【社労士監修】転職後の住民税に関するよくある疑問とその対処方法
転職後は住民税に関するさまざまなトラブルが発生します。
よくある疑問と対処方法について、社会保険労務士の岡佳伸氏に伺いました。本記事を参考に適切な対応をとりましょう。
監修
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
岡 佳伸氏
アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。
転職する際に知っておきたい住民税の基礎知識
住民税の決まり方
住民税は、前年の1月1日から12月末までの収入に対して課税される「所得割額」と、所得に関係なく均等に課税される「均等割額」の合計金額で算出されます。
会社勤めの人であれば、納税する年の1月1日時点で住所がある市区町村あてに、年末調整でさまざまな控除がなされた「給与支払報告書」が会社から送られます。
各市区町村はその支払報告書に基づいて住民税を算出し、5月までに会社経由で住民税額の通知をします。それを12等分した額が、6月の給与から翌年5月までの1年間で給与から天引きされます。
住民税の納付方法
住民税の納付方法には、「特別徴収」「普通徴収」の2つがあります。「特別徴収」は会社員が給与からの天引きで徴収されて会社がまとめて納税する方法、「普通徴収」は自営業者や退職者などが確定申告をして自分で納税する方法を指します。
特別徴収でも普通徴収でもトータルで納める額は同じですが、特別徴収は12分割で給与天引き、普通徴収は一括または退職時期によって2〜4分割での個人納付という違いがあります。
また、住民税は転職先が決まっている場合と決まっていない場合で納付方法が変わります。
転職先が決まっている場合
「給与所得者異動届出書」を会社経由で市区町村に提出すれば、転職先の給与から天引きされる「特別徴収」を継続することが可能です。
転職先が決まっていない場合
退職した時期によって納付方法が異なってきます。
●1月1日~5月31日に退職した場合
その年度分の残りの住民税は、基本的には最後に支払われる給与から一括で徴収されます。一括徴収される住民税の額が、給与よりも多い場合は、普通徴収に切り替えられ、自分で市区町村に納付することになります。
●6月1日~12月31日に退職した場合
退職月の住民税は給与から天引きで徴収され、残りの住民税は普通徴収に切り替わります。市区町村から納税通知書が送られてきますので、その納付書に記載された期日までに自分で納付することになります。
なお、その年の退職月までの給与と賞与に課税される住民税の支払いは翌年になりますから、給与又は賞与が多かった場合などは、翌年の住民税が今年度分よりも高くなることがあります。
転職後の住民税に関するよくあるご質問
Q.転職先でも引き続き特別徴収を継続したいです。どうすれば良いですか?
継続するには転職先での届出が必要ですので、まずは転職先の会社と相談してみましょう。退職時に前の会社に「給与所得者異動届出書」の作成を依頼し、その書類を転職先の会社経由で市区町村へ提出してもらえば、特別徴収の継続が可能となります。
なお、「給与所得者異動届出書」は、退職日の翌月10日までに市区町村へ提出する必要があります。
Q.転職後の住民税の特別徴収はいつからされるのでしょうか?
特別徴収の継続手続きがスムーズに行われた場合は転職後すぐに徴収が開始されます。しかし、特別徴収の継続手続きをしなかった場合や、転職までの期間が空いてしまった場合などは、普通徴収での納付になっています。
住民税の特別徴収の基点は6月ですから、転職先への入社月がいつであろうとも、住民税の特別徴収は6月の給与から天引きが開始されます。
Q.引っ越した場合、住民税の納付先はどう変わるのでしょうか?
住民税は、その年の1月1日時点で「住民票」がある市区町村へ納めることになっています。よって引っ越しのタイミングによっては、現住所と住民税を納付する市区町村が異なることはあります。また、住民票を移動していない場合も同様です。
Q.特別徴収から普通徴収に切り替えましたが、住民税の納付書が届きません。
退職した会社側の手続きが遅れている可能性はあるかもしれません。もしくは、普通徴収の納付は年4回に分けられるため、タイミングによっては納付書の到着が遅くなることもあります。
また、住民税の額が変わることで納付書の発送が遅れることもあります。例えば、副業での収入があって確定申告をした場合や、扶養家族が減っていて年末調整の届出とは違っていた場合などでは、住民税の額が変更になります。
Q.住民税の納付方法を特別徴収に切り替えたいです。どうすれば良いですか?
転職先の人事に、市区町村から送られてきた納税通知書および納付書を一式持参して、特別徴収への切り替えを相談してみてください。
もし既に納めてしまった分があるならば、その領収書も忘れずに持参すると重複納付などの間違いが起こることもないでしょう。
Q.転職先で住民税が天引きされていません。なぜですか?
住民税が天引きされていない理由としては、3つほど考えられます。
(1)住民税の切り替え時期
例えば、1月に退社して4月に入社した場合、住民税は普通徴収での納付になっていますから、6月の給与まで天引きにはなりません。
(2)住民税の課税対象でない
住民税は前年の所得に対して課税されます。転職する前の年が無収入だった場合、もしくは育休明けや傷病明けなどのケースでも住民税がかかりません。
(3)そもそも住民税を天引きしない会社
社員が2人以上の場合は住民税を天引きしなければなりませんが、特例として、社員1名の場合は天引きしなくていいことになっています。
Q.転職後に住民税が高くなることはあるのでしょうか?
住民税は現在の所得ではなく前年の所得に対して算出されます。転職して収入が下がったとしても、前年の収入が多ければ、住民税は高くなることはあります。
Q.転職先で住民税異動届の提出を求められました。どのように準備すれば良いでしょうか。
住民税異動届は、以前勤めていた会社に記載してもらわなければなりません。前職の会社の人事に相談して、「給与所得者異動届出書」を作成してもらいましょう。
Q.転職後に収入が大幅に下がってしまいました。住民税の減免措置などはありますか?
年金や健康保険には減免措置などがありますが、住民税については原則そういう措置はありません。(但し、条例で定める天災等特別な事情があるときに限り減免されることもあります)
住民税は前年の所得から算出して、翌年に納付します。転職によって収入が大幅に下がる予定や、入社時期の都合で無収入の期間があるならば、あらかじめファイナンシャルプランニングしておきましょう。
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