転職時にありがちな「理想と現実のギャップ」とは
転職時に描く理想を実現しようとする中では、時として現実とのギャップに直面することがあります。
転職活動中から入社後まで、さまざまな場面で生じるギャップの原因とその対策について、組織人事コンサルティングSeguros 代表の粟野友樹氏に話を聞きました。
目次
転職時に生じ得る「理想と現実のギャップ」とその原因は?
転職活動中、そして転職後に直面するかもしれない「理想と現実のギャップ」にはどんなものがあるのでしょうか。比較的多く聞かれるギャップとその原因の一部を挙げてみます。
転職サイトに求人はたくさんあるから、希望条件を満たし応募したい求人はすぐに見つけられると思ったが、なかなか見つからない
これは、特に初めて転職活動をする方に多く見られるのですが、自分の中で転職軸が整理できていないために、希望条件が実は明確になっていない可能性があります。
具体的には、転職理由があいまい、経験スキルの棚卸しができていない、転職で大切にしたい優先順位がわかっていない、などです。
また、転職市場を把握できていないことも、希望条件を満たす求人が見つからない原因となり得ます。
例えば、現職の年収が低いと不満を感じ、「今より年収が上がる」求人を探すものの、経験スキルなどを考慮すると、希望する年収アップの求人が見つからないといったケースです。
転職先はすぐ決まると思っていたのに、書類選考や面接に通過しない
書類選考に通らない原因は、下記のようにいくつか考えられます。
- 自己分析、優先順位づけ、市場分析が不足しているため、マッチする求人に応募していない
- 応募書類の内容や書き方に改善点がある
また、リクナビNEXTのアンケート※では、「転職先が決まるまでの応募社数は7.5社」との結果が出ています。こうした転職事情を知らない(応募したすべての企業の面接を受けられると勘違いしている)ことも、理想と現実ギャップを生じさせる原因となっているかもしれません。
※【調査概要】リクナビNEXT 転職活動に関するアンケート」 実施期間:2017年3月20日~3月25日 調査機関:楽天リサーチ 調査対象:5年以内に転職した20~30代正社員 男女1000名
面接に通過しない原因としては、一次、二次、最終というそれぞれの段階に応じて注目されている異なる観点に、適切に対応できていない可能性が考えられます。
一次面接が人事担当者による面接の場合は、面接官は経歴や転職理由、志望動機の一貫性や、話す内容と応募書類との一貫性を見ながら信頼度や定着度を推し量っています。
二次面接が現場責任者による面接の場合は、経験やスキル、実績などを、数字を用いるなどして簡潔に伝えることが求められます。
最終面接は役員や社長によるもので、社風とマッチするか、キャリアの方向性が合っているか、活躍が期待できるか、中長期で在籍してくれるかなどが判断されています。
こうした実情を知らないで臨んでしまうと、本人はうまく話せたつもりでも、失敗する可能性が高くなります。
退職したら次の入社までゆっくり休もうと思っていたのに、引き継ぎが長引いてギリギリで転職
「転職先が決まった。有給休暇も残っているし、転職前にゆっくり休んでから次の仕事を始めよう」と束の間のリフレッシュタイムを期待していたのに、上司に退職を伝えたら引き止められてしまった。会社側と何度もやり取りをした結果、何とか退社はできたものの、引き継ぎ業務が退社日まで長引いてしまい、有給休暇が取得できなかった、という人もいるでしょう。
原因として考えられるのは、自分の中で明確な転職の意思決定ができていないこと。会社側の引き止めに気持ちがぶれてしまうと、退職交渉がスムーズにいかなくなる可能性があります。
ほかには、引き継ぎ業務を見込んで退職日までをスケジューリングしたつもりでも、その見通しが甘かったという可能性も考えられます。
入社後は順調なスタートを切りたいと思っていたのに、仕事がうまくいかない
これは、誰でも大なり小なり感じるギャップで、原因は会社側と転職者側の両方にあると想定されます。
会社側の原因としては、研修プランや業務マニュアルの作成などができていないため。転職者側の原因としては、前の職場からの切り替えがうまくできておらず、「前の職場ではこうだったのに…」とつい比較してしまうため、などです。
その結果、ギャップが浮き彫りになってしまうのではないかと思われます。
チームに早くなじみたいのに、新しい人間関係がうまくいかない
人間関係についても、企業側と転職者側の両方に原因があると考えられます。
企業側には、歓迎会を開くなど仲間として迎え入れる雰囲気づくりや定期的なフォロー体制の欠如、などの原因が考えられます。
転職者側の原因として大きいのは、“待ちの態勢”でいることです。これは前述の「入社後は順調なスタートを切りたいと思っていたのに、仕事がうまくいかない」の原因にも当てはまるのですが、仕事は教えてもらうもの、必要な人とつないでもらえるもの、みんなに紹介してもらえるもの、と受け身になり、自分から働きかけようとしていないことが原因といえるでしょう。
自分の理想に近い働き方ができると思ったのに、実際は違った
「○○業務は全部任せると言われていたのに、実際は補佐的な役割だった」など、入社前に聞いていた仕事内容と違うこともあるでしょう。
また、「残業はほとんどありません」と聞いていたのに、実際はみんな残業をしていて、自分が描いていた理想の働き方とのギャップにショックを受けることもあるでしょう。
仕事の裁量、勤務時間、テレワークの導入具合など、理想の働き方の条件は人それぞれですが、ギャップが生じる共通の原因は、事前に情報を収集できていないことが考えられます。
また、会社が変われば多少のギャップはあるものですが、自分の中でイメージばかりが先行してしまい、期待が膨らみ過ぎたことも原因になっているかもしれません。
転職軸を明確にして、転職後に実現したいことの優先順位をしっかり決めておこう
ここまで転職活動から入社の過程における「理想と現実ギャップ」の例をいくつか紹介しましたが、こうしたギャップをできるだけ回避するための、共通する対策の立て方があります。
まずは、転職軸を明確にすることと、優先順位を決めることが基本です。
転職軸を明確にするには、転職理由、経歴、強み/弱み、成功体験などを整理しましょう。その上で、転職することで「実現したいこと(解決したいこと)」を洗い出し、優先順位をつけましょう。
優先順位を明確にして転職に臨むと、ギャップが生じた場合に「Aを優先してそれは実現に向かっている、だからBはかなわなくても仕方ない」と自分を納得させ、乗り越えやすくなります。
転職軸と優先順位を明らかにしておけば、会社に退職の話をする際も意思をしっかり伝えることもでき、円滑なやり取りにつながります。
また、転職サイトなどの情報を参考に、転職市場での自分の立ち位置(市場価値)を知っておくことも、現実とのギャップをなくすのに役立つでしょう。
優先項目の意味づけを、自分の中で明らかにし言語化しておこう
優先項目の意味づけが自分と応募先企業とでは違っていたために、それをギャップと感じることもあります。
例えば、自分は「チームワーク」を重視し、「チームメンバーが不得意なところをサポートし合う。助け合う風土があるチーム」を期待していたとします。
ところが企業側のいうチームワークとは、「助け合いというよりも、個々人がベストを尽くして業務を遂行し、それを合算して成果につなげる」という考え方によるかもしれません。
こうした食い違いをなくすためには、優先事項に対して自分が考える意味づけを言語化しておき、面接の時点で確認するようにしましょう。
事前の情報収集と面接での質問を重視しよう
採用サイトをチェックする際、ただ漫然と読むのではなく、「この転職で自分が実現したい優先項目」に焦点を絞って情報を精査していくことが重要です。
そして、面接では優先項目に関わることについて、積極的に質問しましょう。
質問する際には、「自分で調べたところ、〇〇とありましたが、事例があれば教えてください」「私はこう解釈しましたが、正しいでしょうか?」など、自分の意図を盛り込んで質問すると、入社への意欲が伝わるでしょう。
ギャップは起こりうるものだと心得ておくことも必要
誰もが自分なりのイメージや理想像を抱いて転職しますが、環境が変わるのですから、大なり小なりミスマッチ、ギャップは起こりうるものです。
必要なのは、転職時の理想と現実ギャップを最小限に抑えられるよう、自分でできることはしっかりと準備しつつ、遭遇したギャップに適応していこうとする覚悟や柔軟性を持っておくこと。
そして、自ら現実を少しずつ理想に近づけていくよう、努力や工夫をしていくことも忘れないでおきましょう。
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