ネガティブな要素が伝わってしまう職務経歴書を改善【職歴書添削】

会社が推奨している営業スタイルと自分の営業スタイルが合わずに転職を検討しているKさん。
現職での評価が高くないため、詳細に記載するとネガティブな情報や感情が出てしまうという悩みに、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんが、全6項目の評価ポイントに沿って、職務経歴書を評価・講評し、改善まで導きます。
目次
【改善前】個人業績が振るわず退職するため、詳細に書くとネガティブな印象になる(添削希望者:Kさん)
<Kさんの職務経歴書についての悩み>
「詳細に書くとネガティブな要素が伝わってしまう」
- 歩合制の会社で個人成績が振るわず、固定給が低くて生活ができないため退職することになった
- 業績など仕事での評価や成果を書くとどうしてもネガティブな情報(達成率が低いなど)になってしまう
- 達成率が低くなった理由を説明すると、会社の方針に疑問を持っているというネガティブな感情を開示することになる
<Kさんのこれまでのキャリア>
- 1社目(新卒):不動産戸建の仲介営業に入社
- 成果重視の営業スタイルで好成績を残すも、会社の方針と営業スタイルに疑問を感じる(1年目)
- 自分なりの営業スタイルを模索しながら標準的な成績を残す(2〜3年目)
- 顧客満足度を優先させたスタイルを追求し、徐々に成績を落とす(4年目〜現在)
【転職意向】
顧客満足度よりも売上などの成果を重視する社風の中で、周囲に合わせた営業スタイルを実施したところ好成績は残せたが、徐々に「これで良いのだろうか」と疑問を感じるようになった。数年かけて自分なりの営業スタイルを模索し、現在は顧客1人1人に寄り添い時間をかけて接客をしている。結果として、顧客満足度と単価、紹介率は上昇するも、行動目標と契約件数の目標は未達成で短期的には十分な成果が出ていない状態。自分がこうありたいという営業としての成長は実感しているが、接客総数などの行動量を重視する会社の方針とは真逆なので、取り組みを評価されづらく、会社に居づらいと感じている。そこで、社風が自分に会い、歩合制ではなく、安定した固定収入を得られる会社へ転職したいと考えている。
<添削前:Kさんが作成した職務経歴書>


【評価&講評】第一印象は悪くないが、細かく見ていくと不満が伝わり「現職が嫌で逃げて辞める」と思われかねない
<アドバイザーからの全体講評>
必要な情報が丁寧にまとめてあり、サラッと読んだ時の印象としては悪くありません。ただし、興味を持って細かく読み込んでいくと、ネガティブな感情が少し漏れてしまっているようにも感じられます。
受け取る企業の担当者によっては、「成果が出なくて嫌になって辞めちゃうのかな」「成果が出せないから顧客満足度に逃げている人なのかな」と、誤解されかねません。
不満があったり、社内で評価されづらくなっていたりする場合は、いかに現職の方針と合わないかを説明したくなる気持ちはよくわかります。
しかし、採用担当者側にも不動産戸建営業などの歩合制・成果主義はハードな環境だという共通認識があるので、そこで成績が振るわないからといって、「きっと他の仕事をやってもダメだろう」とは思いません。
そのため職務経歴書では、会社に対する批判的な内容よりも、自分は何が得意で何ができるのかをアピールする方が健全で有効です。
Kさんの場合は、顧客満足度を高めるためにしていること、高めた結果得られたことなどを詳細に記入することで、じっくり取り組む営業スタイルなら活躍できることが伝わり、より魅力的な内容となるでしょう。
<評価基準と結果>
No | チェック項目 | ポイント | 評価 |
---|---|---|---|
基本的なビジネススキルを確認 | |||
1 | 基本項目 | 必要な項目が記載されているか。 | ○ |
2 | フォーマット | 見やすい体裁になっているか。誤字脱字はないか | ○ |
自社とのマッチ度・定着性を確認 | |||
3 | 業務内容・実績・経験スキル・自己PR・資格・性格 | 具体的な情報が、記載されているか。情報に信憑性や比較性があるか。 | △ |
4 | 第三者に伝わるように端的にまとめられているか。 | ○~△ | |
+αの評価 | |||
5 | 一貫性・テーマ性 | 職務経歴書を読んだだけで、「この人はこういう仕事をする人だな」といった仕事のスタイルや価値観が伝わるか。 | ○~△ |
6 | 読み手への配慮 | 企業が知りたいことを先回りして記載しているか。 例:その企業向けの志望動機、貢献できること、懸念されるであろう点の払拭など。 |
△ |
基本項目とフォーマットについての評価
基本的なビジネススキルを確認する項目(No1、No2)に関しては、基本項目が網羅されています。体裁・文字数もバランスがよく、読みやすい職務経歴書だと言えるでしょう。
業務内容・実績・経験スキル・自己PR・資格・性格などについての評価
企業が、自社とのマッチ度・定着性を確認するために確認している項目(No3、No4)に関しては、仕事内容、実績、自己PR等、全体的にわかりやすくまとまっており、別業界の企業人事が見ても、すぐ理解できる部分が好印象です。
一方で、会社が重視・用意している指標(成約件数、行動目標など)を用いて記載しているので、本人の良さ・強み・伝えたい実績成果が伝えづらくなっている印象も受けます。
例えば、月間行動目標は、会社としては重視している指標なのでしょうが、個人として行動量ではなく、質にこだわっているのであれば削除して良いと思います。
さらに、質にこだわった結果として顧客満足度だけではなく「顧客からの紹介数の多さ」や、「クレーム率の低さ」などを示す情報があるとより良いでしょう。
また、年間成約件数などは、社内の平均成約件数などを入れましょう。その記載があることで、きちんと成果を出している年もあったが、営業スタイルを変えたことで変化してきているということが伝わりやすくなります。
一貫性・テーマ性、読み手への配慮についての評価
+αの評価項目関する、一貫性・テーマ性(No5)については、顧客満足を重視した結果が転職理由につながっている部分が分かりやすく、納得感もあります。
ただし、「クレームが少なくなるように」などの記載から、「顧客満足度を高める」というより、「自分が傷つきたくない・嫌な想いをしたくない」という自分目線が強いようにも感じられてしまうのが少しもったいないです。
読む人によっては、しっかり提案する営業というより、クレームを恐れて弱腰でお人よしになっている営業という印象を受ける可能性もあるので、言葉選びは再考しましょう。
読み手への配慮(No.6)については、転職理由で言わんとすることはわかりますが、少し現職への不満・批判が強いように感じられます。このままでは第三者が見た時に「自分の行動量、提案量が足りないことを棚に上げて、会社方針を批判する人なのかな」と誤解されかねません。
エピソードは同じでも良いので、現職への不満要素を減らし、本当はできるけど今は目指す方向を変えたので、成果が今は出てないという書き方に変更する方が良いでしょう。
【改善後】アドバイスをもとに作り直した職務経歴書


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<改善ポイント>
成果出なかったことは年収を見ればある程度推測できるので、下手に隠す必要はありませんが、行動目標の未達率など、自分に不利になるような社内指標まであえて入れる必要はありません。それよりも、自分なりに何をどう工夫したのかをより具体的に書いていくと良いでしょう。
Kさんの場合は、顧客満足度を高めるために何を行なったか、どうしてそれに取り組もうと思ったのか、その結果どんな成果が得られたかなどです。
より信憑生を持たせるためには、社内で重視されていない指標でも、自分をアピールできるもの(顧客アンケート結果、顧客からの紹介数の多さ、低いクレーム率、成約単価の高さなど)がある場合には躊躇せずに記入することをオススメします。
また、企業は愚痴ではなく、転職者は何ができるか、何がしたいかを知りたいのだということを前提にして作成するだけでも、今とは違った印象の職務経歴書が作成できると思います。
現職への批判的な気持ちは一度押しやり、現職で活躍できなかった理由は、転職背景とどういうことを目指しているのかを踏まえ、「転職背景・今後目指すキャリア」として前向きな気持ちで書くことで、より魅力的な内容になるでしょう。
(まとめ)前職・現職に対してネガティブな気持ちがある場合の職歴書の書き方ポイント
- 会社への不満(体制、給与など)は第三者が共感できるか分からないので、批判は抑える
- 「会社の〜が嫌だ」ではなく「自分は〜したい」とポジティブに言い換える
- 自分が目指すもの(営業スタイルなど)がある場合は、転職理由や自己PRに書く
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