転職した方がいいと思いつつ勇気が出ません。どうすれば良いですか？【転職相談室】

「今の仕事への不満を転職によって解決したい」「今の会社がどうしても嫌というわけではないけれど、もっといい会社があれば転職したい」――そう考えていても、一歩踏み出す勇気が出ないという方は多いようです。

そんなお悩みに対し、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏がアドバイスします。

アドバイザー 粟野友樹

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。

プロフィール詳細

転職した方がいいと思いつつ勇気が出ません。どうすれば良いですか？（Yさん/女性/27歳）

相談者

■相談内容
新卒入社した中小の素材メーカーで、食品や消費財のパッケージの営業をしています。最近、仕事がマンネリ化していて、年収も上がらず、会社に行くのが憂うつになることが増えてきたので、転職を考えています。とはいえ、仕事にはやりがいを感じる部分もありますし、上司や同僚との関係も悪くないので、なかなか決断ができません。勇気を出して一歩を踏み出すためにはどうすればいいでしょうか？

まずは現状を整理しましょう

アドバイザー

転職したいのに勇気が出ない、迷いがある……という方は、悩みがまだ漠然としている状態なのだと思います。
まずは現状や自分の気持ちを整理し、具体化していきましょう。それが明確になることで、行動を起こす勇気がわいてくるかもしれません。
さて、今の仕事について、不満を感じているのはどの部分なのでしょうか？

既存顧客を何社か担当していて、受注を受けて製造部門と調整するのが主な仕事です。毎日同じ仕事を繰り返していて、発展性がありません。新規のお客様との商談もありますが、定番品の案内が中心です。すっかり業務に慣れて、自分の成長も止まっている気がします。
土日をはさむ出張も多いので、友人と会うこともままならず、ストレス解消ができていない状態です。

相談者

アドバイザー

では、今の仕事でやりがいや面白みを感じる部分はありますか？

お客様が新商品を発売する際などに、パッケージのアイディアを考えて提案をするのは面白いですね。そうした機会はまれなんですが。
また、お客様とコミュニケーションをとるのは好きです。信頼関係を築けたお客様とは、会話していても楽しいですから。なので、営業の仕事はこれからも続けていきたいです。

相談者

転職に迷いがある方は転職の軸を見直しましょう

アドバイザー

転職に踏み切るとしたら、どんな会社に移りたいと思っていますか？

明確な希望というのはありません。長く働きたいので、そのためには大手企業のほうが安心ですし、年収も今よりは上げたい――考えているのはそれくらいですね。

相談者

アドバイザー

それでは、転職活動で「軸」とするものを見直す必要がありますね。
「軸」を定めないまま、企業の知名度や待遇だけで選んでしまうと、入社後に不満を抱き、転職を繰り返すことになるケースはとても多いんです。

転職の軸とは？

転職の「軸」って何でしょうか？

相談者

アドバイザー

転職先を選ぶ際の判断基準となる、「大切にしたいこと」「こだわりたいこと」です。妥協したくない条件や、転職によってどうしても実現したいことは何なのかを見極めましょう。

転職の軸の見直し方

大切にしたいこと、こだわり……ですか。あまり意識していませんでした。

相談者

アドバイザー

では、原点に立ち返ってみましょうか。そもそも今の素材メーカーに就職を決めたのは、どんなところに魅力を感じたからですか？

製品のパッケージを作れる、というところですね。食品や日用品の買い物をしているとき、素敵なパッケージを見るとワクワクするじゃないですか。そんなふうに人を楽しませられる仕事だと思ったんです。
入社してみると、新しいアイディアを形にできる機会はそうそうないのですが……。

相談者

アドバイザー

人を楽しませるのが好きなんですね。それはいつの頃からなんですか？

どうでしょうか……。子どもの頃から、映画は好きでしたね。両親が共働きで、1人でお留守番する間、いつも映画を観ていましたから。映画を観ていると寂しさもすっかり忘れていたので、そんなふうに人を楽しませたり、心を豊かにしたりするものを作るのっていいな、と思うようになったかな。
だから、学校の文化祭での演劇発表などにも率先して取り組んだし、楽しかったですね。

相談者

アドバイザー

今後お仕事をされていくにも、「人を楽しませたい」という思いはありますか？

そうですね。そういう仕事に携われるのなら、今よりも前向きな気持ちで働けるような気がします。

相談者

アドバイザー

では、それを軸として、どんな選択肢があるかを探してみましょうか。エンターテインメント、レジャー、ゲーム、イベント、Webサービスなど、いろいろな業種が当てはまるかと思います。
さまざまな求人を見るうちに、別の軸を発見することもあるかもしれませんが、まずは行動を起こしてみることが先決です。

希望条件が複数ある場合は優先順位を付ける

アドバイザー

現時点での希望条件を整理してみましょうか。「人を楽しませる」要素がある仕事。そして、先ほどのお話からすると、「営業職」「ルーティンワークではない」「成長感を持てる」「出張がない」「年収アップ」――そういったところでしょうか。

そうですね。

相談者

アドバイザー

希望条件がたくさんある場合、優先順位を付けておくと、迷ったときに判断がしやすくなります。この中で、譲れるもの・譲れないものはありますか？

「人を楽しませる」「成長できる」ことを優先したいと思います。本当にやりがいを感じられる仕事であれば、年収アップにもそれほどこだわりません。出張も平日のみ月に1～2日程度であれば許容できます。

仕事において自分が大切にしたいことにしっかり向き合ったのは初めてかもしれません。気持ちが整理できたので、すぐにでも行動に移したいと思います。

相談者

転職の軸が見つからなかった場合

このようにYさんは、転職に向かう勇気を奮い立たせて活動を開始されました。

しかし、考えてみても「転職の軸」が見つからない……という人も多いと思います。そんなときは、あえて軸を定めないまま転職活動を始めて、転職活動の途中で軸を整理するというのも一つの手です。

さまざまな求人に出会う中で、自分の「軸」が見つかることもあります。

転職に迷いがある方の注意点

転職を迷っている人は、次のような状況に陥りがちです。
転職活動を始めても成功率が低くなってしまうので、くれぐれも注意しましょう。

周囲に流されやすい

「友人がこんな転職をしたから」「親からこう言われたから」「3年で転職する人が多いという記事を読んだから」
――など、周囲の声に惑わされてしまうことがあります。
自分はどうしたいのか、という意思を大切にしてください。

「不満解消」が目的になる

現状の不満ばかりにとらわれやすくなるため、それを解消することを軸に転職先を選んでしまうこともあります。「何がやりたいのか」「何を目指したいのか」などにも目を向けましょう。

軸が決まっているのに決断できない

転職の目的や将来ビジョンをしっかり持っているにも関わらず、今の会社を断ち切る決意ができないこともあります。
長期的な観点で、今何を選択すべきかを見極め、気持ちを切り替えることが大切です。

まとめ

転職にはパワーがかかるもの。踏み出すには勇気がいります。そして転職活動を始めてからも、思い通りにならないことも多く、さまざまな壁にぶつかるでしょう。それを乗り越えていくためにも、自分の「軸」を持っておいてください。