営業職ですが、全く違う業界に転職することは可能でしょうか?【転職相談室】
2019年11月28日公開
最終更新日:2022年6月9日
これまでの経験を活かして同業界、同職種に転職するケースもあれば、あえて新しい環境にチャレンジするというケースもあります。
今回は、「営業職で、全く違う業界に転職することは可能?」というご相談に、組織人事コンサルティングSegurosの粟野氏がお答えします。
アドバイザー 粟野友樹
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。
営業職ですが、全く違う業界に転職することは可能でしょうか?(Gさん/営業職/28歳)
<相談内容>
ポスターやパンフレットなど紙の印刷物と、ホームページなどWebの制作物を扱う会社の営業職として働いています。中小企業のお客様が中心で、予算が少なく担当者もご経験が少ない方が多いために、提案というよりご説明と価格交渉になりがちです。また、新規出店やイベント関連の制作物の場合は、ご挨拶を兼ねて現場に足を運ぶ必要があり、まとまった休みがなかなか取れません。
自分が関わった制作物が納品されたり、お客様に喜んでいただいたりした瞬間は嬉しいのですが、入社して丸5年になり現状を変えたいと思うようになりました。せっかくなら、全く違う業界の営業職にチャレンジしたいのですが、転職は可能でしょうか?
営業の介在価値が大きく、成長中の業界を希望
中途採用では経験・知識を重視される傾向があります。そのため、全く違う業界への転職は、可能ではあるものの、苦労されるケースもあります。違う業界に転職されたい理由はどういったものでしょうか?
制作会社で伸びている企業もあるとは思いますが、紙の印刷物が減っていることに加えて、Web制作も安く作れるツールができたり、クラウドで発注ができるようになったりと、以前よりも予算を削減しようとするお客様が増えました。できれば成長中で、提案によってはより多くの予算が獲得できるような業界に行きたいと思っています。
それと、「ちょっと冒険したA案」「落ち着いた雰囲気のB案」など、デザイナーのプレゼンテーションは提供価値を感じてもらいやすいのですが、「サイトリニューアル:300万円」「イベントの掲示物3点:20万円」など、もともと作りたいものと予算が決まっているケースが多く、営業としての介在価値に自信がありません。ただ価格交渉をしているような気がしています。お客様と対等に提案して、介在価値を感じていただけるような仕事を希望しているのですが…。
営業職は「法人or個人」「有形or無形」の4象限に分けられる
もっと提案余地や営業としての介在価値を感じてもらえるような営業の仕事を希望しているのですね。では、まず営業職を「顧客」と「商材」の観点で分類して考えてみましょう。営業職は、個人のお客様を対象とする「個人営業」と、企業を対象とする「法人営業」、そして扱う商材が「有形」と「無形」の4分類に分けることができます。
- 個人営業【無形】
- 保険などの金融商品、冠婚葬祭、旅行・レジャーなど
- 個人営業【有形】
- 住宅や自動車など
※より個人向けになると服飾や宝飾品、化粧品など店舗型の販売職も含まれます
- 法人営業【無形】
- IT・Web、人材、広告など
- 法人営業【有形】
- 消費財、工業製品・部品、設備など
制作会社の営業職は法人相手で固定の商材を売っていたわけではないので、法人営業【無形】に該当します。業界は異なっていたとしても、
同じ分野であれば営業手法や提案スタイルなどが似ているケースが多いので、経験を活かすことができるでしょう。特にIT・Webや広告業界なら、制作会社で得た知識やスキルをそのまま活かせるのでお勧めです。
「法人無形営業」で全く違う業界のキャリアの選択肢とは?
まずIT・Web、広告業界の営業職とはどのような仕事でしょうか?
システム開発・保守・運用を行うSIer(システムインテグレーター)や、開発・導入を行うITベンダー、IT・Web系の開発会社などに所属し、
ITに関する課題を抱える企業を把握して提案を行う仕事です。企業にもよりますが、開発から導入、保守・運用まで、予算規模やサービス期間、関わる工程が幅広いので、営業の提案余地も大きいのが特徴です。特にWebサービスの開発の場合は、UIやUXなどホームページ制作で培ったフロントエンドの知識が役に立つかもしれません。
広告業界の営業職は、主にデジタル広告を通じて顧客のマーケティングを行う仕事です。顧客のニーズに対して、あらゆる広告から最適な商品を提案する代理店営業もありますが、自社メディアや配信・計測・運用ツールなどを持っている企業も多いため、顧客のマーケティング活動に深く関わることもできます。また制作会社で培った「メッセージやデザインを工夫する」といったクリエイティブスキルも広告で活かすことができるでしょう。
その二つは何となくイメージすることができます。では、これまでのスキルを活かすことができて、全く違う業界の無形の法人営業だと他にどのような仕事がありますか?
「全く違う業界」でスキルを活かすとなると、人材派遣や人材紹介など、人材業界の法人営業も選択肢のひとつになるかもしれません。採用を検討している企業に対して、採用戦略を一緒に考えたり、人材要件を確認して求人を作ったり、選考フローを提案したりする業務です。
パンフレットやホームページ制作で、企業やサービスの特徴をまとめたり、端的な言葉で魅力を伝えようとしたりしませんでしたか? 実は求人情報も、ただ「営業職募集」とするのではなく「〇〇サービスの企画営業募集」など、
仕事のイメージを持ってもらうための「クリエイティブ力」が求められます。業務によっては
顧客の採用ページの改善提案やビジネスSNSの活用方法を考えるなど、これまでに培った制作会社の経験を活かす余地は大いにあるでしょう。
冒頭でお伝えした通り、中途採用では経験者の方が選考に有利に働くケースが多くなります。また、全く違う業界をご希望されている場合は、求人情報だけで業務内容を把握することが難しくなるため、興味を持った業界には幅広く応募して選択肢を広げ、面接で直に確認してみることをお勧めします。
記事作成日:2019年11月28日 ILLUST:二村大輔 EDIT:リクナビNEXT編集部