給与明細の見方と「手取り額」の目安
会社から支払われる給料は、額面すべてが支給されるわけではありません。社会保険料や税金などの各種控除額が差し引かれて、差引の支給額が「手取り額」として支給されます。
では、手取り額はどのように計算されているのでしょうか。給与明細の見方と手取り額の目安についてご説明します。
アドバイザー
税理士 片田絵理税理士事務所代表 片田 絵理
1994年に会計事務所に入社、同年に税理士試験5科目に合格。その後、所属税理士として税理士業務に携わり、2017年に独立し税理士事務所を開業、現在に至る。
給与明細の見方と手取り額の目安
給与明細の項目は大きく「支給」と「控除」に分かれており、給料の総支給額から控除項目の合計額を差し引いた金額が、「差引支給額」として従業員に支払われます。
給与明細の見方
企業によって形式や項目は異なりますが、「勤怠」「支給」「控除」が記載されており、総支給額と控除額、差引支給額が分かるようになっています。
手取り額の計算方法
手取り額は、基本給や各種手当を合計した「総支給額」から、社会保険料や税金などを合計した「控除額」を差し引いた額が「差引支給額」となります。この「差引支給額」が手取り額と呼ばれています。一般的に、総支給額の7~80%が手取り額の目安ですが、年収1400万円を超えると70%以下になるケースが出始めます。
【支給】の内訳
各種手当などの支給項目は、会社の就業規則や賃金規程などによって規定されています。【1】【2】【3】【4】の合計額がその月の給料の総支給額となります。
【2】手当(役職手当、家族手当、住宅手当、資格手当など)
【3】時間外(残業)手当
【4】通勤手当
【控除】の内訳
健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料、雇用保険料をあわせて「社会保険料」と呼んでいます。また、所得税や住民税も控除に含まれます。
社会保険料
健康保険料、介護保険料
会社の健康保険組合や協会けんぽなどの健康保険制度の被保険者である従業員については、給料から健康保険料が控除されます。40歳になると介護保険の被保険者となるため、健康保険料とあわせて介護保険料も負担することになります。
この健康保険料・介護保険料は、年一回改定される標準報酬月額を基に計算した保険料額を、従業員と会社とが2分の1ずつ負担することになっています。
厚生年金保険料
厚生年金保険の適用となる会社の従業員は、給料から厚生年金保険料が控除されます。
厚生年金保険料は、年一回改定される標準報酬月額に18.3%の料率で計算した保険料額を、従業員と会社とが2分の1ずつ負担することになっています。
ただし、昇給や降給で大きく給料が変動した場合は、改定時期でなくても標準報酬月額が改定され、保険料が変更になる場合があります。
雇用保険料
雇用保険の被保険者である従業員については、その月の給料の総支給額に応じた雇用保険料が給料から控除されます。雇用保険料も従業員と会社とが一定割合ずつ負担することになっています。
所得税
毎月の給料計算を行う場合の所得税の計算は、「源泉徴収税額表」を使用して計算することになっています。給与の総支給金額に応じ、扶養親族等の数別に税額が決められて一覧表になっています。
算出方法は、まず、給料の総支給額から、非課税の通勤手当(※)を控除した金額から、社会保険料の額を控除した金額を計算します。この金額に対して、「扶養控除等申告書」が出されているか、出されていれば扶養親族等の人数は何人かを判定して、源泉徴収税額表を参照してその月の所得税額を計算します。
※通勤手当については通勤方法や距離に応じて非課税限度額が決まっており、その限度額以内の金額には所得税がかかりません。
給料から引かれる税金の種類と計算方法
住民税
毎年5月頃に前年の所得金額に応じて計算された住民税額が会社を通じて従業員に通知されます。その通知された住民税は6月から翌年5月までの12回に分割し、会社が毎月の住民税額を給料から天引きします。
その他
法律で定められた控除項目以外に、会社の規定により「財形貯蓄」や「積立金」などが控除されることがあります。
年収別・手取り額シミュレーション
30代独身者の場合の、年収別の手取り額の目安をご紹介します。
所得税は「超過累進税率方式」となるため、年収が高くなると、所得税の税率が5%から45%まで、7段階に高くなっていきます。
住民税の所得割は税率が10%で一定のため(自治体によって異なる場合があります)、年収の少ない人は住民税の負担が多く、年収が高くなるにつれて、所得税の負担の方が増えていきます。
年収400万円の場合
社会保険料 587,280円
所得税 86,300円
住民税 176,700円
差引手取額 3,149,720円(年収の約78%)
年収700万円の場合
社会保険料 1,019,280円
所得税 319,200円
住民税 377,500円
差引手取額 5,284,020円(年収の約75%)
年収1000万円の場合
社会保険料 1,203,780円
所得税 832,800円
住民税 629,100円
差引手取額 7,334,320円(年収の約73%)
年収が1000万円を超える場合
年収が1000万円を超えると、給与所得の金額を計算する際に、経費の代わりに控除されている「給与所得控除額」が上限の220万円までしか控除できないために、税負担が増えます。また、年収が1220万円を超えると、配偶者を扶養している場合であっても、配偶者控除の適用がなくなるために、税負担が増えます。
会社によって給与の内訳は異なりますが、控除額を構成する社会保険料や所得税、住民税をどれだけ支払っているのか把握しておくと、転職活動でも手取り額をイメージしやすくなります。給料明細は、総支給額と手取り額だけでなく、内訳もしっかりチェックしておきましょう。
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