将来が不安なため、安定した企業へ転職したい【転職相談室】
将来への不安を取り除くために、安定している企業に転職したいという希望をよく耳にします。そもそも安定している企業とはどのような企業を指すのでしょうか。
組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に企業を探す上で大切なことについてお答えいただきました。
目次
安定した企業の見極め方を教えてください(Aさん/32歳/女性/営業職)

近い将来結婚をするため、子育てをしながらでも安定して働ける企業に転職したいと思っています。
今の会社では有給休暇が取得しにくく、育児との両立も難しいことから、出産を機に離職する社員も少なくありません。
また、現在の会社では個人向けの営業をしていますが、残業時間が長く少々ハードです。一人で働いていく分には問題ないとは思いますが、子育てのことを考えると今の会社で働き続けるのは難しいと思っています。
このままでは将来が不安なため、長く勤められるような安定した企業を探したいと思っているのですが、どのように見極めればいいのでしょうか。
自分が求めている「安定」とは何かを整理する
アドバイザー
安定した企業と言う際、一般的には「経営面で安定している」「労働環境面で安定している」の2つの意味合いが含まれます。それぞれ参考となる指標があるのでいくつか例を挙げたいと思います。
<経営面で安定している企業を探す際の指標>
- 市場占有率が高い
- 自己資本比率が高い
- 業界の将来性が高い など
<労働環境面で安定している企業を探す際の指標>
- 労働分配率(利益を人件費に当てる割合)が適正か
- 優良(ホワイト)企業ランキングを参考にする など
このようにさまざまな指標が挙げられますが、「こういった企業が安定」と定義づけることはできません。
人それぞれどのような安定を求めているかは異なるため、まずは自分が求める「安定」が何を指しているのかを整理してみましょう。
Aさんの場合は、下記のような安定を求めているということでしょうか。
- 育児のための休暇制度や短時間勤務制度がある
- 有給消化率が高い
- 残業が少ない
相談者
そうですね。
企業選びの際に参考となる指標
相談者
人それぞれで安定の意味が異なるということはわかりました。では、仕事と育児の両立が可能で、有給消化率も高い、さらに残業時間が少ないような優良企業となると、やはり大手企業に限定されてしまうのでしょうか?
アドバイザー
必ずしも優良企業=大手企業とは限りません。優良企業とは、事業の安定性があり、社会からの信頼度も高い企業のこと。ですので、中小企業の中にも優良企業はあります。
相談者
では、優良企業かどうかを見分けるには、何をチェックしたらいいですか?
アドバイザー
優良企業の指標はいろいろあります。例えば、下記のような指標が参考になるかと思います。
<優良企業を探す際の指標>
- 業界内のシェアが大きい
- 福利厚生が手厚い
- ホワイトマーク認定されている など
相談者
ホワイトマークとはどういったものでしょうか?
アドバイザー
ホワイトマークとは、安全衛生優良企業として厚生労働省に認定された企業を公表する制度です。ここで言う安全衛生優良企業は、労働安全衛生法に沿って労働者の安全や健康を確保する対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善している企業を指します。
ホワイトマークの認定を受けるためには、過去3年間労働安全衛生関連の重大な法違反がない、労働者の健康保持増進やメンタルヘルス、過重労働防止への対策など幅広い取り組みを実施しているなど、約80もの認定基準を満たす必要があります。
つまり、ホワイトマークの認定取得企業は、働きやすい職場づくりが企業全体で実施されているということです。2021年1月時点で30社程度と少数ではありますが、働き方などは参考になるかと思いますので、企業を選ぶ際の一つの指標にしてみるのも良いかと思います。
※参考: 安全衛生優良企業マーク推進機構 優ジロウ ホワイト・ブラック企業検索より(https://shem.or.jp/yujiro_serch?marks%5B%5D=anzen#kekka)
相談者
わかりました。
大切なのは自分に合っている企業・仕事を見つけること
アドバイザー
ここまで優良企業と大手企業の違いについてお話してきましたが、本質的な安定を得るためには「自分に合った企業」へ転職した方が良い、ということが言えるかと思います。
たとえ、仕事と育児の両立を支援する制度が整っていて、有給取得率が高いような企業に転職しても、自分に合っていない企業だと短期離職につながる場合があり、安定して長く勤めるということが難しくなってしまうためです。
相談者
確かにそうですね…
アドバイザー
それに加え、どんな企業でも経営面の安定が一生続くという保証はありません。
東京商工リサーチのデータによると、2020年に倒産した企業の平均寿命は23.3年で、全倒産のうち業歴30年以上の老舗企業の構成比は32.5%、業歴10年未満の新興企業の構成比は27.4%です。
一見安定しているように見えても、急に訪れた時代の変化に対応できず、倒産に追い込まれる企業は少なくないのです。
また、企業は存続しても、自分が所属する事業部だけがM&Aで買収されて、そのまま別会社に転籍となるケースもあります。企業としては安定していても、本人がその企業で長く働いていけるかどうかは別問題なのです。
企業に安定を求めるのではなく、自分に合っている企業・仕事を選び、経験やスキル、人脈を磨いて、自身でキャリアを築いていく方が、中長期で考えると本質的な安定を得られるのではないでしょうか。
相談者
優良企業や大手企業に行けば安定が得られるということではないのですね。自分に合っている企業や仕事はどのように見つけたら良いのでしょうか?
アドバイザー
自分に合っている仕事は「適職」だと言えます。
適職とは「モチベーションを高くもって主体的に取り組める仕事であり、かつ成果が上がるもの」を指し、ある程度のやりがいを感じること、これまで無理なく主体的に取り組めて没頭できたこと、客観的に評価が高かったことなどから見つけていきます。
こちらの記事にも、適職を見つけるための方法について詳しく解説をしています。
アドバイザー
適職かどうかという考えで仕事を探していけば、例えばAさんの場合であれば、法人向けの営業職の方が自分に合っているかもしれない、ということに気づくかもしれません。
職種だけでなく、企業についても自分に合っているかどうかを検討する必要があります。自身の性格と社風が合っているかどうか、働きやすい雰囲気かどうかといった点もチェックしてみるといいでしょう。
まとめ
アドバイザー
「安定」といっても人それぞれで求める安定は違います。まずは自分が思う安定とは何なのかを整理してみましょう。
優良企業や大手企業に行けば安定が得られると誤解しないようにしてください。そうではなく「自分に合った企業・仕事」を見つけることが大切だということを押さえておきましょう。
企業を探す際は、先ほど紹介した指標を参考にするのも良いと思いますし、もちろん、自分に合っていると判断したのであれば、優良企業・大手企業と言われるような企業に転職するのもいいでしょう。
自分に合った企業へ転職し、そこで経験やスキルを磨いて人脈を築き、キャリアを形成することが本質的な安定につながります。
相談者
わかりました。制度面で整っているか、残業が少ないか、そういったところばかりを見ていたように思います。いただいた指標も参考にしながら、自分に合った企業や仕事を探していきたいと思います。
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