【仕事を辞める理由】円満退職を目指すなら、どう伝えるのがいい?
転職先が決まり、一安心したあとにやってくるもう一つの山。
それが退職交渉です。上司との交渉をスムーズに進め、気持ち新たに転職ができれば理想でしょう。
円満退職のためには理由をどう伝えるべきなのか。組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに聞きました。
仕事を辞める理由は、どんなものなら上司は納得しやすい?
内定をもらい入社日も決まり、無事終わったはずの転職活動。しかし、もう一つの重要なミッションである「退職交渉」に苦労する方は少なくありません。
「上司の強い引き留めをうけ、人事からもこのまま働き続けないかと説得されている」
「後任者を決めてくれず、スケジュール通りの入社が難しくなってきた」
などと交渉が難航し、最悪のケースとしては、入社日が後ろ倒しになることで内定取り消しになる可能性もあります。
転職は、いかなる理由であれ「職業選択の自由」によって認められています。上司や人事が強引に引き留めることはできず、仕事を辞める理由を必ずしも伝える必要はありません。
ただ、そうは言っても、今後の長いキャリアや人間関係のことを考えれば、円満に退職できるに越したことはありません。
同業界・同職種転職であればこれから一緒に仕事をする可能性もあるでしょう。また、今後の転職活動では、前職の上司や同僚などに仕事の評価を聞く「リファレンスチェック」が行われることもあります。
あまりにも配慮がない辞め方をすると、低い評価につながる可能性があります。スムーズな引継ぎを含め、退職日までの時間を心地よく過ごすためにも、仕事を辞める理由をしっかり伝えて円満退職を心がけることは大切だと思います。
では、円満退職を目指すために、どんなコミュニケーションを心がけるとよいのでしょう。
交渉相手となる上司が納得しやすいものには、次の2つの要素があります。
- 健康や家族に関する個人的な理由である
- ほかで実現したいキャリア、身につけたいスキルがあるなど、ポジティブな理由である
家の事情などの個人的な理由にせよ、今後のキャリアに関する理由にせよ、周りに「応援したい」と思って送り出された方が、お互いに気持ちいいのでは。
そこで、円満退職につながりやすい「仕事を辞める理由」を具体的に考えていきましょう。
応援したくなるような「仕事を辞める理由」って例えばどんなもの?
仕事を辞める理由には、自身や家族の健康問題、親の介護や子どもの教育との両立などの個人的なものから、実現したいキャリアに結びついたものまでさまざまです。
「〇〇商材を扱いたい」「海外事業に携わりたい」など、現職ではどう努力してもその選択肢がない場合、「それなら仕方ない」と上司も納得せざるを得ないでしょう。
では、具体的にどんな退職理由があるのか。私が実際に出会った転職者のケースをご紹介したいと思います。
【キャリアに関する“応援したくなるような理由”】
- 自社コンテンツを持つIT企業で働きたい(現職は下請けだった方)
- 大企業向けの営業として、大きなプロジェクトマネジメントの経験を積みたい(現職が個人向け営業だった方)
- 経理の資格を取ったのでキャリアチェンジしたい(現職の社内公募でも経理職への異動ができなかった方)
【個人的な事情に関する“応援したくなるような理由”】
- 子どもの教育環境を考え地元へのUターンを決めた。家業を継ごうと思っている
- 親の介護との両立のため、実家から通いやすい場所で働きたい
現職では叶わない“やりたいこと”をほかで実現したい、という思いは、上司や周りの人にも納得感があります。退職交渉では、自分の考えをブレずに伝える姿勢が大切です。
ネガティブな仕事を辞める理由は、ポジティブに置き換える
転職を考えるきっかけは、ポジティブな理由ばかりとは限りません。むしろ現職への不満や不安をきっかけに転職、退職を考えるケースの方が多いかもしれません。
ただ、円満退職を目指す際に現職への不満を伝えることは、上司や周りのメンバーの否定につながりかねません。本当の理由は自分なりに認めながらも、ポジティブな表現に置き換えて伝えてみてはどうでしょう。
本当の理由:「給料が安い」「仕事の対価として割に合わない」
伝えるとき:「実力をしっかり評価される厳しい環境に身を置いて、〇〇職にチャレンジしたい」
本当の理由:「人間関係が合わない」「業務外の付き合いが疲れる」
伝えるとき:「仕事にコツコツと向き合い自分が決めたスケジュールを遂行する働き方が合っている。△△の資格を生かして、〇〇職の専門性を高めたい」
このように、今後実現したいキャリアについて一緒に伝えられるといいでしょう。
仕事を辞める理由を言いたくない、本当のことを言いづらい時はどうしたらいい?
仕事を辞める理由を言いづらい、言いたくない場合はどうするとよいのでしょうか。
最初にお伝えしたように、誰にでも自由に転職する権利はあり、理由を伝えなくてはいけないルールもありません。
ただ、退職交渉で何も伝えないと、周りに余計な疑心暗鬼を招きます。相手の立場や内容を慎重に検討し、何かしら理由を伝え納得してもらうことも、退職において必要なコミュニケーションの一つ。そう捉えて、理由を用意しておくことをおすすめします。
ネガティブかつ本当のことを言えない転職理由の筆頭は「上司が苦手」かもしれません。上司本人を前に言えないのは当然ですし、そもそも個人攻撃をして去っていくのは心証がよくありません。
もし、不満を言いたいのであれば「会社の目指す方向性やカルチャーが、自分が求めているものとは違った」など、会社全体の話として伝えてみてはいかがでしょうか。
仕事を辞める理由を伝えるときは、伝え方にも注意して
退職交渉は、伝える内容はもちろん、伝える順番や伝え方にも注意が必要です。
迷いを見せない、はっきりした態度と言葉遣いを
退職交渉でもっとも大事なのは、「迷いなく自分の意思を伝えること」です。
退職交渉が難航する人の多くは、心のどこかに「本当に転職していいのかな」「現職に留まった方が安心なのではないか」という迷いや不安があります。
いざ新しい会社への転職が現実味を帯びてくると不安が出てくるのは当然のこと。しかし、それが相手に伝わると「説得すれば引き留めることができるのでは」と思われかねません。
その結果、「さまざまな条件を提示されて引き留めに遭う」「何かしら理由をつけて、退職交渉が成立しないようにされる」という事態に陥ってしまう可能性もあります。
退職交渉の際は、退職理由を明確にすると同時に、「退職」は考え抜いた末の最終結論であることを伝えましょう。
退職までのスケジュールを逆算して伝える
退職交渉では、転職先への入社日、有給消化の希望スケジュールを打診するとともに、そこから逆算した引継ぎのスケジュールを相談しましょう。
上司や企業側が「何とか引き留めたい」と思っている場合、引継ぎを積極的に進めようとしないケースもあります。「後任者へのスムーズな業務移行のためには、〇日までには△△業務の引継ぎを終えたい」など、自分から物事を動かしていく姿勢も大切です。
伝える相手は、直属の上司からスタート
退職交渉でやってはいけないことの一つが「直属の上司よりも先に他の人に相談すること」です。
上司は部下のマネジメントを担っているため、上司より先に他の人が退職意向を知っているとなれば、管理能力を疑われる事態に…。上司の評価を落とすことにつながります。
これから円満退職を目指そうとする中、わざわざ上司の評価に傷をつけてしまってはマイナスの影響が必至です。
担当顧客や同じプロジェクトメンバーに、いつどのタイミングで退職意向を伝えるべきかなどは上司に相談をしてから決めましょう。
退職交渉において、仕事を辞める理由は大切です。ただ、それがどんな理由であれ、本人にブレがなければ、最終的には周りも納得せざるを得ません。どんなにかわいがっていた部下であれ、大事な同僚であれ、人の人生や職業の選択を否定することはできないからです。
退職交渉の前には、話す内容を明確にし、決断が変わることはないという強い姿勢で臨むことが大事です。そしてもちろん、これまでの感謝の気持ちも忘れずに伝えるとより良いでしょう。
- タグ:
こちらの記事も読まれています
新着記事
- 2025年3月27日応募書類が自動で作成できる!リクナビNEXTの「レジュメ」機能とは?
- 2025年3月14日転職活動で役立つ!無料の自己分析ツール厳選5種を紹介
- 2024年12月17日第二新卒の転職理由・退職理由|本音も交えた上手い答え方&NG例文
- 2024年12月3日盛り上がらず淡々と終わった面接は、不合格?それとも合格?
- 2024年11月29日コンサル業界の面接特徴|企業のチェック観点と答え方、準備・対策のコツ
- 2024年11月27日自分に合う「ニッチな企業」「隠れた優良企業」の探し方
- 2024年11月19日コールセンターに応募する際のアピールポイント・志望動機の書き方(未経験からの転職)
- 2024年11月1日転職して新規事業開発に携わりたいのですが、未経験では難しいでしょうか?【転職相談室】