうございました。
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