転職か独立か迷った場合の判断方法とは?【転職相談室】
2021年5月14日公開
最終更新日:2022年6月9日
今の会社に不満があり、転職や独立を考えているという方もいるのではないでしょうか。
この記事では「転職すべきか独立すべきか悩んでいる。どのように判断すればいいのか知りたい」というお悩みに、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏がアドバイスします。
アドバイザー 粟野友樹
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
転職か独立か、どちらにすべきか迷っています(Dさん/30歳/男性/営業職)
■相談内容
今の会社の評価制度に不満を抱いており、辞めたいと思っています。転職するほか、独立起業の道も考えているのですが、今の自分にとってどちらを選択したほうがいいか迷っています。
転職か独立か迷った場合の判断方法とは
現職に不満があり、転職もしくは独立を考えているのですね。転職か独立か迷った場合は、下記の3つの流れに沿って、自分が進むべき道を検討するのがよいかと思います。
- 転職・独立を考えた理由を整理する
- 転職・独立・現職にとどまる場合のメリット・デメリットを考える
- キャリアの方向性を定める
1つずつ確認をしていきたいと思います。
①転職・独立を考えた理由を整理する
まずは、転職・独立を思い立った理由をお聞かせください。
今の会社では営業として働いていて、トップクラスの業績を上げています。けれど、あまり給与が上がらず、成果を上げられていないメンバーと給与額がほとんど変わりません。他社で営業をしている同年代には、年収1000万円以上に達している人も多いと聞くので、自分も営業スキルを活かせばその水準を目指せるんじゃないかと思っています。
転職する場合、どんな方向性でキャリアを考えていますか?
これまで身に付けた営業スキルを活かしながら、さらに営業力を磨いていきたいです。今回は転職したとしても、いずれは独立したいと思っています。組織のルールに縛られるのにも抵抗があり、もっと自由に働きたいので。将来の独立に備え、営業力を一段高めたい。できれば、経営の知識も身に付けられるといいな、と思います。
では、今すぐ独立する場合は、どんなプランを描いているのですか?
それはまだ……漠然としていますね。最近は営業系のフリーランスも増えているようなので、まずは1人で、どこかの会社の営業活動を業務委託の形で請け負うのもアリかと思います。それで軌道に乗れば、法人化して社員を雇って拡大するか、アイデアを持っている企画系の人と組んで会社を作るか……まだ明確な計画はありません。
②転職・独立・現職にとどまる場合のメリット・デメリット
では、転職と独立、それぞれのメリット・デメリットを考えてみましょう。
転職する場合、
将来の起業につながるような経験・スキルを得られる企業に転職できれば、起業前のワンステップとして効果的だと思います。ただし、入社する企業を見誤ると、時間の浪費となってしまうかもしれません。
一方、独立すれば、自分が本当にやりたいことを実現できる、裁量権を持てる、自由度が高まる、うまくいけば高収入を手に入れられる……といったメリットがあります。
ただし、当然ながら収入が不安定になるリスクがあります。事業内容によりますが、最初に資金投入した場合は、うまくいかなかったときに負債を負うことにもなり得ます。また、起業して失敗し、再就職をしようとした場合、状況によっては選考でマイナスの印象を抱かれる可能性もあるでしょう。
確かに、独立した場合、期待したほど稼げない可能性もあるわけですよね……。
一度見つめ直していただきたいのは、Dさんが自信を持っている「営業スキル」です。今の会社では営業成績を上げていらっしゃるとのことですが、外に出た場合に通用するかどうか、ということです。
今の会社のもともとのブランド力や商品力が強かったり、マーケティングやアシスタントのサポートが手厚かったりと、「売れている要素」が、ご自身のスキル以外にもあるかどうかを考えてみてください。
恵まれた環境にいるのであれば、現職にとどまる選択肢もあると思います。
顧客との信頼関係構築力や企画提案力には自信がありますが……確かに、顧客開拓時のアタック先リストはマーケティング部門が用意してくれていますね。基本の営業戦略もトップが決めたものですし……。
今の会社で営業戦略策定やマーケティング、あるいはマネジメントなど、新たな経験を積める可能性があるなら、とどまるメリットはあるのではないでしょうか。逆に、新しい経験を積むチャンスが得られにくいのであれば、スキルが停滞してしまうかもしれませんね。
今の会社は上のポストが詰まっているので、戦略部分やマネジメントに関わるポジションに就けるのはまだまだ先だと思います。営業成績を上げているので、他部署への異動願いを出しても、認められないでしょう。
キャリアを進展させられない環境で、しかも評価制度や給与体系に納得できていないので、今の会社で働き続けようとは思いません。
③キャリアの方向性を定める
お話を聞くと、やはり転職か独立か、ですね。お聞きしたところ、独立に関しては明確なビジョンや具体的な計画がまだないようですので、この状況で独立に踏み切るのはおすすめできません。
そうですね。お話ししていて、独立して稼ぐにはまだまだ経験・スキルが十分ではないな、と思いました。まずは、スキルを磨くための転職を目指したいと思います。
「将来は独立」を想定して転職する場合のアドバイス
独立起業を目指すことを前提にまずは転職をするということになりましたので、ここからは企業選びや面接でのポイント、独立のために準備しておいた方がよいことについて解説をしたいと思います。
転職の軸に合う企業を選ぶ
まず、今回の転職にあたり、どんな企業を選べばいいでしょうか。
「営業」を転職の軸に定めるのであれば、
より難易度が高い営業にチャレンジしてはいかがでしょうか。例えば、スタートアップ企業で、まだマーケットにない商品やサービスを普及させていく、など。営業だけではなく営業企画の部分から携わる機会があるかもしれません。
また、いずれ起業を目指すなら、営業だけにとどまらない幅広い業務経験ができて、経営の知識も学べる環境がある企業を選ぶといいでしょう。小規模のベンチャー企業であれば、1人が複数業務を兼務するケースが多く、経営者の近くで働けるので、知識・経験の幅を広げやすい。マーケティングやカスタマーサクセス、有形商品を扱うならサプライチェーンまで携わるなど、部門の枠を越えて関われる企業を探してみてはいかがでしょうか。
あるいは「社内ベンチャー制度」などがある企業にも注目してはいかがでしょうか。そうした企業は、社内で新規事業を立ち上げ、分社化して、起案した社員を社長に抜擢していきます。親会社や資金等のリソースの提供を受けられるので、資金含めてすべてゼロから事業を始めるリスクが少なく、自分がやりたい事業を実現するチャンスがあるでしょう。
面接を受ける際のポイント
志望企業が決まって応募した場合、面接で「将来は独立起業したい」と話してもいいのでしょうか?正直に話したら、どう思われるでしょうか。
企業によりますね。やはり「長く働いてほしい」と考えている企業は多いので、そうした企業では定着性に懸念を持たれるでしょう。
独立心が強いと見られると、「組織になじめないのでは」「チームワークが苦手なのでは」……といった印象を抱かれる可能性もあります。逆に、「突破力がありそう」「指示を受けなくても自走できそう」「成長意欲が高そう」と期待されるかもしれません。
独立を応援していることを明言している会社でないかぎり、面接の場で独立の意向には触れないほうがよさそうです。「経験の幅を広げたい」「経営の知識を身に付けたい」など、成長意欲を語るにとどめましょう。
独立に向けて人脈作りや資金計画についても考えておく
今回、転職の道を選ぶにしても、独立起業に向けての情報収集やプランニングは進めていくといいでしょう。
特に、
人脈作りは欠かせません。税理士、行政書士、弁護士、あるいはエンジェル投資家、場合によっては共同経営者など、多くの人とつながることで独立起業への道筋が明確になっていきます。もちろん、
資金計画も考えておく必要があります。
独立起業という目標を持つことは、仕事に取り組む原動力となり、成長を促進してくれると思います。早く目標を達成できるよう、応援しています。
記事作成日:2021年5月14日 WRITER:青木典子 ILLUST:安西哲平 EDIT:リクナビNEXT編集部