売り手市場と買い手市場、それぞれの違いと転職のポイントは?
転職における「売り手市場」「買い手市場」は業種・職種によっても異なるもの。
「売り手市場なら転職したいが、買い手市場なら今の会社にとどまったほうがいいのか」など迷っている皆さんに、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏が、売り手市場・買い手市場それぞれの転職のポイントをアドバイスします。
目次
売り手市場/買い手市場とは?
まず、「売り手市場」「買い手市場」とは、どのような状況を指すのでしょうか。
- 売り手市場:採用企業より転職希望者の方が少なく、転職希望者が優位に立っている状況
- 買い手市場:採用企業より転職希望者の方が多く、企業が優位に立っている状況
転職市場全体で見れば、好景気のときは売り手市場、不景気のときは買い手市場となります。ただし、同じ時期でも、ある業種・職種では売り手市場、ある業種・職種では買い手市場になるなど、混在していることもあります。
ですから、一般論だけで判断せず、自身が狙う業種・職種の状況を確かめてみてください。
売り手市場か買い手市場かは「有効求人倍率」からわかる
今、売り手市場か買い手市場なのかを判断するには「有効求人倍率」を確認する手があります。
有効求人倍率とは、「月間有効求人数」を「月間有効求職者数」で割ったものであり、1人の求職者に対して求人が何件あるかを示す数値です。有効求人倍率が「1」以上なら、求職者に対して1件以上の求人がある状態です。
有効求人倍率は、業種・職種・地域ごとに算出しているデータもありますので、自身が希望する条件でのデータを調べてみるといいでしょう。
参考記事:一般職業紹介状況(職業安定業務統計)
売り手市場のときの転職活動のコツ
売り手市場のときの企業の動きを知る
売り手市場では企業がどのように動くか、転職希望者にとってどんなチャンスがあるかを知っておきましょう。例えば、次のような傾向が見られます。
- 採用を行う企業が増え、応募先の選択肢が増える
- 未経験者を対象とした「ポテンシャル採用」が増えるため、キャリアチェンジのチャンスが多い
- 人材確保のため待遇を手厚くする企業も多く、年収アップ、役職アップの転職が叶いやすい
選択肢が多いからこそ企業選びは慎重に
売り手市場の時期に転職活動をすると、企業の選択肢が多く、比較的内定を獲得しやすいといえます。
そのため、自己分析や企業研究等の準備や整理をしっかりせずに安易に転職を決めたり、知名度や給与条件などに惹かれて入社したりしがち。その結果、「社風が合わない」「思うようなキャリアを築けない」などの不満が生じ、転職を繰り返すことになるケースが少なくありません。
また、売り手市場の時期=好景気の時期には事業拡大に乗り出して人材採用を行う企業が多く見られます。ところが、なかなか利益が上がらず事業が縮小・撤退となり、「給与が上がらない」「別部門・職種へ不本意な異動を命じられる」といったケースもあります。
転職がしやすい時期だからこそ、慎重な姿勢で臨むことが大切です。
買い手市場のときの転職活動のコツ
買い手市場のときの企業の動きを知る
買い手市場の特徴として、未経験採用や大規模な採用を行う企業が減り、即戦力となる経験者採用にしぼる傾向が見られます。
転職希望者としては、応募できる求人が少なく、なかなか内定に至らないため、転職活動期間が長引く可能性もあるでしょう。そうした状況に陥りやすいことを認識した上で活動することをおすすめします。
一方、不景気の中で採用を行っている企業は、業績が伸びていたり、人材に投資できる体力を備えていたりする「優良企業」であるケースも多数。転職活動は厳しいかもしれませんが、優良企業への転職が叶う可能性があるともいえます。
応募数を増やす
前述のとおり、内定獲得のハードルが上がるため、転職の軸を明確にした上でなるべく多くの求人に応募することで内定獲得の確率が高まります。職務経歴書をしっかりと作り込んで自身の強みを伝え、書類選考通過を狙いましょう。
なお、「買い手市場の今は転職に不利」と考える人もいるため、思うほどライバルは多くないかもしれません。最初からあきらめず、粘り強く活動してみてはいかがでしょうか。
転職を検討するなら市場以外の観点も大切に
転職活動に踏み切るかどうかの決断は、市場についての一般論に惑わされないようにしたいものです。大切なのは、「自分にとって今転職すべきタイミングかどうか」ということです。
世間では「売り手市場」と言われ、チャンスが多いように見えても、あなたはまだ動くべきタイミングではないかもしれません。「買い手市場だから転職が難しい」と言われていても、あなたの経験・スキルに対するニーズは高いかもしれません。転職に臨むにあたり、何を目的に転職するのか、自分ならではの「軸」をベースに判断してください。
転職すべきかどうか迷ったときには、下記のような観点でも自身を見つめ直してみてはいかがでしょうか。
- 他社でも通用するような経験・スキルを身に付けられたか
- 今の仕事に「飽きた」だけではないか。今の会社でチャレンジできることはないのか
- 居心地が良く、慣れ親しんだ環境を変えるほどの強い意思があるか
- 今の会社でマネジメントの経験を磨けるかどうか
- 今持っているメリットを捨てても、新たに得たいものがあるのか
くわしくは、以下の記事を参考にしてください。
転職成功事例
「売り手」と「買い手」、それぞれの市場の中で転職活動し、うまくいった方の事例をご紹介します。ご自身の活動のヒントにしてみてください。
「売り手市場」で希望の転職が叶ったAさんのケース
SIer(システムインテグレーター)の営業職・Aさん(20代半ば/女性)。「今は幅広い商材を扱っているが、専門性を磨きたい」「年収を上げたい」という理由で転職活動をされました。
当時は売り手市場。多くのIT企業が若手を対象に「ポテンシャル」を重視した採用を行っていました。Aさんは複数の企業から内定を獲得し、待遇・社風・今後の成長性などを比較検討して選ぶことができたのです。
結果、今後もっとも伸びそうな外資系グローバルソフトウェアベンダー・X社を選び、年収60万円アップを果たしました。Aさんの前職企業、経験・スキルのレベルからすると、X社に迎えられたのは「売り手市場」が追い風となったといえるでしょう。
「買い手市場」で希望の転職が叶ったBさんのケース
大手サービス企業の人事職・Bさん(30代前半/男性)。大手の組織の中では一部の業務しか担当できないことに物足りなさを感じ、経験の幅を広げたいと考えて転職活動をしていました。
ところが、コロナ禍により、多くの企業が採用を手控えるように。応募できる求人が激減してしまいました。
それでも、「この環境下で採用を続ける企業は成長力が高く、将来性がある」と考えたBさん。求人企業1社1社を研究した結果、市場から有望視されているスタートアップ企業に転職されました。
求人豊富な環境では、大手企業のブランド力や条件面などについつい目を奪われてしまいがち。その点、「買い手市場」という環境だったからこそ、Bさんは「経験の幅を広げる」という目的にマッチする企業を見極められたのかもしれません。
あるいは、コロナ禍での不安から転職を踏みとどまる人が増え、ライバルが減った……という、目に見えないプラス面もあったのかもしれません。
それぞれの市場の特性を理解しつつ、自分の「軸」を見失わないように活動を進めていただきたいと思います。
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