年収ダウンしても転職すべきかどうか迷っています【転職相談室】
「現職に不満がある」「キャリアチェンジしたい」と転職活動を開始。ところが、「検討している業種・職種・企業に転職した場合、年収ダウンになる。年収ダウンしても転職すべきか迷っている」と悩む方は少なくないようです。
そんなお悩みに対し、どんな視点で判断すればいいかを、組織人事コンサルティングSegurosの粟野さんが解説します。
目次
現職に不満があります。年収ダウンしても転職すべきでしょうか?(Aさん/25歳/女性)

今の仕事は残業が多いため、転職を考えています。いくつか残業の少ない求人を見つけたのですが、どれも現職よりも年収ダウンしてしまい、本当に転職すべきかどうか迷っています。
不満ばかりに目を向けず、実現したいことがクリアできるか考えてみましょう。
まず、「現状の不満から逃れる」ということを目的として転職するのはお勧めできません。今後、5年先、10年先、20年先――と、将来、自分がどんなポジションでどんな仕事をしていたいかに目を向けてみることが大切です。
不満から転職を図ろうとしたBさん(20代/女性)の事例をご紹介します。
- Bさんの事例
Bさんは新卒で大手自動車メーカーに入社し、希望どおり海外営業部門に配属されました。海外出張や海外駐在など、世界を股にかけた活躍を想像していたBさんでしたが、実際の業務は英文メールでのやりとりや、Web会議が中心。年功序列の組織体系であり、望むポジションがいつ巡ってくるかわからない。理想と現実のギャップに不満を抱え、転職活動を始めました。
応募先として、海外営業や海外駐在のチャンスのある企業、さらに、海外案件や海外支店への出向などの機会があるグローバルコンサルティングファームなどにエントリー。しかし、大手企業ではことごとく不採用となってしまいます。内定を獲得できたのは、中堅企業やベンチャーのみ。年収は50万円~100万円ダウン、福利厚生も含めるとさらに可処分所得が減る条件の企業ばかりでした。
結果、Bさんは転職することなく、そのまま会社にとどまる道を選びました。転職活動でさまざまな企業・仕事を知るうちに、今の環境がいかに恵まれているかに気付いたのです。収入や福利厚生面だけでなく、キャリアアップできる環境が整っており、優秀な先輩や同僚に学べる機会も多い、と。時間はかかっても、現職で経験を積んでいくことで、いずれは海外駐在などの大きな仕事ができる可能性がある、と判断しました。
内定を得た企業で理想の仕事ができるという確信を持てたのであれば、年収ダウンとなっても、Bさんは転職に踏み切っていたかもしれません。
しかし、さまざまな会社を見たことで視野を広げた彼女は、中長期視点でキャリアを考えた結果、そして年収と天秤にかけた結果、現職にとどまるのがベストという結論にたどり着いたのです。
「目の前の不満を解消したい」という気持ちもわかりますが、まずは一度立ち止まり、数年先を見据えた上で転職を考えてみるといいでしょう。
キャリアチェンジを検討中です。年収ダウンしても転職すべきでしょうか?(Cさん/26歳/男性)

新しい仕事にチャレンジしたく、転職を検討中です。未経験でもエントリー可能な求人を見ていると、どれも今より年収ダウンしてしまい、本当に転職すべきかどうか迷っています。
キャリアビジョンを描けていますか?将来への見通しがあるかがポイントです。
転職する時点で年収ダウンとなっても、「後々年収アップできる可能性があるかどうか」が判断のポイントの一つです。
今後、マーケットが縮小していく分野、あるいはAI(人工知能)・ロボットなどの進化により需要が減っていく職種などに転職したとしたら、再び年収を上げるチャンスを得にくいかもしれません。
しかし、キャリアチェンジ後、知見・経験を積み重ねることでポジションアップしたり、キャリアの幅を広げられたりする分野・職種を選べば、一時的に年収ダウンとなっても、再び上げていくことは可能です。
営業から経理職へのキャリアチェンジを図ったDさん(20代/男性)の事例を見てみましょう。
- Dさんの事例
Dさんは保険代理店の営業職。しかし、「数字から企業経営をとらえる仕事がしたい」という思いが強くなり、経理・財務職へのキャリアチェンジを目指して転職活動を始めました。
学生時代に簿記2級を取得し、公認会計士の短答式試験合格を果たしていたため、それを武器とし、多数の経理・財務職の求人にエントリー。苦戦を強いられたようですが、結果的には上場企業の経理職として内定を獲得しました。
年収は50万円ダウンしましたが、Dさんは迷わず転職に踏み切りました。経理職は、月次決算・年次決算・連結決算・開示資料作成・監査対応――といったように、年次が上がるにつれてステップアップしていける仕事。経理・財務スペシャリストとして異業界に転職できるチャンスがあるほか、経営企画部門へのキャリア展開、会計・税理士法人やコンサルティングファーム・ファンドへの転職など、さまざまなキャリアの可能性が広がっています。一時的に年収ダウンとなっても、中長期的には年収アップのチャンスが豊富なため、Dさんはまったく気に留めませんでした。
実際、彼は経理職へのキャリアチェンジから数年後、財務系コンサルティングファームに転職。想定通りのキャリアを歩み、営業時代より年収アップを実現しています。
このように、中長期的なキャリアビジョンが描けているのであれば、一時的に年収ダウンしても、キャリアチェンジのチャンスに賭けてみる価値はあると思います。
年収ダウンしても転職したい人が注意すべきポイントとは?
転職後に年収ダウンとなりそうな方は、次のような準備・心構えをしておくことが大切です。
どこまで年収ダウンが可能か「許容範囲」を決めましょう。家族とも相談を
まずは自分の生活にかかる費用を整理しましょう。「必ずかかる固定費用」「削減可能な費用」を仕分けし、最低いくらの年収が必要かを算出します。
生活水準を落とすことは、想定よりつらく感じることも。そのストレスが仕事へのパフォーマンスに影響を与えることもありますので、本当に自分に必要なもの・必要でないものを見極めましょう。
生計を共にする家族がいる場合、家族との相談も大切です。特に子どもの教育費や住宅費などに関しては、夫婦でも価値観が分かれるところ。お互いの希望をすり合わせ、削減可能な範囲について合意しておくといいでしょう。
転職後の会社で年収アップが期待できるのか、将来性を考えましょう
可能であれば、転職を検討している企業の人事制度(評価・報酬・等級)を確認することをお勧めします。
昇給率・昇給ペースは企業によって大きく異なるもの。何年も基本給を据え置く企業がある一方、半期・四半期ごとに人事評価を行い、給与額を見直す企業もあります。入社後、成果を挙げることで収入を上げていけるのかを確認してみてください。面接の場で、既存社員の役職ごとの年収例や、昇給例を確認してもいいでしょう。
なお、スタートアップ企業に入社した場合、まだ売上が立っていないケースも多く、入社時の給与は低く抑えられがちです。しかし、新しい技術やビジネスモデルでマーケット開拓に成功し、成長を遂げれば、大幅な年収アップの可能性もあります。事業の立ち上がり間もない時期に入社した場合、ストックオプションで資産を得たり、高いポジションに就いて高年収を得られたりするかもしれません。
もちろん、スタートアップ企業が成長できるかどうかはなかなか予測するのが難しいものです。しかし、その会社はうまくいかなかったとしても、新規事業開発やゼロからの顧客開拓、組織作りなどの経験は、別の会社でも活かせるでしょう。これから事業開発や組織作りに取り組もうとする企業に、そういった経験が高く評価される可能性もあります。
その会社に入ることで、中長期的な収入アップにつながる経験・スキルを得られるかどうかという視点で考えてみるのも一つの方法です。
まとめ
転職という新しいスタートを切るときに、「年収ダウン」となると、ネガティブな気持ちになるかもしれません。しかし、転職することで描く将来像に近づくことができるなら、たとえ一時的に年収ダウンしたとしても転職する価値はあります。本当にやりたい仕事が明確なのであれば、年収ダウンしても納得感とやりがいを持って働けることでしょう。
一方で、「年収ダウンしてでもやりたい」という意欲をかき立てられない仕事であれば、年収を維持できる現職にとどまり、不満を解決する道を探ったほうがいいかもしれません。
目の前の不満ばかりに固執せず、「将来像・キャリアビジョン」や「やりがい」、「長期的な収入アップ」、「生涯年収」などさまざまな視点から転職を捉えることが大切です。
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