年功序列の会社で昇給昇進を待つべき?転職するべき?【転職相談室】

年功序列の社風で、「成果に見合った評価がされない」と物足りなさを感じている相談者。
転職活動を始める前に考えたい年功序列のメリット・デメリットや、対する成果主義の社風にはどんな特徴があるのかを、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんがお答えします
目次
せっかく成果をあげても年功序列で評価されません(Iさん/営業/25歳)

<相談内容>
新卒で入社した今の会社は、年功序列の評価制度が残る日系メーカーです。
福利厚生の良さや安定性を求めて選んだのですが、昇給も昇進も年功序列であることに、だんだん物足りなさを感じ始めました。営業職としてきちんと目標を達成していますし、大きなプロジェクトで成果を上げている自負もあります。でも、一定のレベルでしか評価されず、ポジションが上がる年齢もだいだい予測できます。良く言えば先の見通しが立てやすいのですが、給料が大きく上がるのは十数年先だと思うと、せっかく売上を立てているのに意味がない、時間がもったいないとも感じてしまいます。
年功序列が嫌で転職するのはアリでしょうか、それともここはグッと我慢して、評価される年齢まで待ったほうが良いのでしょうか。
年功序列のメリット、デメリットをまずは整理
▶アドバイザー
社会人3年目は、仕事にも自信が出始める時期です。年功序列の社風で、「評価されるまで待つべきか」とモヤモヤを感じるのは、実績も上げているからですね。
▶相談者
ちょうど3年目から大型顧客を任されるようになり、営業として手ごたえを感じています。数字をしっかり追いつつも、周りのメンバーやお客様からも「一緒に仕事しやすい」「信頼できる」などと言ってもらえることも増えてきたんです。
だからこそ、せっかく成果を上げているのに昇給につながらない…と物足りなさを感じてしまいます。時間とともに評価されるなら、それを待つのが賢い選択なのかとも思い、日々心が揺れています。
▶アドバイザー
なるほど。それでは、現状を整理するためにも「年功序列」をメリット・デメリットふまえて整理してみましょう。
そもそも年功序列とは、「年齢・勤続年数が増すほど、給与や役職が上がる評価制度」を指します。終身雇用・年功序列の組織のあり方は、高度経済成長期に広がった制度ですので、今は徐々に変化しています。
ただ、Iさんの会社のように、日系企業を中心にまだ残っているところも多いですね。
▶相談者
大学同期で外資企業やベンチャーに入った友人たちは、早々に役職についたり、業績に応じてインセンティブをもらったりしていて、羨ましいなと思っています。
でもきっと、長く続いてきた制度だからこそメリットもあるんですよね。
▶アドバイザー
そうですね。まずは年功序列制度のメリットを考えていきます。Iさんが入社理由に挙げたとおり、「安定して働ける」点が大きなメリットでしょう。
キャリア面では、何年後にどのポジションに就くのかが予測できるため、中長期的なキャリアパスを描きやすく、ロールモデルも見つけやすい。段階を追ってスキルアップできるよう、育成の仕組みが整っている組織も多いです。
また、組織や社風面では、離職率が少ないので一体感や帰属意識をもって働きやすく、評価で差が出ることが少ないため、人事上のストレスが少ないとも言えます。
▶相談者
今の働く環境を考えると、確かにそうだなと納得感があります。一方のデメリットは何でしょうか。
▶アドバイザー
変化が乏しく、キャリアの流動性が低いところです。まさにIさんの物足りなさの理由だと思いますが、成果よりも勤続年数や年齢が評価されるため、年収も段階を追ってしか上がりません。役職などが固定され、本来持つパフォーマンスを発揮できない人もいるでしょう。
組織や社風面では、年齢による上下関係が強く、挑戦よりも安定や前例踏襲主義により、新しい取り組みが生まれにくい特徴があります。若手の意見が尊重されにくい会社もあると思います。
年功序列の反対「成果主義」のメリット、デメリットを整理
▶相談者
うーん。年功序列制度のデメリットを聞いていると、「やっぱり今の会社を辞めて、転職したほうが良さそう」と思ってしまいますね。
▶アドバイザー
年功序列制度の反対には、「成果主義」があります。成果主義とは「仕事の成果に応じて、給与や役職などの待遇を決める評価制度」のことです。
どんな会社に転職すべきかを考える前に、成果主義のメリット・デメリットも知っておくといいと思いますよ。
▶相談者
なるほど。転職するなら、きちんと評価してくれることころがいいなと思っていましたが、具体的にはどんなメリットがありますか?
▶アドバイザー
最大のメリットは、自分の意思や行動次第で得られるものがある、ということです。キャリア面では、実力や成果次第で役職についたり、希望の仕事に就けたり、年収アップなどが期待できます。
▶相談者
自分の努力や創意工夫次第でキャリアを作っていける、ということですね。
▶アドバイザー
そうです。組織や社風面では、健全な競争意識が働くと、仲間同士で切磋琢磨でき、スキルアップへの刺激を受けられます。
成果に基づいた評価制度なので分かりやすく、社内政治的なしがらみが少なくなります。成長志向の人が集まり、チャレンジが評価される社風につながるでしょう。
▶相談者
いいですね。でも、成果主義には年功序列制度にはない厳しさがたくさんありそうです。
▶アドバイザー
おっしゃる通り、成果が出ないときには評価も低くなり、働きづらくなるという厳しさはあります。
▶相談者
他には、どんなデメリットはどんな点がありますか。
▶アドバイザー
キャリア面のデメリットは、成果のみを追求することでプロセスの優先順位が下がる点です。社内の情報共有やサポートを得る機会が減り、スキルアップしづらくなる可能性もあります。
営業職であれば、営業の仕事のみに集中するため、経験の幅が狭まることもあるでしょう。組織や社風面では、個人主義になり、チームワークを築きにくくなるかもしれません。
常に成果を求められ、成果を出せなければ降格もありうるという環境では、ストレス負荷も高くなります。
▶相談者
なるほど…。定量面の成果だけで同僚同士が評価を判断すると、ドライな社風になりそうですね。
▶アドバイザー
「成果を出した人が偉い」となると、プロセスが丁寧でしっかりしていても、そこには見向きもされなくなってしまいます。ノウハウを共有しようという意欲が生まれず、スキルアップの仕方が属人的で自己流になることもあるでしょう。
▶相談者
年功序列制度は嫌だ、と思っていましたが、成果主義も良いことばかりじゃないんですね。
【転職時の注意点】年功序列が向いている人と成果主義が向いている人。
▶アドバイザー
双方に良し悪しがあり、どっちが良い、ということではありません。自分ならどんな環境で働くことが向いているか、自身の性格特性と一緒に考えることが大切です。
▶相談者
年功序列と成果主義では、それぞれどんなタイプの人が向いているのでしょうか?
▶アドバイザー
年功序列の会社が向いている人には、
- 同一の企業で長くコツコツと仕事をしていきたい人
- 長期的なスパンで成長したい人
- プロセスを重視してもらえるような仕事に就きたい人
- 将来を見据えて安定した生活設計をしていきたい人
- 組織への帰属意識が強い人
- 仲間との一体感が好きな人
などが挙げられます。
▶相談者
なるほど。
▶アドバイザー
一方、成果主義の会社には、
- 早い段階で裁量のある仕事に就きたい人
- 業績を上げて報酬をアップしたい人
- 特定の分野のスペシャリストとしてキャリアアップしていきたい人
- 将来のキャリア目標が明確で、成果や実績を上げて目標を実現したい強い意志がある人
- 競争環境の中で、仲間と切磋琢磨して成長したい人
- 新しいことに挑戦できる風土が好きな人
が向いているでしょう。
▶相談者
転職を考える前に、自分がどんなキャリアを築きたいのか、どんな働き方が向いているのか、自己分析を深める必要がありますね。
もし、成果主義の会社に転職しようと思ったら、転職活動でどんなことに注意すべきでしょうか。
▶アドバイザー
年功序列の今の会社から、成果主義に振り切った会社に転職すると、カルチャーギャップは大きいと思います。そこで、面接時に、評価制度について詳しく聞いてみるといいでしょう。
営業職で転職するのでしたら、営業数字が評価全体のどれくらいの割合を占めているのか。組織貢献度や、挑戦へのプロセスも一定の割合で評価される組織でしたら、そこまで大きなギャップなく、馴染めるかもしれません。
▶相談者
超成果主義な会社は、厳しそう…ということですかね。
▶アドバイザー
いいえ、そんなことはありません。もし、これまでと異なる成果主義の環境に飛び込むのでしたら、早いうちにチャレンジするのも1つの手です。年功序列の働き方を5年10年と長く続けてから転職するよりも、若手のうちに転職した方が、カルチャーギャップにも早いうちに馴染めるかもしれません。
ただ、成果主義の会社は成果が出せているときは良いけれど、成果が出せなくなると精神的にもしんどくなります。会社を変えると、人間関係や仕事の進め方も変わるので、今と同じような成果を上げられるとは限りません。
そうした前提をきちんと理解した上で、実現したいキャリアに向けて、動いていくことをおすすめします。
▶相談者
ありがとうございます。まずは、自分の理想とする働き方や性格特性などを振り返ってみて、自己理解を深めるところから始めたいと思います。
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