【株式会社メガネスーパー】赤字を3年で黒字転換させた星﨑社長の「実行力」
フクロウマークでおなじみ、現在全国に370店舗(9月13日現在)を展開するメガネスーパー。長年赤字が続いていた同社は、2013年に社長に就任した星﨑尚彦氏の手腕により業績V字型回復。2017年4月期で2期連続の黒字を実現し、今期も売上・利益とも予想を大幅に上回るペースで伸びているという。
星﨑社長は三井物産を経て、経営トップとして外資系企業の日本法人を渡り歩き、業績を飛躍的に向上させてきた人物。異業界からメガネ業界に飛び込み、どんな戦略を実行したのか。そして今後の展望は?星﨑社長に詳しく聞いた。
▲株式会社メガネスーパー 代表取締役社長 星﨑尚彦氏
目次
技術力を武器に、安売り路線から「アイケアカンパニー」へと転換
ファンドからの要請で、星﨑社長がメガネスーパーの社長に就任したのは2013年。入社当時を振り返り、星﨑社長は「ビジネスモデルと社員の意識に問題があると感じた」と話す。
2000年代、格安チェーンの台頭によりメガネスーパーも「安売り路線」へ移行した。その結果、価格競争の波に飲み込まれ、2008年に赤字転落。その後もなかなか浮上できず、赤字決算が続いていた。
「“値段勝負”に勝利はありません。安さで戦っても、身をすり減らし、疲弊するだけ。誰も幸せになれません。そんな状態だから、スタッフにも活気がありませんでした。長年赤字続きだったから仕方ないのですが、みんな自分の身を守ることに精一杯で、能動的に仕事をしない。早くこの状態から脱却しなければと思いました」。
星﨑社長が感じたメガネスーパーの武器は、「技術力」。店舗で目の検査やメガネ、レンズの加工に携わる人の中には、長年働く職人肌の人も多く、自身の技術に誇りを持っていた。目やメガネに対する思いやこだわりも強い。「これこそ、メガネスーパーの軸であり、伸ばすべきところだ」と確信した星﨑社長は、無謀な安売りをストップし、お客様の“目”に寄り添い目の健康を守る「アイケアカンパニー」へと舵を切り直した。
「ホシキャラバン」を組んで全国370店舗を回り、一人ひとりの声を聞く
スタッフの「意識改革」も、徹底して行った。すべての店舗の現状を知り、スタッフ一人ひとりを知るため、星﨑社長自らハイエースを運転して全国を回るキャラバン隊「ホシキャラバン」を組成。全スタッフと腹を割って話し、課題を聞き出し、「アイケアカンパニーとして売り上げ、利益を拡大するために何ができるか、考え続けてほしい」との思いを伝えて回った。店内のディスプレイを一緒に変えたり、近隣にチラシをポスティングしたりという業務も、星﨑社長が率先して行ったという。しかも、一度回っただけではない。「今日までに、全国の店舗を4周した」ほどの頻度だ。
社長の思いが一人ひとりに伝わり、「社長が自分を見てくれている」とわかれば、人は奮起するものだ。皆が接客サービスの向上、検査、加工技術の向上に努めるようになり、客足も増加。客単価はこの4年で2万円台から3万6000円に上がったという。
「浅い知識、接客では、高単価の商品は売れません。豊富な知識と丁寧な接客でお客様にご納得いただく必要があります。そのためには、目やメガネに関する知識はもちろん、メガネ以外の情報にも精通し、人間力そのものを高める必要があります。ホシキャラバンでは、まずは新聞を読むよう皆に伝えましたが、自主的に勉強し、知識向上に努める人が増えていると感じますね」。
会社の戦略や方針、スタッフにやってほしいことなどは、「天領ミーティング」と呼ばれる全体会議で随時発信している。週に1回、全国から200人ほどのスタッフを集め、思いを込めて現状と未来を伝え続けている。「会社で今起こっていること、やろうとしていることは自分の口から伝えないと正しく伝わらない」からだ。
「このミーティングは誰が参加してもOK。ミーティングの模様はUstream(動画共有サービス)でライブ中継しているので、店舗で見てもらってもいいし、仕事の合間や自宅などでアーカイブを見てもらってもいい。とにかくすべてをオープンにしています」。
自身の可能性を広げる「マルチファンクション」、「勤務先の希望優先」など働きやすさも重視
意識改革、理念浸透と並行して、スタッフの能力開発や、働きやすい環境づくりにも注力した。
能力開発のために取り入れたのが、「マルチファンクション」。自身の専門性を磨きながらも、自分の強みや得意なことを軸にほかの業務にも携われるという制度だ。例えば、店舗スタッフとして経験を積みながらも、プライベートブランドの商品開発に関わったり、顧客に送るハガキやチラシなどのデザインや施策内容を考えるマーケティングに携わるなど、やりたい業務に自由に手を挙げることができる。その結果、別部門のほうが向いていると判断されれば異動の可能性もある。強制しているわけではないが、思わぬ適性に気づけたり、店舗にいながら視野を広げられるとの理由から、多くのスタッフがマルチファンクションに参加しているという。
「社内副業」も星﨑社長が新設した制度だ。社員、および社員の家族が、チラシのポスティングなど、社外に外注していた業務の一部を、副業として手掛けることができる。もちろん正当に報酬が支払われるので、好評を得ているという。
また、理由は問わず、希望の勤務地があれば、転勤できるようにもした。ライフステージの変化に合わせて勤務地も自由に選び、ストレスフリーでイキイキ働いてほしいとの思いからだ。
「できるだけ家の近くの店で働きたい、ご家族の介護で実家に戻りたいなどさまざまな要望がありますが、基本的にはすべての要望に応えています。先日は、結婚するから北陸の店舗に異動したスタッフが、『予定が変わったので、地元の店に戻りたい』と関東の店舗に戻ってきたケースもありましたね。もちろん何の問題もありません。スタッフに気持ちよく働いてもらうことが第一ですから」。
プロのアイケア集団として、すべての目の悩みに応えたい
少子高齢化が進み、メガネ・コンタクトのニーズは確実に増えている。さらに近年では、PCやスマートフォンの普及により、目への負担が増しており、30代で老眼の症状を訴える「若年性老眼」も増加しているという。
目を酷使する環境が増え、目のトラブルを抱える人が増え続けている今、「目の悩みを抱えるすべての人を救うのが我々の使命」と、星﨑社長は話す。
「メガネのコンシェルジュ、目のホームドクターとして、付加価値の高いサービスを提供し、多くのお客様に『プロのアイケア集団』として認知いただきたいと思っています。そのためには、今まで以上にスタッフ一人ひとりの声を聞き、アイディアを採用するなど、“ボトムアップ型の社風”を徹底したい。これからも、皆がやりがいをもってイキイキ働ける環境を追求し続けたいと思っています」。
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