異業種転職で失敗するのはどうして?異業種転職の成功・失敗事例
異業種への転職を目指したところ、「書類や面接を突破できない」「転職後にミスマッチが起こった!」といったケースは珍しくありません。
転職活動中の失敗と転職後の失敗、2つの失敗に陥らないためのポイントや、成功・失敗事例について、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに伺いました。
異業種転職では「ゼロリセット」する気持ちが大事
異業種転職の志望理由はさまざまです。「就職活動で叶わなかった憧れの業界に入りたい」という方もいれば、「成長している業界に身を置いて、自分も成長したい」「給与体系がいい会社で、キャリアの幅を広げたい」など、さらなるステップアップを目指す方も多いでしょう。
異業種転職の難しさは、業界によって常識がまったく異なるところです。同じ商品開発職だったとしても、業界が変わり、扱う商材の種類が変われば、開発にかけられる期間や担当する商品の数、プロジェクトに関わる人数などが変わります。仕事に対する評価の軸や部署の雰囲気、そこで働く人のタイプも異なるでしょう。
社内で使用される業界用語や仕事の進め方、スピード感なども一変するため、前職で動いていたように仕事をしても、パフォーマンスを発揮できないケースも生じてきます。異業種転職をする際は、前職での成功体験に固執するのではなく、ゼロリセットするくらいの気持ちで挑みましょう。
異業種への転職で起こり得る失敗を避けるためのポイント
異業種転職でぶつかる壁には、
- そもそも書類選考や面接に通過しない(転職活動中)
- 入社したけれど合わなかった(転職後)
という2つのフェーズがあります。それぞれうまくいかない理由と対策を考えてみましょう。
1.書類選考や面接に通過しない理由と対策
まず、なかなか書類や面接が通らない理由の一つに、「業界への憧れが強く、異業種への転職自体が目的になっている」ことが挙げられます。志望理由を伝える際は、なぜこの業界に転職したいのかだけではなく、なぜこの企業なのか、なぜこの職種なのかを明確にする必要があります。
面接で企業側が知りたいのは、「あなたの経験やスキルが、当社でどう役立つのか」という点です。わざわざ業界をまたいで転職を希望するのですから、「前職で得たキャリアや業務内容を、御社の〇〇の仕事内容に活かすことができる」と、説得力を持った上で説明できなければ、企業側の納得感は得られません。
20代半ばまでの若年層であれば「この業界に入りたい」という熱意とポテンシャルで採用される可能性はなくはありません。しかし、20代後半から30代、40代と年次を重ねていけば、それ相応の即戦力として活躍できるかどうかを問われます。
業界が異なると新たな業界ルールや業界用語などが存在し、仕事の進め方も変わるため、アピールした「価値」があまり伝わらないこともあります。そこで大切なのは、企業側との目線を合わせること。
自身が経験したプロジェクトの期間や規模、目標数字、(開示できる範囲の)固有名詞など、面接担当者が具体的にイメージできる情報をきちんと伝えましょう。達成した仕事の難易度やレベル感を理解してもらえるよう、客観的な事実を盛り込み、共通の認識を持つことが大事です。
企業側がどんな経験を求めているかは、面接で話をしながらすり合わせていくのが一番の近道です。
同じ営業職でも、毎週の売上数字を追うスタイルから、年単位で売り上げをアップさせるスタイルに変わるのであれば、求められる要素は異なります。自分の経験から生かせる点はどこかをまずは探っていきましょう。
2.入社後のミスマッチが起きる理由と対策
入社したものの、社風や仕事内容が合わなかったという場合は、その業界・企業で働く“リアルなイメージ”を転職活動の中で持てていなかった可能性があります。
業界が変わると、働き方をイメージするのが難しい上、「その業界に行きたい」「そのサービスを扱いたい」「その職種にチャレンジしたい」という思いが先立ち、日々の業務の進め方をイメージできずに転職活動を行いがちです。
入社後のミスマッチを起こさないためには、事前にコーポレートサイトや採用サイトをチェックし、業界の情報や仕事内容、求めている人材像や社風などをイメージすること。
そして、企業説明会や面談・面接では、社員の方がどんな人材を求めていて、どんなスキルやコミュニケーションを必要としているのかなどをイメージしながら、気になることは積極的に聞いてみることが大切です。
また面接では、社員の方が何を大事に仕事していて、何が評価されるのかを質問してみるのもよいでしょう。その会社の評価基準を知ることができれば、入社後に求められる役割や振る舞いなどをイメージすることができます。
転職者の異業種転職の成功・失敗事例
実際に転職をした方の成功事例・失敗事例を紹介します。
【成功事例1】SIerの人事総務→ECサイト運営会社の人事総務へ(30代後半・男性Mさん)
Mさんは、IPOの準備経験が豊富な点を強みに、業種をこだわらず転職活動をしていました。企業選びの軸は「裁量権が大きい」ところ。
これまでの経験から、「自由に仕事を任され、その分の責任を負う」働き方が、パフォーマンスを発揮する上で重要だとはっきりしていたので、面接でも企業に対し「こういう働き方をしたい」と伝えていました。
価値観が折り合わずに採用に至らなかった企業もありましたが、Mさんにとって大事な軸をぶらさなかった。だからこそ、入社後のミスマッチもなく、今も活躍されています。
【成功事例2】飲食チェーン店の店舗開拓→インターネット広告の営業へ(20代後半・男性Sさん)
Sさんはもともと起業志向が強い方でした。前職では「新しいビジネスモデルを作るお手伝いをしたい」と店舗開拓を担当していましたが、さらに幅広いビジネスに触れたいと転職を決意。インターネット広告に興味があったというよりも、「お客様のビジネスを伸ばすツール」という観点で仕事内容に魅力を感じたようです。
企業側からは、企業側からは、自ら積極的に営業に従事し、営業指標を作って行動できる点を評価されての採用となりました。なお、現在は海外で事業を立ち上げて活躍されています。
【失敗事例1】大手メーカーの法務→損保の法務へ(40代前半・男性Kさん)
大手メーカーで法務部の課長を務めていたKさん。40歳を迎え、成長業界で自分の経験を生かしたいと、インターネット損保業界に転職しました。転職先企業は創業間もないベンチャーだったので、Kさんの経験・スキルを強く求めていました。
しかし、入社してみると、組織の体制や規模の違いから、仕事の進め方に戸惑うことばかりだったそう。前職の大手メーカーでは、必要な書類やデータ、社内に専門家の助言などをもらえる環境が揃っていましたが、ベンチャーでは体制・環境が整っておらず法務に関する業務以外の雑務に追われる日々。
ビジネス経験の浅い若いメンバーのマネジメントにも苦労し、結局、再び転職を考えることになりました。「実際にどんな働き方をしているのか、入社前にしっかり見るべきだった」と後悔していました。
【失敗事例2】アクセサリーの販売・接客業→宝石の専門商社の購買・仕入れへ(20代後半・女性Yさん)
大好きなアクセサリーを扱う仕事がしたいと、アクセサリーブランドのメーカーに新卒で入社したYさん。
販売・接客業を3年間経験しましたが、休みが不定期なことや給与がなかなか上がらないなどの理由から「今後、店長やエリアマネージャーへとキャリアアップするイメージが持てない」との理由で転職を考え始めました。
企業選びでは「アクセサリーが好き」という軸をぶらさず、宝石を扱う専門商社の購買・仕入れ部門の採用が決まりました。しかし、入社してすぐに「風土が合わない」と実感することに…。転職先は老舗の商社で年功序列のカルチャーが根強く、前職の「若い社員が多くて風通しがよい」雰囲気とはまったく違ったようです。
ご本人は「勤務体系や給与」「仕事内容」を重視して転職しましたが、環境が変わってはじめて「社風」や「周りにいる人」が大切だったのだと気づいたそう。現在、「社風」の軸も重視しながら再び転職活動をしています。
まとめ
異業種転職では、業界への憧れや理想像を描くあまり、「日々の働き方」という視点を見失いがちです。どんな環境で、どんな仕事の進め方ならパフォーマンスを発揮できるのか、これまでのキャリアを振り返りながら、転職活動を進めてほしいと思います。
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