フレックスタイム制度とは?働き方をわかりやすく解説

少子高齢化に伴う労働人口の減少、働き方の多様化などを背景として、政府は「働き方改革」を推進しています。働き方改革の一環として、2019年4月にフレックスタイム制に関する法改正が行われました。
そこで今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に取材し、フレックスタイム制度の概要や導入実績などついて解説していただきました。
フレックスタイム制とは
フレックスタイム制度を分かりやすく解説すると、あらかじめ設定した総労働時間の中で、仕事の開始と終わりを自分で決められる制度です。
労働時間には、必ず勤務しなければならない「コアタイム」と、自分で決められる「フレキシブルタイム」があり、業務内容や効率性などに合わせて企業が設定することができます。
例えば、通常の労働時間制度だと「朝9時始業、1時間の休憩を挟み、18時終業」のように設定されますが、フレックスタイム制だと「11時から14時がコアタイム、前後はフレキシブルタイムとして各自が自由に始業・就業を決める」など、各自の働きやすさを反映した勤務を実現することができます。
フレックスタイムは最近できた制度というイメージがあるかもしれませんが、歴史は古く、1987年の労働基準法改正を受けて1987年4月に創設された制度です。
2018年の法改正で清算期間の上限を1カ月から3カ月に見直しが行われ、翌年2019年4月に施行されています。
フレックスタイム制度の導入状況
フレックスタイム制度があると、例えば通勤時間をずらして通勤ラッシュの負担を減らしたり、保育園の送り迎えの時間に合わせたりするなど、自分で始業・終業時刻を決めることができます。
そのため、フレックスタイム制度がある企業に転職を希望する方も少なくありません。
そこで、実際に導入・実現している企業の割合をご紹介します。
厚生労働省が発表している「令和5年就労条件総合調査の概況」(※1)によると、フレックスタイム制を導入している企業の割合は、6.8%となっています。
企業規模によっても大きく異なり、従業員1,000人以上の企業では30.7%、300~999人でも17.2%という割合となっています。
一方、フレックスタイム制の適用を受ける労働者の割合は、10.6%と企業の割合より若干高くなっていますが、企業規模別になると1,000人以上の企業では19.1%、300~999人でも9.9%となっています。
規模の大きい企業になると、フレックスタイム制を導入する企業は3割を超しますが、フレックスタイム制を適用できる労働者は2割程度と、企業が制度を導入していたとしても誰もが適用できるとは限らないようです。
(※1)出典:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」>概況(PDF)>第8表 変形労働時間制の有無、種類別採用企業割合, 第9表 変形労働時間制の有無、種類別適用労働者割合
フレックスタイム制度のメリット
フレックスタイム制度には、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
代表的な3つのメリットをご紹介します。
ワークライフバランス向上
フレックスタイム制を活用すると始業・終業の時刻を自由に設定できるため、ワークライフバランスの向上を期待できます。
例えば、通勤ラッシュを避けた始業時刻を設定して通勤の負荷を軽減する、早朝や夕方にランニングやジム通いを取り入れて健康維持を目指すなど、快適で豊かな生活を送ることができるでしょう。
ライフスタイルに合った勤務時間
フレックス制度がない場合は、家族の送り迎えや通院が発生すると、遅刻や早退、半休を取るなどの対応が必要です。
フレックス制度を活用すれば、送り迎えや通院の予定がある日は始業・終業時刻をずらすなど、自分のライフスタイルに合わせた勤務時間を選ぶことができます。
生産性向上
例えば、自分が活動しやすい時間帯に勤務する、オフィスが静かな早朝に始業して集中力を高めるなど、勤務時間を工夫することで生産性を高めることができるでしょう。
また、社内・社外の顧客やパートナーなどとやり取りがしやすい時間帯に勤務することで、待ち時間を減らせるという効果もあります。
フレックスタイム制度のデメリット
自由に始業時刻や就業時刻を設定できるフレックス制度。
いいことずくめのように感じますが、デメリットも考えられます。代表的な3つのデメリットを解説します。
自己管理力が求められる
業務量に波がある仕事の場合、自分のライフスタイルに合わせて勤務時間を設定していると、決められた日時までに業務が終わらなくなる可能性があります。
勤務時間が決まっている場合は職場の同僚に協力を仰ぐこともできるかもしれませんが、フレックスタイム制度の場合は、手伝ってもらえそうな同僚が同時刻に勤務しているとは限りません。
自身の業務量や進捗を管理し、設定した時間で納期に間に合うのかをきちんと確認することが大切です。
スケジュール調整が必要
早朝や夕方以降など一般的な業務時間外で勤務していると、社内外の人との時間が合わず、すぐに日程の調整ができない、電話がつながらないなど、仕事がスムーズに進まなくなる可能性があります。
フレックスタイム制だとしても、立場や役割に応じて相手に合わせたスケジュール調整を心掛けるようにしましょう。
社内のコミュニケーションが減る
従業員一人ひとりが自分の働きやすい時間を選択するため、顔を合わせる機会が減ってしまいます。
特にテレワークを導入している企業の場合は、オンライン会議やチャットなどでの会話が増えるため、雑談を含めた相互理解の機会が減ってしまいます。
フレックスタイム制の職場では、意識的にコミュニケーションの機会を増やすことが重要です。
フレックスタイム制度を導入している企業に転職する際の注意点
フレックスタイム制を導入している企業に転職を希望する場合は、以下のポイントに従って、運用実態を確認しておきましょう。
勤務実態を確認する
面接では、配属される職場で具体的にどのような制度の使われ方をしているのか確認しておきましょう。
会社としてはフレックスタイム制を設けていても、部署によって運用方法が異なり、朝礼などの実施や他部署や社外からの問い合わせに対応するために勤務時間を調整しているケースもあります。
入社して「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないために、勤務実態は確認しておきましょう。
コミュニケーション方法を聞く
社内のメンバーとどのようにコミュニケーションを取っているのか聞いておくのも有効です。
入社後は慣れないことが多く、コミュニケーションの機会が少ない職場では質問しにくいため、独り立ちまでに時間がかかってしまう可能性があります。
フレックスタイム制でもコミュニケーションしやすい方法を採用している職場であれば、入社後も積極的に周囲に関わり早期に成果を上げることができるでしょう。
面接での質問の仕方に配慮する
面接で具体的な仕事内容の確認をする前に、制度のことばかりを聞いてしまうと、採用担当者は「フレックス制度の企業であればどこでもいいのでは」「志望意欲が低いのではないか」という懸念を抱くかもしれません。
自分の望む働き方を実現するために制度を確認するのは大切なことですが、肝心の仕事内容や組織体制などの説明を聞いてから、フレックス制の概要や実態について確認するようにしましょう。
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