30代で異業種・異職種へ転職はできる?転職市場の動向と成功させるコツ
転職市場の動向を見ると、「異業種×異職種」の転職は30代以降でも増加傾向にあります。
調査データで現状を確認した上で、即戦力人材としてスキルや経験を求められる30代が「異業種×異職種」転職を目指す際のポイントをご紹介します。
目次
【転職市場分析①】転職者全体に占める「異業種×異職種」転職が増加、業界や職種を越えた「越境転職」が加速
転職市場の動向をまとめた、転職支援サービス『リクルートエージェント』の転職決定者分析(株式会社リクルート調べ 2009 年度~2020 年度)によると、「異業種×異職種」の転職は年々、増加傾向にあります。
転職時の業種・職種異同のパターン別割合は、2009年時点で「異業種×異職種」の転職は、「異業種×同職種(37.2%)」「同業種×同職種(27.9%)」に次ぐ 24.2%でしたが、2017 年度以降は「異業種×異職種」の転職パターンが最多に。2020 年度は全体の36.1%を占めており、「異業種×異職種」転職が約 10 年間で増加したことがわかります。
【転職市場分析②】30 代の転職は「異業種×同職種」の割合が最大だが、「異業種×異職種」も次いで多い(2020 年度)
では、2020年度の年代別の状況はどうなっているでしょうか。
すべての世代で割合が大きかった「異業種×異職種」は20~24歳で52.0%と突出しています。
若手では「異業種×異職種」への転職が顕著で、年代が上がるにつれて職種の経験やスキルを軸にした「異業種×同職種」や「同業種×同職種」への転職がメインとなる傾向があります。
ただし、「異業種×異職種」の転職パターンの増加は 30 代以上でも起きており、今後 20 代と同様に、より一般的な転職パターンとなる可能性があるといえるでしょう。
【転職市場分析③】全ての業種で「異業種×異職種」転職あり。特に接客系・企画系は顕著
次に、経験職種別に「異業種×異職種」転職の2020年度の状況を見てみましょう。
もっとも高い割合だったのが「接客・販売・店長・コールセンター」で65.4%。次いで、「マーケティング(49.7%)」、「オフィスワーク事務職(46.8%)」、「経営企画・事業企画・業務企画(43.4%)」もそれぞれ約半数近くが「異業種×異職種」への転職であることがわかります。
「機械エンジニア」「電気エンジニア」「建設エンジニア」「SE」「インターネット専門職」といった技術系職種では、「同業種×同職種」が3割前後と比較的高いものの、「異業種×異職種」も同じく3割近くになっています。
選択の幅が広がっているとも考えられるでしょう。
「異業種×異職種」の転職が増えている理由
業種を超えた転職の動きが30代まで広がっている背景には何があるのでしょうか。
株式会社リクルート HR統括編集長の藤井薫は、これらの調査結果から大きく二つの社会変化を指摘します。
一つが、すべての産業・企業に、ビジネスの在り方を変革する産業変容の動きが見られることです。
今は、企業の根幹からの変革の動きを受けて、自らの業種や職種を再定義する時代。それに呼応して、異業種・異職種の異能人材を積極的に中途採用しているのです。
もう一つが、働く個人の意識の変化です。人生 100 年時代といわれる中、企業寿命と個人寿命の逆転が起こっています。
新卒で入った会社を定年まで勤め上げるという価値観が変わり、個人は終身雇用より終身成長を望み出しています。
これまでの業種や職種経験にとらわれず、自らの成長機会を提供してくれる成長産業や成長企業に越境転職をする人が増えているのです。
こうした背景を受けて、即戦力人材の定義を見つめ直す企業も増えてくるでしょう。
いまや、「同業種×同職種」転職は市場全体の2割です。
業種経験・職種経験の有無に依存していた採用時の人材評価も、より細かい粒度の適応スキルやポータブルスキルの評価へと再定義をしていく可能性があるでしょう。
30代で「異業種×異職種」の転職を成功させるコツは?
では、30代でも「異業種×異職種」転職が珍しくない今、転職を成功させるにはどんなポイントがあるのでしょうか。
具体的にイメージしやすいよう、「人材業界の法人営業」から「IT(SaaS)業界のカスタマーサクセス」に転職したケースを例に、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんと考えていきます。
ポイント① 共通点を探す
企業は採用をする際、基礎学力や素養、職務遂行能力といった「ポテンシャル」、仕事に対する価値観や考え方を表す「スタンス」、業界問わず活かせる仕事の強みとして「ポータブルスキル」、専門性が高く特定の領域で発揮される「テクニカルスキル」の4つのポイントを確認しています。
特に30代以上の異業種転職では、「ポータブルスキル」や「テクニカルスキル」を転職先でどう生かせるかが重要になるでしょう。そこで、ここからはこの2点について詳しく説明していきます。
【ポータブルスキル】
ポータブルスキルでは、これまでの仕事の成果の出し方や進め方で、転職先でも生かせる共通の強みを整理することが大切です。
「人材業界の法人営業」から「IT業界のカスタマーサクセス」につながる共通点には、例えば次のようなものが挙げられます。
- 年単位での戦略的な営業(戦略性)
- 焼き畑ではなくじっくり農耕営業(不必要なものは売らない課題解決力)
- 顧客との接点頻度をコントロール(継続性)
- 数値の振り返りをする(分析力)
ほかにも、提案力、折衝力、セミナーなどでのプレゼン力、社内外の調整力もあるでしょう。
「人材業界の法人営業」と「IT業界のカスタマーサクセス」はともに、売って終わりではなく、継続的にお客様に利用していただくアプローチが重要です。
そのための戦略立案や継続的なサービスの提案、効果をきちんと検証する分析力などが共通ポイントだと考えられます。
【テクニカルスキル】
テクニカルスキルは特定の業種・職種で身につくスキルなので、「異業種×異職種」転職では関係ないと思う方もいるかもしれません。
しかし、仕事内容によっては共通するポイントも出てくるでしょう。
例えば、転職先のIT業界が人事・採用に関連した社内ツールを提供する企業であれば、人材業界で人事担当者と折衝した知見が活かせます。扱う商品サービスは異なっても、現職での営業先で得た知見が、テクニカルスキルになることは少なくありません。
営業やカスタマーサクセスの仕事内容を理解するためには、「誰(どんなお客様)に、何(どんなプロダクトやサービス)を、どのように提供(提案)するか」を整理することが重要です。
共通点を探す際には、「どのように」の内容がポイントとなります。
「異業種×異職種」転職では、扱うプロダクトやサービスは前職と異なりますが、それは入社後に覚えれば大丈夫です。
ポイント② 仕事の成果・実績を軸に「どう企業に貢献してきたか、これからどう貢献できるか」を伝える
転職活動では、仕事の成果や実績をわかりやすく伝えることが重要です。
職務経歴書では、単に売上実績を書くのではなく、活かせるポータブルスキルや共通点を意識して作成しましょう。
カスタマーサクセスでは、サービスの継続利用・解約防止がメインミッションとなります。そこで、人材業界での営業実績でも、
- 既存顧客への追加提案でアップセルを行った事例
- クレームゼロ、感謝の声をいただいたなど顧客満足度の高さを示す事例
を伝え、カスタマーサクセスとして貢献できることを伝えられるといいでしょう。実績を伝える際は、お客様の業界や企業規模、売上金額を明記することも大切です。
ポイント③ 自分がいる業界を理解してもらえるように記載する
「異業種×異職種」転職では、応募先企業が自社のことを知らないという前提でコミュニケーションを取ることが大事です。
例えば「人材業界」といっても業界内には細かな違いがあります(紹介、広告やメディア、派遣、アウトソーシング、研修、コンサル、プラットフォーム(IT)など)。
人事や採用担当者はさまざまな業界を理解している方も多いですが、中には、イメージや思い込み、自分たちが使っている商品・サービスを基点に「あの業界は、こういう仕事の仕方が多い」「メイン事業は〇〇だろう」などと考えてしまうケースもあります。
相手が分からないという前提で、担当していたお客様、売上規模など、できるだけ具体的な固有名詞、数字を示し、共通言語を増やして伝えることが重要です。
「異業種×異職種」転職の企業選びのポイント
「異業種×異職種」転職がどうしてもしたい場合には、受け入れに意欲的な企業を選ぶのも一つの手です。
次のような企業は、異業種からの転職を積極的に進めている場合も多いので、参考にしてみるのも良いでしょう。
- 人材確保が勝負を分ける「成長産業」
- 経験者がいない「新サービス・新規産業」
- サービスや事業の変化スピードが早い「ベンチャー、スタートアップ」
- ポテンシャルやカルチャーマッチを重視している「未経験者に門戸を開いている企業」
上記以外にも「異業種×異職種」転職ケースは増えています。これまでの経験・スキルや今後のキャリアが整理できたら、自分に向いている業種や企業を探してみましょう。
【参考記事】
・異業種・異業界への転職にはどんなスキルが求められる?成功のコツは?
・【年代別】20代・30代・40代で押さえておきたい転職活動のポイント
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