次を最後の転職にしたい。後悔しない会社選びをするには?【転職相談室】
2021年3月5日公開
最終更新日:2022年6月9日
これまでに3回ほど転職を繰り返してきたTさん。40代になったことで「次を最後の転職にしたい」と考えるように。
「後悔しないためにはどんな会社に入ればいいのだろうか」という相談に、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんがお答えします
アドバイザー 粟野友樹
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
次を最後の転職にしたい。どんなことに気をつければ、後悔しない会社選びができますか?(Tさん/Webエンジニア/40歳/男性)
■相談内容
これまでに新しい技術やスキルを身につけられそうな場所を求めて、3回ほど転職を繰り返してきました。
今は、ITサービスのベンチャー企業でプロジェクトリーダーとして働いています。今の職場はベンチャーなだけあって体力勝負なことも多く、定年まで働くのは難しそうだなと思い転職を考えています。
年齢的にも40代になり、次を最後の転職にしたいとと思っていますが、どうすれば後悔しない会社選びをすることができるのでしょうか?
転職をして叶えたいことは何なのか「軸」を明確に
次を最後の転職にするためには、どんな会社を選べばいいのだろうか…とのことですね。まず、これまでの転職ではどんなことを大切にしてきましたか?
これまでは、面白そうなサービスや事業をしている会社に率先して応募してきました。会社の規模や年収などは二の次で、とにかく自分にとって新しい技術に触れられることを優先してきたように思います。
なるほど、年収や労働条件といったことはこれまで気にしていなかったと言うことですね。今はどうでしょうか?
これまでは、年収はあまり気にしていませんでしたが、「次を最後にするぞ!」と思うと、そこもこだわった方がいいのかな…と迷っています。
なるほど。これまでは明確にあった、「新しい技術を身につけて、面白いサービスを作りたい」という「軸」が揺らいでいるようですね。
そうですね。もちろん面白いサービスを作っていくことに喜びは感じているのですが、そうなるとどうしてもベンチャー企業が多くて…。今の会社もベンチャー企業なのですが、体力勝負の側面も多く、40代になって定年まで働き続ける難しさを感じています。
このまま、新しいことへのチャレンジや、面白いサービスに携わることだけを追い求めていいのかな…と。子供も2人目が生まれて手がかかるので、恥ずかしながら正直、少し落ち着きたいな…という気持ちもあります。
年齢だけではなく、家族の状況の変化などにより、そのように考えられる方は少なくないですよ。全く恥ずかしいことではないので、安心してくださいね。
ありがとうございます。やっぱり最後だと思うと、どうしても「安定したい」という気持ちも出てきてしまって。
気持ちはよくわかりますよ。一方で、あまり「最後の転職」として意気込みすぎないほうがいいとも思っています。
「最後の転職」だと思っていても、そうならないことも多い
社会環境、経済環境、Tさんご自身のキャリア観や家庭環境もどんどん変わっていくからです。今から65歳の定年まで働くとすると、あと25年ありますね。25年後を正確に見通しておくことは不可能だと思うからです。
例えばTさんの場合、25年前に戻ったと仮定して今のIT業界の状況を予測できたと思いますか?
確かに、無理ですね。特にITは数年あれば状況がすぐに変わります。AIもドローンも、25年前には全く考えられなかった技術です。
そうですよね。誰も10年後、20年後を正確に予測することはできません。今、「最後だ」と思って転職をしたとしても、長い時間の中で状況が変化したら、また転職をしたくなるかもしれません。
それはそうかもしれませんね…。だとしたら、無理に最後だからといって、「安定」や「年収」を1番に求めなくてもいいのでしょうか?
特定の会社に25年続くような安定を求めるよりは、自分自身に何があっても安定して働き続けられる力を求める方がいいかもしれませんね。
例えば会社や自分の状況に変化があった時など、自分の希望に応じて働く場所を選んで行けるような、経験や実績を身につけるという考え方です。
なるほど。最後だから思って、これまでとは違う条件で無理やり企業を探すよりも、私にはあっているかもしれません。これまで軸にしてきた「新しい技術を得たい」という部分を、「経験や実績を身につける」という方向に少し見方をかえればいいんですね。
そうですね。もちろん「最後にしよう!」という心意気が悪いわけではありません。ただ、少し視点を変えてみることで、見えてくることもあるということです。実際に、40代以降の転職者には、企業が求めることも変わってきます。


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40代以降の転職で求められていること
30代後半から40代になると、企業から期待される要件も高くなります。具体的には、マネジメント経験や、組織づくり、若手社員と経営層との潤滑油的な役割などを求められるようになります。
そのほかには、サービスを安定して運用するだけではなく、ビジネスを新しく創り出したり、事業として成り立たせるために収益化をさせたりする力などが求められるようになるでしょう。
なるほど、事業化や収益化ですか。既存サービスの安定運用や新機能追加などのプロジェクトリーダーはしていますが、確かにそういった経験は今までしてきていませんでした。
既存サービスの改善プロジェクトであれば、サービスを使いやすくするだけではなく、その上でどれだけ収益に貢献できたのか、その視点を持って仕事を進めていたのかということが求められてきます。
ほかにも、ユーザーを増やしたり、類似プロダクトを横展開することで収益化できる事業を増やしたりといったことなども評価対象につながりますね。
組織マネジメントの観点では、人材育成、組織改革などが求められます。組織全体の技術レベル向上や、技術関係情報を社外へ発信することによって自社ブランド力を高めたり、事業部の戦略を作成して組織をリードしたりといったことも求められますね。
うーん。そう言わると、実際に今はそういった仕事はしていないので、転職を成功させること自体にハードルが高いように感じてしまいますね。
応募する段階で、全てができている必要はありませんよ。ただ、企業が求めていることを事前に知っておくことで、そういった視野を持って日々の仕事に取り組んでいるかどうかをアピールすることができると思います。
「今はこういった視点で取り組んでいて、これからさらにこんな経験をして組織貢献力や事業を収益化する力をより身に付けたい」ということを面接で伝えられれば良いと思います。
なるほど。そう言われると、「最後の転職」と意気込んでブレてしまっていた軸も、明確になりそうです。正直なところ、最後だからという理由で、年収や安定を求めるよりも、ワクワクしますね。
とはいえ、体力勝負の環境を避けたいことには変わりありませんが。
そうですね。そういった観点は、定着率や福利厚生、有給取得日数などで確認しつつ、これまで通り仕事に対して魅力を感じるかどうか、そこでどんな経験やスキルを身につけられるかといったことを大切にしてみてください。
ありがとうございます。ほかに気をつけておいたほうがいいことはありますか?
40代以降の転職活動は、求められることも多いので、これまでの20代30代の時の転職活動と比べて、進みが遅く感じることもあるかもしれません。
ですが、組織や人、経営者とマッチをした時には、それまでのスピードが嘘のようにトントン拍子に進んでいくことも特徴の一つです。最初は上手くいかないと感じても
粘り強く取り組んでみてくださいね。
よりマッチ度を高めるためには、自分の考え方や、キャリアへの展望を積極的に企業に伝えていってください。これまでに得た経験スキルや実績も、端的に表現できるように準備をしておくとより良いですよ。
ありがとうございます。次を最後の転職にするんだ!と意気込みすぎて、見えていなかった部分や迷っていた部分がスッキリしました。いただいたアドバイスをもとに、これから転職活動に取り組んでいこうと思います。
記事公開日:2021年3月5日 ILLUST:安西哲平 EDIT:リクナビNEXT編集部