仕事のストレス、どう向き合えばいい?
仕事にストレスを感じつつも、どう解消すればいいかわからず溜め込んでしまう人も多いようです。仕事のストレスには、どのように向き合えばいいのでしょうか?
人事歴20年超、現在は人事領域支援会社を経営する「人事のプロ」曽和利光さんにアドバイスをいただきました。
アドバイザー
株式会社人材研究所・代表取締役社長
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略』(講談社)など著書多数。
別のストレスを、「仕事によるもの」と誤って認識している可能性もある
「仕事にストレスを感じる」という人は少なくありませんが、ストレスとの向き合い方についてお話しする前に、まず「本当にそのストレスは、仕事によるものなのか?」を考えてみることをお勧めします。
これまでに3社の人事を経験し、独立後は人事コンサルタントとしてさまざまな企業の社員に不安や不満をヒアリングしてきましたが、「仕事のストレス」と思っているものの中には、実は仕事が原因ではなく、プライベートもしくはフィジカルの問題であるケースが少なくないのです。例えば、介護や育児のストレス、お金の不安、暴飲暴食や運動不足による体調の悪さ、などです。
不安やイライラを感じたとき、人は本能的に「原因特定」をしますが、その際に対象になりやすいのが日常的に関わっている仕事や上司、同僚です。しかし、そのうちの一定数は「誤帰属」(誤った帰属=真の原因ではないものを原因として捉えている状態)の可能性があります。
誤帰属自体は珍しいことではありませんが、問題は「ストレスの対象と思い込んでいるものを、何らかの方法で解消したからといって、原因はほかにあるため根本のストレスは変わらない」という点。そしてまた別の要因を「誤帰属」として原因扱いし、しかしストレスは解消されず…という悪循環に陥ってしまう恐れがあります。
そのため、ストレスを感じたら「仕事が原因かどうか」をまず考えてみることから始めましょう。もしプライベートやフィジカルに原因がありそうだったら、そのストレスと向き合い、軽減する策を考えてみましょう。
ちなみに、人は必ずしも、辛いことばかりをストレスと感じるわけではなく、一見いいと思われることにもストレスを感じます。昇進したことで責任が増えたことにストレスを感じる人もいれば、希望通りの部署に栄転できたけれど新しい組織になじめるか不安を覚える人もいます。人が新しい環境に移るときは、どんなに好条件であってもストレスを感じるものであり、これが誤帰属を招きやすい一つの要因でもあります。
ストレスの原因となる「適性」を見極めよう
自身と向き合い原因を考えた結果、本当に「仕事がストレス」という場合もあるでしょう。この場合の根本的な原因は、仕事そのものではなく「適性」にあります。「適性」には「勤務先の文化や人との適性」と「仕事に対する適性」の2つがあります。
そして多くの場合、「人との適性」に原因があります。欧米などに比べてスペシャリスト志向の人が少ないことなどから、日本では最終的に「人」で入社を決める傾向があります。「何をやるか」より「誰とやるか」を重視する分、人で悩み、ストレスに感じる人が多いのです。「人との適性」が原因の場合、考えられる対処法は2つあります。
まず行ってほしい対処法は、「相手の特性を理解する」ことです。
相手のことを理解できていないと、「あの人こんなことを言うのは私のことが嫌だから」と誤帰属し、相手へのイライラが募り、ストレスが溜まってしまいます。
一方で、現状を客観的に捉え知性的に相手を理解すれば、相手の言動が理解できるようになります。これを心理学用語で「知性化」と言いますが、例えば、「この人がきついことを言うのは嫌悪感からではなく、相手への期待感からなんだ」などと解釈が変わり、自然と腹が立たなくなり、ストレスも軽減されます。ちなみに、この「知性化」はあらゆるストレスマネジメントに活用できますので、覚えておくと役に立ちます。
「知性化してもストレスが続く」という場合は、相性が合う人がいる部門に異動願いを出すか、転職をするという対処法になります。ただ、異動や転職の際には「自分はどういうタイプの人のもとで、どういうタイプの同僚たちと働きたいのか」をじっくり考え、明らかにする必要があります。ここで「誤帰属」してしまうと、異動先・転職先でも似たようなストレスを感じて悩むことになるからです。
「仕事に対する適性」が原因の場合も、本当に適性のある仕事は何か、自分と向き合い明らかにしたうえで、異動願いや転職活動をするという対処法になります。自身の経験を振り返り、どんな時にやりがいを感じたのかを棚卸ししたうえで、やりたいことを洗い出していきましょう。
――誤帰属したまま異動や転職をしてしまい、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、ストレスの根本がどこにあるのかじっくり向き合い、今の環境を飛び出して本当にいいのか、冷静に考えてみることをお勧めします。
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