転職先で人間関係がうまくいくのかが怖い。不安をなくす方法はありますか?【転職相談室】
転職先で良好な人間関係を築けるか不安で、職場に行くのが怖いというご相談に、キャリア形成のプロフェッショナルとして、人事・採用コンサルティング・教育研修を手掛ける株式会社人材研究所・代表取締役社長である曽和利光氏がお答えします。
アドバイザー
株式会社人材研究所・代表取締役社長
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略』(講談社)など著書多数。
目次
転職先で良好な人間関係を築けるか不安で、職場に行くのが怖いです(Kさん/IT・エンジニア/26歳/女性)

ITエンジニアです。
■悩み
前職では、上司や同僚との関係がうまくいかず転職を考えるようになりました。実際に転職活動でも面接で出会った方が自分と相性が良いか、慎重に見極めながら進めてきました。
結果、納得のいく転職先を選ぶことができたものの、また人間関係でうまくいかないのではないかと不安を感じています。
■相談
1ヶ月後に入社をする予定なのですが、今からどんな心持ちでいればいいでしょうか?また、事前に準備できることなどありますか…?
良好な人間関係を築くには正しい相互理解がポイント

毎回担当業務の納期には間に合うようにスケジュールを組んでいて、遅れたことがなく、任せてほしいと思うのですが、毎日進捗を報告しないと呼び出され時間を取られます。その雰囲気がやや威圧的で、自分には合わないと感じていました。
同僚については、やたらプライベートな話を振ってきたりと、仕事に関係のないところまで踏み込むコミュニケーションや、憶測でしかない陰口が多いことを、苦痛に感じていました。
仕事は一人でできるものではないので、コミュニケーションは大切だと思いますが、自分にとっては余計だと思うことが多く、辟易としていました。


多くの人間関係また組織においての問題のほとんどは、「誤解」から生まれると言っても過言ではありません。
大事なのは自分を正しく伝えて、相手を十分に理解することです。
相互理解が十分に正しくできれば、「~~だと思ったのに実際は違った」という誤解は生まれず、人間関係で課題を抱えていくことにはならないはずです。
正しい相互理解を深めるためにできること

そのために入社前後でやるべきことは大きく二つあります。
STEP1:事前に自己紹介を磨くこと

多くの人は「前職は~~会社で~~をしていました。
新しい環境でわからないことも多いと思いますが、精いっぱい頑張りますのでよろしくご指導ください」というように、その人自身の情報がほとんど入っていない当たり障りのない挨拶をして、せっかくの自分に興味を持ってもらえるチャンスを無駄にしてしまいます。
結果、その人のパーソナリティがわからないまま、印象も残らず、いざ仕事でフォローしてほしいときにも、どんな価値観を持っているのかわからないので、周囲から距離を置かれてしまう場合も出てきます。
一方、生い立ちなり、今までのキャリアなり、入社動機なり、自分の人となりがわかる情報を整理して自己紹介で伝えると、新しい職場の人は、安心感を持って接することができます。
場合によっては共通の話題も見つかり、仕事でも「こういうヤツだから」と理解されながら心を開いてサポートしてもらいやすくなります。
さらに自己紹介を効果的にするためには、誰しも意外な部分というものがあるはずなので、それを自分で認識して、「~~と見えがちだけれども、本当は~~です」というひとことを準備しておくと、印象に残りやすくなります。
例えば「インドア派に見られますが、子供の頃ボーイスカウトをやっていたので、火起こしや、特殊な紐結びができます。
冬でもキャンプに行きますので、興味ある方はご一緒しましょう」などど、見た目からはわからない意外な一面をあえて紹介します。
すると、「ちょっと控えめな印象だけど、意外と熱い人で、チームワークが好きなのかもしれない」と、仕事だけでは伝わらないパーソナリティまで伝えることもできるのです。
前の職場でも、プライベートなことはほとんど話していませんし。


後輩にエンジニアとしてのスキルが同じ2人がいて、自分のことをよく話す人と、全く話さない人だったら、どちらの人と仕事をしたいですか?


ただ、リーダーだった場合、後輩に何かあった場合のフォローをしなくてはいけないので、パフォーマンスが悪ければ何が原因なのか、パフォーマンスがよければ、その理由を理解しておく必要があるかと思います。
その後輩が何を考えているのか、わかっていた方が安心できます。


自己紹介が重要であるのはその部分です。
まず自分がどんな性格・志向・能力を持っているのかを開示することで、相手に安心感を持ってもらえます。
「安心できる相手だ」と思ってもらうことが、よい人間関係を作るための第一歩なのです。
自分から先に報告したり、忙しいときはその事情を話したりすればよかったのですね。


そして、誤解を生まない人間関係づくりのもう一つのカギがあります。
それは、「相手をよく理解する」ことです。
具体的には次の二つの方法を試してみてください。
STEP2:上司の情報を集めること
①上司のキャリアや人柄を事前に人事担当者へ聞く
①については、可能であれば人事担当者や人事権のある人へ、上司になる人のキャリアや人柄を聞いてみるという方法です。まずは上司を客観的に知っている人から情報を受けると自分の思い込みで相手を判断することを防げます。ただ、事前に情報開示が難しい場合は、入社後に確認してみてもいいでしょう。
それも難しい場合には、上司とコミュニケーション取るのが上手な先輩を見つけて、どんな上司なのか聞いてみるといいでしょう。その際に「価値観」「キャリア」を中心に確認しつつ、「プライベート」についてもわかると、より相手を理解できます。
上司の価値観(大切にしていること)、判断基準にしていることなどがわかると、報告の仕方、質問のタイミングなど、何に気を付けて行動すればいいのか見えてきます。
また、上司のキャリアにおいて、どんな経験をしてきた人なのか知ることで、エンジニアに通じやすい専門用語を交えた方がいいのか、営業視点で話した方がいいのかコミュニケーションの取り方に工夫の余地が出てきます。
上司のプライベートについて知ることは、必須ではありませんが、家族構成や趣味がわかるだけでも、共通の話題を上げやすいものです。
②上司のエモーショナルなポイントを探す
②については、上司がどんなことをポジティブに受け取り、どんなことをネガティブに受け取るのかに注意して探していくという方法です。ネガティブに思う話や行動を避け、ポジティブなテーマや行動を会話や行動に取り入れることで、相手も「自分のことを理解している」と思ってくれるものです。
先回りをして資料準備をしておくと喜ぶタイプなのか、言われたことにすぐ反応すると話しやすいタイプなのか、プライベートな部分に踏み込まれるのが嫌いなタイプなのか、家族ぐるみでキャンプに行くことを楽しむタイプなのか、探って理解しておくと、必要なコミュニケーションの方法が見えてきます。
相性の良いタイプを事前に伝えておくのも一つの方法

上司や同僚の情報を事前収集することだけでなく、自分のタイプ、これまで相性のよかった上司のタイプ、これまで相性のよくなかった上司のタイプを参考情報として人事に伝えておくのもひとつの手です。
「こんな人が上司だとパフォーマンスを発揮できるけれども、こういう人が上司だと、パフォーマンスが出ない」といった内容で伝えてみてはいかがでしょうか。


成果を出そうと焦らない

いままで問題なくできていたことが、新しい環境に入ると様々な要因でできなくなり、転職する前までは自分のキャリアについての一定の自己肯定感・効力感を持っていたはずが、転職したての3か月間で、自分の自己効力感が下がっていくという状態です。
「転職後にとまどったこと」として、「前と今の会社の仕事の進め方等やり方の違い」を上げる人が最も高く、男性が49.4%、女性が47.1%というデータからもわかります。

■調査実施期間:2016年9月28日(水)~10月5日(水)
■対象:株式会社リクルートキャリアの転職エージェントサービス<リクルートエージェント>の登録者で、 何らかの手段で2015年12月~2016年5月に転職を実現された3,906名のうち回答者713名 (回答率18.3%)
■方式:webを使ったアンケート

意欲の高い人ほど、中途採用だから即戦力として期待に応えようと考え、悪循環に陥りがちで、コミュニケーションが狭まることも考えられます。
まずは人間関係構築のための二つのステップに着目し、自分のことをきちんと伝える準備をし、相手のことをよく理解しようと努めていきましょう。
今考えている人間関係への不安と入社後のリアリティショックが一緒になり、余裕がなくなっていくことも考えられそうです。
今回ご相談して、自己開示の重要性もわかったので、まずは良好な人間関係を築けるように、自己紹介を練っていくことから準備したいと思います。

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