「リファラル採用」とは?知人の紹介で転職するメリットや注意点についても解説

「リファラル採用」の声がけを友人から受けたら、自分を評価してくれた喜びとともに、実際に検討する人もいるでしょう。
ただ、「リファラル採用」についてよく理解していないと失敗してしまうケースもあります。
メリットや注意点、成功につなげるポイント、事例など、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏が解説します。
目次
リファラル採用とは
リファラル採用とは、企業に所属している社員が、自社にフィットしそうな人材を自分の友人・知人の中から紹介し、自社の採用選考につなげる、という採用手法の一つです。
企業にとっては、潜在的な転職希望者と自社の接点を作ることができるとともに、社員によるスクリーニングでスキルや企業カルチャーがフィットした人材を確保でき、採用コストを下げられるというメリットがあります。
また、リファラル採用で転職する求職者にとっても、
- 一般の転職支援サービスでは検索できない・紹介されない企業と接点を持てる
- 紹介者(社員)が採用担当者にアピールポイントを交えて推薦してくれる
という点で、転職サイトや転職エージェントを活用した転職方法よりも選考が有利に働く可能性があります。
場合によっては、自分では想定していなかった企業・キャリアとの出会いが期待できる採用方法、とも言えるでしょう。
企業と求職者の双方にこうしたメリットがあるため、近年リファラル採用は浸透してきています。
似たような採用方法に「縁故採用」がありますが、こちらは「採用前提の向きが強い」「正式な採用フローを経ない」などの違いがあり、いわゆる“コネ”採用にあたります。
この方法では、人柄には問題がなくても実績やスキルが伴わず、ミスマッチが生じやすいことが問題とされてきました。これも、リファラル採用が注目される一因と考えられます。
リファラル採用のメリット
リファラル採用での転職は、応募者側にとって具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
仕事、働き方、環境、労働時間、人事制度などの実態がわかるのでミスマッチが防げる
リファラル採用でも、ミスマッチが起こらないわけではありません。そこで重要なのが、事前の情報収集です。
リファラル採用の場合、応募者は、面識のない採用担当者には事前に聞きづらいようなことも、紹介者を通して確認することができます。
この時点で、仕事の内容・働き方・職場環境(リモートワークの導入具合など)・人事制度(評価の基準・方法など)についてリアルな実態を把握できることは、大きなメリットと言えます。
また、面接に進んだ場合も、社員の紹介で臨んでいる立場上、一般選考ほど構えることなく質問ができるでしょう。
応募者からの問いには、企業や紹介者も、より誠意をもって、正確な情報を伝えようとします。
企業にとっては、応募者は自社の社員の知人・友人ですから、社員の信頼を損なわないためにも誠実に対応しますし、紹介者も、自分の知人・友人との関係性を大切に考え、率直に職場の実態を教えてくれるはずです。
こうしてそれぞれ既存の信頼関係がある上でオープンに誠実に対応しようとするため、情報の齟齬が少なくなり、ミスマッチを防ぐことができます。
社員が満足している会社に転職できる
一般的に、自分の会社が他社と差別化できず、これといった魅力がなければ、社員が大事な友人を誘うことは難しいものです。
働き方やカルチャー、上司や同僚など、仕事内容プラスアルファの要素に魅力を感じ満足している会社だからこそ、紹介したいと思えるのです。
社員(紹介者)のこのお墨付きがあれば、全く知らない企業に転職するよりも安心感があります。
満足しているポイントを具体的に教えてもらい、その点に共感できるかどうかで、自分に合っているか判断していくことも可能です。
選考がスムースに進む
紹介者は、応募者の仕事ぶりや価値観、人物タイプをある程度把握した上で自分の会社に合っていると判断しています。
つまり、紹介者が応募者と企業のマッチングをしてくれているため、フィット感が高い状態で面接を進めることができます。
また、企業側でも紹介者の推薦が一つの評価ポイントになるため、選考自体がスムースに進みやすくなることが多いでしょう。
リファラル採用の注意点
リファラル採用は今後も注目されるであろう採用方法の一つですが、メリットがある一方で、注意しておきたい点もあります。
よく分かっていないまま話を進めてしまうと思わぬトラブルにつながりかねないため、下記について必ず確認しておきましょう。
リファラル採用といえども採用されないこともある
リファラル採用では、多くのケースで書類や面接など一般の選考フローが設けられます。そのため、企業側が求める条件に明らかにマッチしない場合は、採用が見送られることも珍しくありません。
声をかけられたからといって採用が確約されているものではない、ということを前提に、通常の転職活動と同様、入念な転職準備が必要です。
特に、企業研究が不十分なために「志望動機」が曖昧になってしまい、失敗するケースを見かけます。
リファラル採用に臨むときこそ業界や企業を知ることは重要だと考え、事前リサーチを丁寧に行いましょう。
選考に進む際や入社後にはこんなトラブルも
紹介者を通して選考に進んだ場合や入社した後、ミスマッチに気づいたとしても、選考辞退や退職をすることで紹介者に迷惑をかけると思うと、簡単には動けない…という相談を受けることがあります。
これは特に、自発的に転職活動を始めず、紹介されたために選考に進んだ人に多く見られます。
前職の上司など、影響力が強い人からの紹介で断れずに面接を受けてしまい、選考は進むものの、本音では転職を希望していない場合などもあるようです。
いずれにしても、紹介者との関係に影響が出てしまうような事態は避けたいもの。やはり情報収集や志望動機など、ひと通りの転職準備が必要だということを理解しておきましょう。
リファラル採用での転職を成功させるポイント
リファラル採用が通常の採用方法よりもフラットな関係で進められるとはいえ、転職活動に真摯に向き合い、本当に自分が行きたい企業であるかどうかを見定めていくことが必要です。
ここでは、リファラル採用を成功させるためのポイントについて解説していきます。
通常の転職と同様に志望動機をしっかり準備する
書類や面接では、当然ながら「紹介されたから」という志望動機は成り立ちません。
企業側は、一般・リファラル採用に関わらず、応募者の「関心度」や「選考への本気度」を知りたいと考えています。
ですから、通常の転職活動と同様に、
- 応募をしようと思ったきっかけ
- 企業に対して特に興味を持ったところ
- 自分の力をどう生かしていきたいか
- 入社後にはどういうことを実現していきたいか
について明確に答えられるよう、しっかり準備しておきましょう。
主体的に懸念点を確認する
紹介者が応募者の過去の経験を考慮して紹介してくれていても、「友人にとっていい会社=自分にとっていい会社」とは言い切れない場合があります。
紹介者からの情報をうのみにしてしまい、自分が気になる点や自分の場合はどうなるのかという点を確認できないと、ミスマッチを招く可能性があります。
例えば、紹介者からは、残業は負担にならない程度と聞いていたものの、実際には想像以上に残業時間が多く、負担に感じた、ということがあります。
その他にも、
- 紹介者(友人)とはライフステージが異なっているため、ワーク・ライフ・バランスの点で不満が生じた
- 大手企業経験者が、スタートアップ企業にリファラル採用経由で転職したら、求められる姿勢やスピード感が大きく異なり戸惑った
- 紹介者(友人・知人)がその後昇進して自分との格差ができ、関係性が微妙になった上に仕事がやりづらくなった
- 「◯◯さんの紹介」ということで期待値があまりにも高く、最初からハイレベルな成果を求められてストレスになった
などのように、紹介者の情報だけでは窺い知れないことがあります。
自分が担当する業務内容や職場に関する懸念点は、自分からあらかじめ積極的に確認しましょう。
このように確認を繰り返した結果、もし合わないと判断したのであれば、なるべく早い段階で意志を伝えた方が企業や紹介者も納得しやすいでしょう。
能力への期待値の高さを確認する
紹介された以上は、期待されるパフォーマンスを発揮しなければならないと考えるものです。それがモチベーションになり、よい成果へつながる場合はいいのですが、転職先ですぐにパフォーマンスを発揮できない場合、焦って余計に成果につながらなくなる場合もあります。
例えば、大手企業にいた方が、スタートアップベンチャーに紹介者を通して転職した際、会社の事業フェーズによっては、以前の企業での優秀さがすぐに発揮できないこともあります。
転職先の「もっとできると期待していたのに」という期待値とのギャップが生じ、本人も焦り、本来の力が発揮できなくなってしまうのです。
そうならないためにも、面談や面接、紹介者との対話で、具体的に対応できる業務内容を伝え、任される仕事内容を確認し、期待値調整をしていくことが大切です。
他社ともよく比較し検討する
転職活動は、転職市場で自分がどのように評価をされるのか確認し、視野を広げるチャンスでもあります。
まずは紹介を受けた企業情報を自らリサーチすること。それと同時に、改めて転職サイトをみたり、転職エージェントで話を聞いたりするなどして、同業他社についても調べてみてください。
すると、実はさまざまな選択肢があったことに気づき、「もっといろんな企業へ応募してみればよかった」と新たな気づきを得られることがあります。
紹介を受ける際は、本当に転職を考えるタイミングなのか、ほかの企業を検討しなくてもよいかという点も踏まえて、慎重に検討を重ねましょう。
どうやって転職した?リファラル採用事例
ここでは、実際にリファラル採用で転職した方のエピソードをご紹介します。
【ケース1】応募先企業のリサーチを念入りに行った上で転職
AさんはSIerでWebエンジニアとして働いていましたが、客先常駐の仕事が多く、一貫したキャリアを身につけられないことや、客先では柔軟な働き方ができないことに限界を感じて転職を検討するようになりました。そんな矢先、過去に別会社で一緒に働いていたBさんから「うちで働かないか?」と連絡があったそうです。 当時、Bさんとは会社を超えて様々なことを相談したり話し合ったりしていたため、彼の人柄や、彼との仕事のしやすさは十分に把握していたAさん。早速Bさんの話に耳を傾けます。 すると、Bさんの在籍している企業が社内SEの採用を検討しているとのことでした。Bさんは転職サイトや転職エージェントの利用も検討していたそうですが、まずはBさんの人脈から信頼できる人材をリストアップ。その際にAさんのことを思い出し、連絡をしたというわけです。 Bさんに会って具体的な仕事内容や社風、制度などを確認したところ、Aさんは働く環境は悪くなさそうと判断しました。「少数精鋭で自社のIT部門を強化する」という点も魅力のひとつだったそうです。 応募意欲を伝えると、すぐに一次面接がセッティングされ、人事の方から企業概要や人事制度などについて説明を受けます。二次面接にも進み、その後すぐに内定をもらうことができました。 Aさんにこの経験を振り返ってもらうと、「他の企業を検討することに関しては不足だったかもしれない」とのこと。ただ、「入社後の困り事はBさんに気軽に相談できるので、入社後のギャップはとても少ない」と感じているそうです。 |
【ケース2】リファラル採用と転職サイト・エージェントを併用し転職
Cさんは編集デスクとして働いていた頃、外部イベントで出版社に勤めるDさんと知り合いました。そこでDさんから「新規プロジェクトに参加してくれる人材を探している」と聞きましたが、当時は転職する気がなく、自分ごととは思っていなかったそうです。 ところがその後、Cさんは仕事でストレスを抱えるようになり、転職を思い立ってDさんに連絡。すると、まだ人材を探しているとのことだったので、Cさんはさっそく応募書類を作成し送りました。 また、不合格の可能性や選択肢を広げることを考え、転職エージェントや転職サイトにも登録し、求人を探し始めます。 Dさんの紹介で応募しているので、「誠意を見せなければ」とスピーディな対応を心掛けた結果、Dさんの企業の選考が想像以上に早く進んでいきます。 最終的に数社の内定が出て、CさんはDさんの会社に決めました。Dさんから新プロジェクトの話を詳しく聞いていたので、志望度が高まっていたのが大きかったと言います。 Cさんにあらためて振り返ってもらうと、「結果的にリファラル採用で転職先が決まったが、リファラル採用だからといって確実に合格するとは限らないため、できるだけ転職サイト・転職エージェントなどを組み合わせて、選択肢を増やしておいた方がよい」と感じたそうです。 |
リファラル採用を希望する場合、普段から意識しておきたいことは?
リファラル採用のチャンスを広げるために、普段から意識しておきたいことを3つご紹介します。
仕事で分かりやすい実績を出しておく
これはリファラル採用に限りませんが、転職活動を有利に進めるためには、応募企業にアピールできる実績を日頃から出しておくことが重要です。
特にリファラル採用においては、紹介者が所属企業の採用担当者に推薦する際に、人物像や経歴を伝えなくてはなりません。
「若手10名の新規営業チームを指揮し、顧客数を4倍にした営業リーダー」「プロダクトマネジャーとして3年でユーザーを5倍にした立役者」などの実績があると、紹介者にとって好材料となり、声をかけやすくなります。
社内外の人とつながる機会を作る
リファラル採用の候補として最も推薦されやすいのは、上司・同僚・部下・後輩など、過去に何らかの形で一緒に働いたことのある人です。
全員とまんべんなく関わりを持つことは難しいので、「価値観が合う」「尊敬できる」と感じている人に対しては、会社を辞めた後もつながりを維持するようにしましょう。
また、同じ企業に所属していなくても、勉強会やコミュニティ活動、複数社で成り立つプロジェクトに参加するなどして、普段から社外の人とも接触する機会を作っておくことが大切です。
なかには副業として知人の会社を手伝っているうちに、転職を誘われるケースもあるようです。
日ごろから価値観や近況を共有・発信する
日ごろからアンテナを高く張り、SNSなどで価値観や近況を共有・発信するのもひとつの方法です。
「△△分野は××がトレンドだが、今後は○○領域に進出していくのではないか」「○○の業務において大切なのは、××と▲▲の姿勢だと考えている」など、自身が考えていることや取り組んでいること、興味分野などを積極的に発信してみましょう。
「その知見を自社で生かしてもらえないか」「○○を強化する予定なので参加してみないか」など、SNSがリファラル採用のきっかけになるかもしれません。
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