転職しないことはリスクになりますか?【転職相談室】
仕事の内容にも評価も年収も、現状に大きな不満はないけれども、時代の流れや同期が転職する様子を見ていると、なんとなくこのままでいいのかと焦りを感じてしまう。
安定性を考えると今の会社に居続けようと思うものの、転職しないリスクについても知りたいというご相談に、キャリア形成のプロフェッショナルとして、組織人事コンサルティングSegurosの粟野氏がお答えします。
目次
世界を飛び回るのが夢だったのにほぼ内勤。10年待てば出張も増えるけれど…チャンスを逃がしていないでしょうか(Aさん/メーカー・海外営業/26歳/女性)
自動車メーカーで営業をしています。
■悩み
大手自動車メーカーの海外営業に就いて5年目で、仕事の内容にも慣れてきました。
ただ、新卒の頃にイメージしていたのは、海外出張をして、現地の人と交渉をするような日々。
東京のオフィスのパソコン上で海外支店とルーティーン業務をこなすだけの現状は、理想と大きなギャップがあります。
先日、外資系のコンサルティング会社に転職した元同期と会った際は、海外への英文レポートを何度も書き直した苦労話を聞いて、彼がうらやましく思えました。
ただ、30歳を目安に結婚や出産を考えたいという思いもあり、婚活に力を入れるなら、仕事では冒険せず、慣れた職場環境にいる方がいいと思っています。
実際、育休から復帰して、裁量権を持って仕事している先輩もいます。
■相談
でも、転職しないことで、若いときにしかできないチャンスを逃しているのかもしれないとも思い、早い段階でやりたい仕事を目指した方がいいのかなと悩んでいます。


まず、Aさんが今所属しているのが大きな企業なので、そこで「転職しないリスク」は大きく分けて4つ挙げられます。
「今すぐ」には転職しない場合
1.年収・待遇が上がり、身動きがとりづらくなるリスク
特に大企業の場合年功序列で経験年数と共に年収や待遇が上がっていきます。
プライベートでは、それを前提に住宅ローンや子供の教育費などを考えるので、年齢を重ねるにつれて同じ年収でないと転職できなくなる傾向にあります。
しかし同じ条件で転職できる企業の母集団は減るので、転職先を見つけにくくなります。
2.社内の経験が転職市場では評価されないリスク
大きな企業は業務を細分化していることが多く、特定の領域のみを担当していると、その部門で極度に最適化している場合があり、身に付けてきたスキルが転職市場で通用しないことがあります。
将来的にも転職しない場合
3.異動・転勤のリスク
人事部が主導で10年単位での育成やキャリア形成を考えていくため、事業継続や組織維持、ビジネスマーケットの変化に対応するための急な部署移動や転勤の可能性が出てきます。
その結果、個人レベルでキャリアを選んでいくことは難しい場合があります。
4.ビジネスマーケットの変化のリスク
今の業界が衰退していったり、扱っている商品やサービスが時代の変化と共に市場から受け入れられない状況になるとき、経験に価値を見出されなくなり、転職しにくくなる場合があります。

スキルの面で、指示された仕事をこなす精度は高いとしても、自分で判断して仕事をした経験が少ないので、30代になってから転職しようとすると、選択肢は狭まります。
今、選択肢が10あるとしたら、4年後は6になるイメージです。それが自分にとってリスクだと思うのでしたら、転職は視野に入れた方がいいと思いますよ。




もう少し規模が小さいメーカーで海外拠点がある企業や、海外に拠点のあるコンサルティング会社だと、海外で仕事をしたいという目的には一致します。
ただ、入ってすぐに海外に行けるかというと、企業の状況によるので、面接を通して、企業側の状況や意向を確認していくことになります。また、今の会社にいても、10年後も同じ部署にいるとは限らないですよね。
社内の様々な部署の仕事を理解したり、社内外の人脈を作ったり、ビジネスプロセスやメーカーとしてのバリューチェーンを理解したりするために、一定期間での異動やそれに伴う転勤は発生するはずです。
自分のキャリアプランもあると思いますが、大手企業にいる場合は、ある程度、企業が置かれているビジネスマーケットの状況や人事のキャリア形成プランの影響を受けることを受け入れざるを得ない場合が多くなります。



まとめ
- 「転職しないリスク」を踏まえて、やりたいことにこだわるのであれば、早いうちに転職をした方が、選択肢は多い
- ライフプランが不確定であれば、キャリアプランの見通しを先に立てる方法もある
- 企業の事業・人事プランと、個人のキャリアプランは必ずしも一致しないので、やりたいことがあるなら視野を広げてみる
安定性重視で現職にとどまっているが、金融系ベンチャーに転職した同期が気になる(Bさん/金融・法人営業/29歳/男性)
地方銀行で営業をしています。
■悩み
地方銀行に入行して7年目、グループ会社と合併することになり、今までと仕事の仕方が変わりそうです。
最近は周囲の人が転職活動を始めました。積極的に転職活動をしている同僚を見ると、自分も転職を考えた方がいいのかと焦るのですが、特に行きたい会社があるわけでもなく、このまま会社の方針に合わせて仕事をすればいいとも思っています。
ただ、最近話題になっている、フィンテック系のベンチャー企業へ転職した同期が生き生きと仕事をしているのを見ると、今の職場に将来性があるのか不安になってきます。
■相談
このまま今の会社にいることはリスクがあるのでしょうか。


昇進の基準や評価も変わる可能性があります。ただ、ご自身では転職の必要性はそこまで感じていないようですね。
銀行で働いていると、福利厚生も整っていて、年収も他の業種に比べていいので、あえて転職することはないというお気持ちもわかります。


ただ、これから年齢が上がるにつれて、昇進できる機会も減ってきます。
例えば銀行員の方ですと、役職定年が40代後半から50代半ばまでくらいにあり、以前だと子会社への転籍や出向をして、部長待遇で受け入れられるという話がありました。
しかし、今は出向や転籍を受け入れない時勢です。一定の年齢で昇進が止まり、出向もできないとなると、今までの後輩が上司になり、その下で働く可能性も出てきます。
おそらく皆さんそのような現実を見聞きしていると思うのですが、Bさんくらいの年齢では、まだリアリティを感じないので、なんとなく今のままの延長に未来があると思いがちです。


ただ、1200万円の年収をもらっていて、銀行の法人営業だけを20年継続してきたキャリアだと、応募可能先が非常に少なくなります。
そもそもそれだけの年収を出せる企業がそう多くないですし、限定された業種・職種で評価されていたとしても、社内特有の基準で、転職市場ではそこまで評価されないことが多いのです。


また、最近は、人口減少や低金利、「〇〇pay」など他業種から金融への進出や海外マネーの利用などで、銀行本来の役割である、お金を預かる、お金を貸す、ビジネスの決済をするという3つを果たすフィールドが狭くなっています。
信託銀行も含めて、自分たちの会社のビジネスが今まで通りの見通しではなってくることを頭で理解しつつも、個人のキャリアという視点で見たときには、そこまで危機感がない方が多いです。
そうはいっても、転職したい企業も見つかっていないのですが。


または金融系のベンチャー事業であるフィンテック(fintech)で新しい金融ビジネスに関わるという方法もありますし、別業種のベンチャー企業で商品企画や広報など、新たな職種でキャリアを作っていく方法もあります。
組織は基本的にピラミッド構造になっているので、出世競争があり、勝ち残った人とそうでない人が出る構造になっています。
今の時代、1つの組織で出世競争を勝ち続ける努力をするという考えだけではなく、仮にその組織で勝てなかったときのことも想定し、自分はどういった場所で何ができるのか等を考えておく必要があります。
今、転職するかどうかは抜きにしても助走期間として、転職活動はしておいた方がいいのではないでしょうか。
他にどうしてもやりたいことがあるわけではないなら、20代後半で今すぐ辞める必要性もないので、2~3年単位で転職の可能性を見直してはいかがでしょうか。
今の居心地のいい環境も大事ですが、将来行先がなくなる方が心配なので、今できることをやってみます。ありがとうございました。

まとめ
- 限られた業種・職種でしか活かせない経験は、転職市場で評価されにくい
- 役職定年のタイミングで役職につけず転職を考える際、住宅ローンや教育費など、お金がかかる時期に重なり、年収を下げられない事情が多いが、年収を維持できる転職先が少ない
- 自分のキャリアが転職市場で通じるか、定期的にチェックをしておく
今回は、比較的大企業に勤務する方の悩みで、現状のままでも大きな不満を感じているわけではありませんでした。ただ、昔のように年功序列、終身雇用が当たり前の時代ではなくなりつつあります。10年後・20年後に現職の業界がどのように変化していくのかを見据え、そこで自分がどのようなキャリアを歩めるか、自分の志向と併せて検証することが重要になってきます。
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