プロスポーツ選手のセカンドキャリアの考え方を教えてください【転職相談室】
第2の人生における職業のことを「セカンドキャリア」と言います。
例えば、スポーツ選手の引退後の仕事や、定年後にする仕事などがこれに当たります。
今回は、その中でもプロスポーツ選手からのセカンドキャリアの選択について、組織人事コンサルタントの粟野友樹氏がお答えします。
現役引退後のセカンドキャリアが不安です(Yさん/男性/20代後半/プロスポーツ選手)

大学卒業後、プロスポーツクラブの下部組織に入団し、数年経ちます。
今後の人生を考えると、選手を続けていくのは難しいと感じ、現役引退を考えています。将来、家庭を持ったときの生活の安定を考えると、一般企業に就職したいと思っています。
しかし、これまで会社員として働いた経験がないので不安です。大学時代には就職活動をしていないので、どんな業界や企業があるのかもよくわかりません。
セカンドキャリアをどのように見つければいいでしょうか。
プロスポーツ選手のセカンドキャリアの考え方
相談者
プロスポーツ選手が、転職活動をして一般企業に就職するのは難しいのでしょうか?
アドバイザー
今、日本では労働人口の減少が問題となっており、多くの企業が人材不足に悩んでいます。
それに伴い、スポーツ団体などがプロアスリートの就業人口を増やすためセカンドキャリア支援を行っているケースもあります。
年齢が上がるにつれて未経験者を歓迎している求人は少なくなる傾向にありますが、20代ということであれば豊富にあるかと思います。
ただ、企業側としては、スポーツだけに専念してきた人に対し、社会人としてのマナーやビジネスシーンに対応できるコミュニケーション力などを持っているかどうか、懸念する傾向があるのも事実です。その点では、選考に臨むにあたって対策が必要です。
まずは、どんな方向性で転職活動を進めていくかを考えましょう。次のステップで整理していきます。
①自己分析を行う
アドバイザー
まず、ビジネスで使う基本スキルを確認しておきましょう。PC、オフィスソフト、その他IT・Webツールなどは使っていますか?
相談者
普段、PCを使うことはありません。オフィスソフトも、大学時代にWordでレポート作成した程度です。
IT・Webツールにしても、スマホで動画を観たり、SNSに投稿したりするくらいで、トークアプリはよく使いますが、メールはたまにしか使いません。
アドバイザー
基本のPCスキルはなるべく習得しておいたほうがいいですね。職種の選択肢が広がりますから。
では、自分に向いていそうな仕事、興味がある仕事として、何かイメージしているものはありますか?逆に「これは自分に向いていない、やりたくない」と思うことでも構いません。
相談者
じっと座っているのは苦手なので、デスクワークは向いていないと思います。外に出て動き回る仕事のほうがいいですね。
アドバイザー
20代でキャリアチェンジを目指すなら、例えばITエンジニアの道も有望なのですが、それはYさんには合わないかもしれませんね。
外で動き回るということは、営業職には抵抗はありませんか?営業職も未経験からでも目指しやすい職種です。
相談者
人と話すことは好きだし、コミュニケーションには割と自信があるので、営業職は前向きに考えようと思います。
アドバイザー
営業では目標数字を追うことが求められ、プレッシャーやストレスを感じる人も多いですが、その点についてはいかがでしょうか。
相談者
むしろ、目標が明確に設定されるほうがいいですね。スポーツもそうですが、成果が明確に出て、評価される仕事がいいと思います。ただ、1人で目標を追うよりも、チームで目標を追うほうがいいかな……。
アドバイザー
Yさんはチームでどのような役割を担っていたのですか?そうした特徴や強みは、自分に合う職種や企業を選ぶ際のヒントになり得るのですが。
相談者
全体を俯瞰して、試合運びを組み立てるポジションでした。戦略を考えるのは得意だし、好きですね。
アドバイザー
全体から細部に落とし込む力や論理的思考力が鍛えられているのですね。そのあたりは、選考に臨む際にアピールポイントとして活用できそうです。
②転職市場や採用事情を把握する
アドバイザー
転職活動においては、自分が得意とすること、自分がやりたいことだけを探すのではなく、「人材市場のニーズ」「企業のニーズ」を知っておくことも大切です。転職市場のトレンドを調べてみることをおすすめします。
相談者
どのように調べればいいのでしょうか。
アドバイザー
転職サイトに掲載されている求人情報を眺めてみるだけでも、人材ニーズの傾向はつかめます。
幅広く情報収集しながらも、先ほどの自己分析から挙がったキーワード「チームで営業」「戦略の組み立て」「論理的思考力」などを意識して見てみてください。膨大な求人情報の中から、「これは自分に合っているかも」と、ピックアップがしやすいと思います。
また、学生時代の友人や知人など、一般企業に就職している人もいますよね。友人・知人から話を聞いてみてもいいでしょう。
最近では、社員が自社の人事部門へ友人・知人を紹介する「リファラル採用」も増えていますので、もしかするとチャンスに出会える可能性もあります。
③自分と近い立場の人のセカンドキャリアも参考にする
アドバイザー
Yさんと同じような状況で選手を引退した方々はどんなセカンドキャリアを歩んでいるか、ご存じですか?
相談者
契約社員としてチームの裏方の仕事をしたり、アカデミーのコーチを務めていたりする人は知っていますが……異業界へ移った方のことはほとんど聞かないですね。
アドバイザー
スポーツ業界を離れてのセカンドキャリアを考えるアスリートの皆さんには、シーズンオフ期に資格を取得したり、大学などで学び直したり、スポンサー企業でインターンのような形で働いたりする方も多いようです。
そうして得た知識や資格、あるいは学びを通じて築いた人脈などを活かして、さまざまな業界へ飛び込んでいます。今のネットワークを活かしてそのような方々を探し、参考にしたり、話を聞いたりしてもいいかもしれません。
実際にプロアスリートの方々が選んだセカンドキャリアの一例を挙げてみましょう。
- フットワークの軽さや目標達成へのコミット力を武器に、営業職として就職(IT・ネット企業、テレマーケティング企業、人材サービス企業、大手メーカーなど)
- 所属クラブのスポンサー企業(不動産、スポーツクラブ、飲食など)とのつながりを活用し、営業・広報・人事などとして就職
- スポーツで得た体力を活かし、中学校・高校に体育教員として赴任
- 整体師・鍼灸師・フィットネストレーナーなど、スポーツに関わる専門技術を身に付けて就職、あるいは起業
相談者
なるほど。まずはスポンサー企業で働く道を探るのもアリですね。
アドバイザー
例えば、スポンサー企業がイベントなどを企画・開催する際などに、スタッフとして主体的に関わり、つながりを強めてはいかがでしょうか。
インターンシップ制度などを設けている企業であれば、参加してみてもいいでしょう。
まとめ
プロスポーツ選手がセカンドキャリアを考えるにあたっては、「自己分析」「転職市場・採用事情の理解」「同じような状況の人たちの事例を知る」のステップを踏んでみるのが有効です。
全く異なる世界に飛び込むなら、これまでのフィールドの中で得た経験も活かしつつ、「ゼロから学ぶ」という姿勢でキャリアを描いていきましょう。
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