転職回数が多く、一貫性が見えない職務経歴書を改善【職歴書添削】
転職回数が多く、各社での経歴を網羅するだけで職務経歴書のページが埋まってしまいキャリアの一貫性を表現できないと悩むSさん。
組織人事コンサルタントの粟野友樹さんが、全6項目の評価ポイントに沿って、職務経歴書を評価・講評し、改善まで導きます。
目次
【改善前】異業界への転職が多く、転職意図をアピールしづらい (添削希望者:Sさん)
<Sさんの職務経歴書についての悩み>
- 経験社数が多く、それぞれについて網羅するだけでページが埋まり、詳細なアピールができない
- 異業界への転職を繰り返しているので、自分なりの転職意図が見えづらい
- キャリアの一貫性がないジョブホッパーに見えそうで心配
<Sさんのこれまでのキャリア>
- 1社目(新卒):飲食業界へ入社(1年勤務)
- 2社目:顧客に喜んでもらうことのやりがいを感じ、より顧客接点の多いホテル業界へ転職(1年半勤務)
- 3社目:人生最大の喜びの瞬間に携わりたいと考えブライダル業界へ転職(4年勤務)
- 4社目(現在):業界不振で事業売却の動きがある中、営業成績を見込まれて保険会社へ誘われ転職(1年勤務)
【転職意向】業界不振のタイミングで転職したものの、やはりブライダル事業が最もやりがいのある仕事だと感じており、再度ブライダル業界への転職を希望している
<添削前:Sさんが作成した職務経歴書>
【評価&講評】大きなマイナスはないが、具体性・独自性・一貫性を読み取りづらくなっている
<アドバイザーからの全体講評>
基本的な項目は抑えられており、担当業務は羅列ではあるものの細かく記載してあり、丁寧に作成したことが伺える職務経歴書です。そう言った意味では大きなマイナスはありません。このまま企業に提出しても悪くないと言えば悪くありません。
ただし、職務内容などは網羅されていますが、具体性と独自性に欠けているため、Sさんの人柄や経験・キャリアの志向性が読みとりづらくなっています。
応募者数が多い企業や人事担当者が忙しい企業などでは、1つ1つの職務経歴書をじっくり読み込む時間が少ないケースもあるため、サラッと読んだだけでも、キャリアの意図やスキルをアピールができる職務経歴書にするには、更なる工夫が必要でしょう。
<評価基準と結果>
No | チェック項目 | ポイント | 評価 |
---|---|---|---|
基本的なビジネススキルを確認 | |||
1 | 基本項目 | 必要な項目が記載されているか。 | ◯ |
2 | フォーマット | 見やすい体裁になっているか。誤字脱字はないか | ◯ |
自社とのマッチ度・定着性を確認 | |||
3 | 業務内容・実績・経験スキル・自己PR・資格・性格 | 具体的な情報が、記載されているか。情報に信憑性や比較性があるか。 | △ |
4 | 第三者に伝わるように端的にまとめられているか。 | △ | |
+αの評価 | |||
5 | 一貫性・テーマ性 | 職務経歴書を読んだだけで、「この人はこういう仕事をする人だな」といった仕事のスタイルや価値観が伝わるか。 | △ |
6 | 読み手への配慮 | 企業が知りたいことを先回りして記載しているか。 例:その企業向けの志望動機、貢献できること、懸念されるであろう点の払拭など。 | × |
基本項目とフォーマットについての評価
基本的なビジネススキルを確認する項目(No1、No2)に関しては、モレなく記載されています。また、経歴についても体裁面(フォーマット)では見やすく記載されているのが良いと思います。
経験社数が多いので、冒頭に職務要約や略歴を入れると、より分かりやすくなるでしょう。
業務内容・実績・経験スキル・自己PR・資格・性格などについての評価
企業が、自社とのマッチ度・定着性を確認するために確認している項目(No3、No4)に関しては、担当業務等は詳細に記載されていますが、単に担当した業務を羅列しただだけになってしまっているのが少し残念ですね。
この職務経歴書だけでは、Sさんについて「顧客対応を大切にしていて、顧客志向が高い方だろうな」という想像はできますが、具体的な事例・エピソード等がなく、一般的な内容に終始しているため、アピールが弱くなってしまい印象に残りづらいかもしれません。
業務をどのように行っていたのか、どう創意工夫したのか等が分かるようにすると良いでしょう。記載するスペースを確保するために、担当業務は、網羅せずにメインの業務に絞って記載するのも一つの手です。
一貫性・テーマ性、読み手への配慮についての評価
+αの評価項目関する、一貫性・テーマ性(No5)については4社で一貫して個人向けの接客販売をしているので、「個人向けの仕事が合っているのだろうな」「対個人の折衝に関しては即戦力性が高そうだ」という想像まではできるのですが、全体を通して具体的な情報が少ないので、独自性・特徴が見えずに的確な評価をしづらいのが少し残念です。
Sさんがどういった仕事をするのか、入社後にどんな場面でどんな風に活躍してくれそうかを企業側がイメージできるように情報を組み込むと良いでしょう。それは、読み手への配慮(No.6)にも繋がります。
自分が転職後に貢献できることに加えて、これまでの転職で業界が変わっている意図や背景を伝えることも大切です。
職歴をそのまま記載するだけでは、過去の転職においてSさんが大切にしていた価値観などを読み取りづらく、「もしかして飽きっぽいのかな」「うちに入社してもまたすぐに転職してしまうかも」と言った懸念を持たれかねません。それぞれの職歴では転職理由を追記し、今回の転職の背景などが伝わるような自己PRを作成するとより良いでしょう。
【改善後】アドバイスをもとに作り直した職務経歴書
改善コメント付きの職務経歴書をダウンロードする改善コメント付きの職務経歴書をダウンロードする
<改善ポイント>
今回のように転職回数が多い場合は、職務経歴書の前半に、これまでのキャリアを簡単にまとめた略歴と、それぞれを通して培った強み(自己PR)を記載すると良いでしょう。
これらを最初に読んでもらうことで、キャリアの志向性と得意なことを印象付けた上で、詳細な職務経歴を読んでもらうことができます。
それにより、「転職を繰り返していて、何が好きで何が得意か分かりづらい」という印象から、「こんなことを考えて、身につけてきた人なら、自社ではこういう点で活躍してくれるかもしれない」とポジティブなイメージをつけてもらいやすくなります。
自己PRは、改善前のような表面的な内容ではなく、今回のように具体的な行動内容やエピソードを盛り込むとより良いでしょう。
エピソードは第三者にも伝わりやすくするために、STARフレームを意識して「どんな場面で、どのような課題のために、何をして、こんな成果を出した」というふうに整理していくとわかりやすくまとまります。
・Situation=状況
・Task=課題
・Action=アクション
・Result=結果
また、企業担当者に、より入社後の活躍イメージを持ってもらうためにも、業務内容は、単にやっていたことの羅列ではなく、プロセスのごとに分類して、その上でのメイン業務を記入しましょう。
自分が一番アピールしたい企業の経歴を多めに記載してメリハリをつけるのも一つの手です。ここを端的まとめることで、実績や創意工夫をアピールするスペースが生まれます。
以前の職務経歴書では「実績なし」としていた部分は、「実績・創意工夫した点」という項目に変更したことで、Sさんの独自性をアピールすることができました。
職務経歴書では、表彰経験だけに目を向けて「実績なし」と記載してしまうと、面接で深掘りしてもらいたいエピソードをアピールチャンスが減ってしまい、企業側から好印象を引き出すチャンスが減ってしまいます。
場合によっては、「この人はパフォーマンスを出せない、成果に執着がない人かもしれない」「志望意欲や思考力が高くない(深堀できない・相手の受け止め方をイメージできない)」などのネガティブな印象を与えかねません。
各社で表彰された実績等がない場合にも、今回の改善後の職務経歴書のように、行動目標の達成やアポ取得率、顧客満足度、自分で考えて社内に共有した取り組みなど、何かしらの成果や工夫点を記載するようにしましょう。
(まとめ)転職回数が多く一貫性を表現しづらい職歴書の書き方ポイント
- 最初に略歴をまとめて自分なりの一貫性を表現する
- キャリアを通じて培った強み(自己PR)を前半に記載し、転職経験をポジティブに表現
- 自分が最もアピールしたい企業での具体的なエピソードを略歴や自己PRに盛り込む
- 面接で聞かれそうな部分や懸念点は予め記載しておく
- 自分なりにキャリアの志向性を伝えるために退職理由・転職意図を書いておく
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