【株式会社博報堂DYデジタル】“endless update”の理念に基づき、人事制度でさえ変えていく
2016年4月に誕生したばかりの博報堂DYデジタル。博報堂DYグループの歴史の中で培われてきたDNAを受け継ぎつつ、「世の中全体のデジタルシフトを推進していくことがわが社のミッション」と語るのは、執行役員で人事戦略本部長・経営計画本部長である湯ノ谷和彦氏だ。同社の中・長期的目標、そしてそれを達成するための人材戦略について詳しくうかがった。
▲株式会社博報堂DYデジタル 執行役員 人事戦略本部本部長・経営計画本部本部長
湯ノ谷 和彦氏
目次
「生活者のデジタルシフト」によりクライアントのニーズが変化
総合広告会社として、さまざまなメディアを使ってクライアントの課題解決や、各媒体社とのビジネスを手がけてきた博報堂DYグループ。しかし生活者のデジタルシフトに伴い、クライアントが求める課題も急速に変化している。そのニーズを受け止め、「博報堂DYグループの中で、デジタル領域の中核を担う」という位置づけで誕生した博報堂DYデジタル。
クライアントのニーズの変化、その一番大きなものは「デジタルを起点としたマーケティング施策全体のオプティマイゼーション(最適化)」だと湯ノ谷氏は語る。
「今は生活者のいろいろな行動をデータとして可視化できるようになりました。それらのデータを元に投資効果を可視化し、マーケティング施策のPDCAを高速で回していく。これまでのように広告を打って終わりというのではなく、むしろ広告を出したところから始まるイメージ。そこを弊社に一本化したことで、いわゆるデジタルマーケティングと呼ばれる領域全般にワンストップで対応でき、よりクオリティの高い提案ができるようになりました」
広告会社としての歴史があり、デジタル×マスメディアという幅広い提案ができる
同社では、クライアントからの課題に応じて、必ずチームで対応する。ただしその編成は同社内だけとは限らない。博報堂、大広、読売広告社の各ブランドエージェンシーはじめ、グループ内各社からのメンバーによる大きなチームになることも珍しくない。
「広告会社としての歴史の中で、オフラインの世界やマスメディアについてはすでに豊富な知見があります。そこに弊社を中心に、デジタル×マスメディア、
デジタル×リアルといったより幅広い発想で提案できるのがグループとしての大きな強みだと思います」
チームを組んで案件に取り組むスタイルは、より多くの生活者の視点で発想していくという、博報堂の『生活者発想』というフィロソフィーに基づいているものだという。
「私がこのグループに入ってずっと言われたのが『ひとりの天才より5人のチーム』というもの。ひとりの天才が考えたものより、5人がチームとして真剣に議論して、ときには喧嘩して、そこから生まれたクリエイティブなアイデアこそ、生活者にとって価値があるものになると考えています」
博報堂には、もうひとつ『パートナー主義』というフィロソフィーがある。責任あるパートナーとしてクライアントと共に語りあい、行動し、そしてクライアントや媒体社と本当の意味でのパートナーシップを持つこと。それが博報堂DYグループのビジネスの原点だ。
「クライアントからも媒体社からもよく言われるのが、『うち以上に、うちの会社のことをよく知っているよね』と。相手のことを考え抜くからケンカもするし議論もする。でもそこから自分たちが納得できるアイデアが生まれる。広告の世界はデジタルの世界同様、結果の数字がすべてというが点ではシビアな左脳的世界ですが、一方で右脳的な発想がなければ、真にクリエイティブで人の心を動かす表現は生まれません。そういう意味で、ものすごくエモーショナルな仕事なのです」
キャリア人材に求めるのは、「外からの目線」と「新たな化学反応」
そんな博報堂DYデジタルの社員数は現在約400名。うち、会社創立後にキャリア採用で加わったメンバーは50名以上と、かなりの比重を占めている。では、その求める人材像とはどのようなものか。そして採用基準は?
「さきほどもお話しした通り、仕事においては常にチームで動いていますが、チームで仕事をするうえで大切なのは、メンバーそれぞれの専門性やバックグラウンドが、いい意味での摩擦を起こし、これまでなかった化学反応を起こすこと。メンバー各自の個性を尊重し、チームビルディングにおいて“粒揃いより粒違い”という考え方を大切にしています。その意味で、キャリア採用の方に期待するのは、スキルや知識以上に、多様な価値観や発想を持ちこんで新しい化学反応を起こしてくれること。実際、特に活躍している方を見ると、“自ら能動的に動いて何かを仕掛けたいと思っている人”という共通項があるように思います。その点は、やはり広告会社として必須のマインドセットかもしれませんね」
実際、これまでのキャリア採用者の前歴はさまざまだ。インターネット専業の広告会社もいれば、クライアントサイドでのマーケティングに従事していた方、コンサルティングやリサーチ会社出身者等々。広告周辺からの人材が多いのは確かだが、必ずしも全員がITの高度な専門知識を持っているというわけではない。
会社も個人も、常に“endless update”
キャリア採用者に対して、湯ノ谷氏が必ず実施していることがある。入社後数ヵ月が経ったところでの面談だ。そこでは同社に入社して良かったことだけでなく、不思議に思うこと、おかしいと思うことも率直に語ってもらうという。
「徐々に弊社にも慣れてきた、とはいえまだ完全には慣れきってはいないタイミングで、外からの視点で発信してもらう。外からの意見をふまえて変えていくべきと思うことをどんどん修正していくことで、私たち自身も“endless update”できるということです」
この“endless update”という言葉は、博報堂DYデジタルが掲げる企業理念でもある。
「会社のロゴの最後に“_(アンダーバー)”がついています。“_”とは次の一語につながる前の空白部分のこと。デジタルの後に、マーケティングやクリエイティブなどが続いて、無限に広がっていくという意味を込めています。そして、私たち自身も常にアップデートしていくという意味での“_”でもあります」
そんな“endless update”を象徴するひとつの試みとして、同社は今年度から新たな人事制度を導入した。「目標管理型」的な評価制度を廃止したというのだ。
「人事評価といえば、期初に目標を立て、半年、1年で振り返る目標管理型が一般的ですが、特にこの業界では変化のスピードが速く、1年も経つとミッションが変わっていたりして、見える風景がまったく違うことも少なくありません。そこで査定で順列をつけるのではなく、ひとりひとりの成長=updateを評価することにしたのです」
もちろんそのためには、評価を下すマネジャーの役割がこれまで以上に重要になる。そこで全マネジャーを一堂に会しての研修を実施。マネジメントについてのスキルアップを図るだけでなく、最終的にはどのような企業文化を築くのか、これまた喧々諤々、喧嘩しながら意識を高めていきたいと言う。
「大きなチャレンジですし、まだ始めたばかりの制度なので、この先もいろいろ変化はあるでしょう。しかし私たち人事部門もPDCAを回しながら、常に“endless update”していきます」
最後に、「長期的には、世界一級のデジタル・リーディングカンパニーを目指したい」とにこやかに語る湯ノ谷氏。その笑顔には、生まれたばかりの会社を育てるチャレンジを恐れない情熱と大胆さが現れているようだった。
記事掲載日:2017年7月6日 WRITING 小野千賀子 PHOTO 朝比奈雄太
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