現在営業職ですが、事務職に転職することは可能でしょうか?(20代男性)【転職相談室】
2020年11月6日公開
最終更新日:2022年6月9日
事務職と聞いて真っ先に「残業が少ない」というイメージを思い浮かべる人、特にキャリアチェンジとして事務職を考えている人は、実際の仕事内容や必要なスキルについてよく知る必要があります。
異職種から事務職へ転職をするための心構えなどを、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に聞きました。
アドバイザー 粟野友樹
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
現在営業職ですが、自分の時間をもっと作れるように事務職に転職したいと思っています。可能でしょうか?(Tさん/26歳/男性)
■相談内容
新卒で入社し、現在まで広告会社で営業職に就いています。残業が多くてプライベートの時間をほとんど持てないため、ワークライフバランスを両立できそうな事務職に転職するのはどうかと考えています。事務職は女性が多いイメージがありますが、男性でも応募できるものなのでしょうか?
事務職は性別以前に競争率が高い職業
事務職へのキャリアチェンジを考えているそうですが、具体的にどんな仕事が事務職だと考えていますか?
すぐに思いつくのは、自分自身が日常的にかかわっている営業事務や経理です。あとは、人事、総務、広報や営業企画とか…。
そうですね。ほかにも、法務や経営企画、マーケティング企画なども事務職です。つまり、バックオフィス系の仕事全般です。
かなり幅広いんですね。だとすると求人も多そうなイメージですが、男性でも応募できますか?
もちろん男性でも応募は可能ですが、有効求人倍率(有効求職者数に対する有効求人数の割合)はかなり低いんです。営業のような利益部門ではないので、企業は事務職の人数を抑える傾向にあります。ですから、事務職を中途採用する企業は限られており、競争率はかなり高いといえます。
ところで、事務職には一般事務職と事務系総合職があるのはご存じですか?
いいえ、知らないです。その2つは何が違うんですか?
デスクを並べて一緒に仕事をしていても、一般事務職が担当するのは事務系総合職のサポート業務。年収や昇進などのキャリアパスは、事務系総合職と違い、限定されるといえます。
また、事務系総合職と一般事務職とは募集時から分かれていて、人事評価制度も異なります。
そうなんですね。私は一般事務職の方でばかりキャリアチェンジを考えていました。残業は減らしたいですが、年収や昇進が望めないのは困るかも…。
だとしたらTさんの場合、事務系総合職を考えてみてはいかがですか?
事務系総合職の仕事は一般事務職よりも責任を負う、という点は考慮すべきですが、営業職と比較すれば残業の毎日、といった状況には陥りにくいかと思います。
今勤めている会社の管理部門にも、同期の男性社員がいるのではないでしょうか。彼らと同じような立場になることを想像してみてください。
事務職に就く場合のメリット・デメリット
ところで、男性が事務系総合職に就くメリットってありますか?
性別には関係ありませんが、一般的にメリットといえるのは、管理部門のいろいろな仕事を担当することが多いので、多彩な経験を積むことで視野が広がること。それに伴い、新しいキャリア構築も可能となるでしょう。
なるほど。多方面で経験値が上げられるのはいいですね。
部署にもよりますが、社内にいてコツコツと進める仕事が多いので、ある程度自分で仕事をコントロールしやすいのではないでしょうか。企業や仕事内容にもよりますが、今Tさんが悩んでいるワークライフバランスを両立させられる可能性は高いでしょう。また、仕事内容によっては、営業で培った交渉力や行動力などを活かせるかもしれません。


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事務職・事務系総合職を目指すなら意識しておきたいこと
気をつけておくべきことや、デメリットについても教えてください。
Tさんのような営業職は、成果がボーナスに反映されるなど、自分の頑張りが目に見えやすいですよね。ですが、事務系の仕事は成果が見えにくいという違いがあります。
また、達成感ややりがいを感じるポイントも営業職とは変わってきますから、その違いを受け入れて自分の中で消化できないと、ギャップに苦しむことになるかもしれません。
確かにそうですね。営業の仕事は自分で提案して自由に動けますし、数字で結果がわかることにもやりがいを感じていますから。自分がコツコツ型の事務職に向いているタイプかどうかも、考える必要がありそうですね。
その通りです。前面に出てバリバリと活躍できる営業職にやりがいを感じているとしたら、縁の下の力持ちとして後方で支援するような事務職・事務系総合職にキャリアチェンジして満足できるのか、じっくりと考えてみてください。
わかりました。営業職と事務職とでは、求められるスキルもかなり違いそうですね。
はい。例えば、契約書や経理伝票にしても、営業職は確認を依頼する側ですが、事務職・事務系総合職になったら内容を精査する側になるわけです。当然のことながら、仕事にはち密さや正確性が求められます。
事務職・事務系総合職は「ノルマがなさそう」「時間的に楽そう」と安易に考えがちですが、営業職とは異なるスキルも多く求められるので、そこも転職前に考えてみる必要があります。
それから、事務職・事務系総合職は自分の専門性を高める勉強をしていかなければならない可能性があることも心得ておいてください。
特に経理や法務などは、正しい知識や情報に基づいて進めていかなければならない仕事が多いため、自ら専門性を高める努力を続けていないと任される仕事が限定されてしまう可能性も考えられます。
事務職への転職を考えていましたが、まさに安易で、完全に勉強不足であることを自覚しました。今回のお話から競争率が高いことがわかりましたし、そもそも自分に向いている仕事なのか、やりがいを感じられるのかなど、再考すべきことがたくさんありそうです。
Tさんの場合、いったん「営業職ではワークライフバランスを両立できない」という思い込みは捨てて、現職で働き方を変える工夫をしてみてはいかがでしょう?
そのうえで、まだ事務職・事務系総合職を希望するなら、社内で異動願いを出してキャリアチェンジする方法もありますし、スタートアップ企業で営業を担当しながら企画も兼ねるなどして、徐々に事務職・事務系総合職にキャリアをシフトしていく方法もあります。
そうですね。とにかく、もう一度しっかり考え直してみます。いきなり競争率の高い事務職・事務系総合職に応募する以外のキャリアチェンジの方法があることもわかって、参考になりました。ありがとうございました。
記事作成日:2020年11月6日 WRITER:笠井貞子 ILLUST:安西哲平 EDIT:リクナビNEXT編集部