「仕事が速い」とよく言われます。転職活動でアピールにつながりますか【転職相談室】

「仕事の速さ」を周りから褒められることが多いという相談者。転職活動でも、その強みはアピールポイントになるのでしょうか。
採用担当者へ説得力ある自己PRをするために、具体的な数字やエピソードを使ったアプローチ方法を組織人事コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
「仕事が速い」が強みの場合、どのようにアピールすると評価に繋がりますか?(Mさん/25歳/IT業界・営業)

<相談内容>
営業として、レスポンスの速さが信頼につながると考え仕事をしてきました。
メールの返信も数時間以内に返すことを心がけ、お客様からが求める情報をすぐに提供できるよう業務スピードを上げる努力をしてきました。
おかげで、「対応が速くて、心強い」といったお言葉もいただけます。
社内でも、営業報告書などの書類提出や入力対応が速く、上司からも「仕事が速いね」と言ってもらえます。行動量が成長につながると思っているので、顧客アプローチも周りの1.5倍の量を続けており、顧客接点の多さが安定した営業成績につながっています。
転職活動でも、こうした仕事の速さを強みとしてアピールしたいのですが、どう伝えるといいでしょうか。
「仕事が速い」というだけではアピール不足の可能性も
▶アドバイザー
仕事の速さは、ビジネスパーソンに求められる大事な要素の一つです。
Mさんがおっしゃるように、レスポンスが速いこと、確実に提出書類を出すことなどは、周囲との信頼関係を築く上で重要です。
行動量の担保も、短期間で多くの経験を積み、成長を続けるために欠かせません。
ただ、仕事の姿勢として素晴らしいと思う一方、転職活動でのアピールポイントとしては、少し懸念もあります。
▶相談者
そうなんですか。どのような懸念を持たれてしまうのでしょう。
▶アドバイザー
企業側から見ると、仕事のスピードが速いだけでは、具体的にどのような成果につながっているのかが分かりません。
自社でどのように貢献してくれるのかも読めず、評価しづらいと思われてしまう可能性があります。
▶相談者
なるほど。中身や成長が伴ってないかもしれない…と思われるんですね。
仕事の速さと併せてアピールできることを探ってみる
▶アドバイザー
そこで、「仕事が速い」ことと併せて伝えられる他の強みはないか深掘りしてみましょう。
例えば、以下の4つのような強みが考えられます。
1つ目は、「深い思考力」です。
定型業務のオペレーションを速く正確にできることは基本的なビジネススキルとしてとても大切です。
ただ、仕事の速さだけをアピールしてしまうと、指示された作業をやっているだけ…とも捉えられ、根本的な業務改善への取り組みや、仕組みにまで目を向けるような、深い思考に支えられた仕事ができるのかという疑問を持たれてしまいます。
採用担当者にとって、伸びしろを感じにくいともいえるでしょう。
そこで、仕事の速さだけではなく、自分なりに課題分析をして業務フローを考えたり、改善提案をしたりした経験を一緒にアピールすることが大切です。
例えば、「トップ営業にヒアリングするとお客様への提案数が成績につながるカギだと分かったので、提案数を上げることに注力しました」とアピールすると、「自社の営業で成果を出すポイントを自分なりに抽出して動いた」ことが伝えられるでしょう。
▶相談者
そうか。強みをひとつに限定する必要はないんですね。
▶アドバイザー
そうですね。多すぎて何をアピールしたいのか分からなくなってしまわない限り、複数の強みがあっても大丈夫です。
その上で、2つ目は「継続力」です。
仕事の速い人は飲み込みが早く、臨機応変に対応する力に優れている一方、一つのことをコツコツ継続して取り組んだり、中長期的な視点を持って課題に向き合ったりすることが苦手な人もいます。
そうした懸念に対しては、長期プロジェクトや複数案件における取り組みをアピールし、年間を通じて、仕事の速さを実現させてきたことを伝えるといいでしょう。
例えば、仕事の速さと量を担保し続けられたのは「汎用で使えるプレゼン資料などをコツコツ蓄積してきたから」「見込み客リストの作成時間を毎日とり、営業先が枯渇しないように行動してきたから」など、継続して努力してきた姿勢を伝えるのもいいと思います。
▶相談者
社内外の勉強会に積極的に参加して、業界知識のインプットも続けています。
そうしたことも一緒に伝えられると、なぜ「周りより仕事が速いのか」をより説得力を持って伝えられますね。
▶アドバイザー
それはいいエピソードですね、ぜひ盛り込んでみてください。
3つ目は「仕事の質」、4つ目は「仕事の成果」です。
仕事が速いと、“量”に対応できるようになります。では“質”は伴っているのか、成果につながっているのか、という点は企業側が知りたい重要なポイントです。
仕事の速さを追求することを通じて、量だけでなく、「いかに質を高めることにつなげたか」そして「速さを追求した結果として高い成果につながったのか」という実績まで伝えるようにしましょう。
例えば、「初期は量ばかり追って受注率が〇%と低かったので、失注の理由や改善点を自分や上司の助けも借りて改善していき、受注率も▼%に向上。社内でも上位◯%になりました」など、具体的な数字を出しながら説明できるといいでしょう。
また、「営業で高い成果を出すためには商談数の確保が必要だと判断し、成果から逆算して考えた結果、1つ1つの仕事を速められるようになった」など、“成果”の観点から説明する工夫も大切です。
仕事が速い理由を、STARのフレームワークで考えよう
▶相談者
仕事を速くできるようにするために、どう工夫したのかを紐解くことが大事なんですね。
▶アドバイザー
そうです。仕事が速いのは、Mさんが何らか工夫を重ねた結果のはず。
仕事が速いことがどのような結果をもたらしたのか、といった実績やエピソードを伝えるようにしましょう。
▶相談者
「なぜ仕事が速いのか」を考える視点はなかったです。
どう思考を整理していくといいのでしょうか。
▶アドバイザー
仕事の質や成果を具体的に伝えるために、活用したいのが「STAR」のフレームワークです。
以下の観点に沿って情報を整理することで、思考や行動プロセスを明確にする手法 Situation:どのような状況で Task:どのような課題があり Action:どのような行動をして Result:どのような成果が出たのか |
このフレームを使って整理していくと、ただ仕事が速いだけではなく、思考力や継続力の高さもアピールできるようになります。
整理する際は、「5w1h」を意識すると、第三者にも伝わりやすくなるでしょう。
以下の項目を満たしながら順番に沿って話すこと When:いつ Where:どこで Who:だれが What:何を Why:なぜ How:どのように |
▶相談者
整理するポイントがあると分かりやすいです。
あとは、どこまで具体的に伝えるべきか…ですね。
▶アドバイザー
営業職でしたら、目標数値や達成率を数字で具体的に示し、周囲との相対比較でどれくらいの成果なのかを伝えるのも大切です。
STARの4点を具体例で見ていきましょう。
状況: 「1年目は達成率が80%で、成果が出ませんでした。そこで、何を改善すれば成果につながるのか、高い達成率を上げ続けている先輩社員と何が違うのか数字で振り返りました」 課題: 「社内の高業績(上位10%)の先輩社員30名と比較すると、自分は商談数も受注率も70%水準と低いことが分かりました。行動総量も少なく、仕事が遅いために事前準備が足らず提案の質も低かったのです」 対策: 「行動総量については、見込み客の抽出、資料準備、アプローチ、商談時間、営業報告書作成などの一つひとつの行動を可視化。先輩社員に資料をもらって参考にするなど、これまでイチから作成していた資料準備にかける時間を10%減らしました。また、ロープレ、先輩の同席、顧客の業界や顧客についての勉強会への参加、プロダクト開発のエンジニアに技術面も教えてもらうなどの行動を重ね、提案の質を上げていきました」 結果: 「その成果として、2年目は12ヶ月中10ヶ月達成で年間目標を105%達成。3年目は全月達成し、部門MVPを受賞することができました」 |
このように、結果を出すために何が必要かを考え、そのために仕事を速くできるように実践を繰り返したことが伝わるように整理していけるといいですね。
▶相談者
すごい!例を示してもらえると、“具体的に伝える”という意味がよく理解できます。
「仕事が速い」というのは、あくまでも表面的なことで、「そのために何をしてきたか」が大事なんですね。
▶アドバイザー
その通りです。
▶相談者
まだまだ、強みの伝え方が浅かったことがわかりました。
STARのフレームワークを参考に、改めてこれまでの仕事の仕方を振り返ってみます。ありがとうございました!
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