転職先の人事評価基準を知るには?

「評価されたい」「年収を上げたい」「昇進したい」などの理由から、転職先の人事評価基準を知りたい人も多いでしょう。ここでは、人事評価制度とその基準について知る方法を紹介。
どう質問すれば、欲しい情報が引き出せるのかといったコツも含めて、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんが解説します。
前提として、人事制度は3つの制度から構成されている
転職にあたって「自分が評価されやすい組織かどうか知りたい」「どんな成果をあげれば、昇進できるのか基準を知りたい」という人もいるでしょう。
これらの詳細について解説する前に、まずは、人事制度について簡単に解説します。
そもそも人事制度とは、個人の嗜好に左右されずに、一貫性をもって人材管理を行うための基準や運営の仕組みのことです。
そして、この人事制度は、主に以下の3つの制度によって成り立っています。
1. 等級制度 2. 報酬制度 3. 評価制度 |
1. 等級制度
能力や職務内容などによって、従業員の社内での位置づけ(等級)を決める仕組みです。
等級制度は、人事制度の骨格であり、この等級に基づいて評価や報酬が決まります。
つまり、昇進をしたいと考えている場合は、社内での等級を上げていく必要があります。
代表的な等級制度として、「年功等級」「職能資格等級」「職務等級」「役割等級」の4つがあります。
- 年功等級制度:在籍年数で等級が決まる
- 職能資格等級制度:その会社での職務遂行能力があるかで等級が決まる
- 職務等級制度:どのような職務を担当するかによって等級が決まる
- 役割等級制度:どのような役割を担うかに応じて等級が決まる
2. 報酬制度
従業員の基本給、賞与、手当、退職金などを決める仕組みです。
一般的には、等級制度や評価制度に基づいて決められます。
昇給したいと考えている場合、単に報酬制度だけを確認するのではなく、そこに紐づく等級制度や評価制度についても理解を深めておくと良いでしょう。
3. 評価制度
従業員の仕事ぶりを評価する仕組みです。
評価した結果は、報酬や等級に反映したり、能力開発や異動配置に活用したりします。
主な評価観点として、以下の4つがあります。
- 業績:仕事の成果など
- 能力:スキルや資格など
- 行動:仕事のプロセスなど
- 情意:仕事に対するスタンス
これらの4項目のうち、何をより重視するかといった重み付けは、企業によって変わります。
また、同じ企業でも、等級によって重視される項目は変わるでしょう。
例えば、マネジャー層などの上位等級になればなるほど業績項目が重視され、メンバー層ほど情意や行動が重視されるなどです。
他にも、所属部署ごとに変化するケースもあるようです。
転職前に人事評価基準を知る方法
人事評価基準を知りたい場合には、応募先企業の人事などに面談を設けてもらうのが良いでしょう。
面談の場で、どんな評価基準があるのか、どんな人が評価されるのかなどを聞いていきましょう。
転職エージェント経由で応募している場合には、キャリアアドバイザーに確認するのも一つの手です。
具体的な詳細までは把握しておらずとも、どんな人が活躍しやすいのかなどは確認できるでしょう。
また、企業に対して「次の面接中に説明してあげてほしい」などのリクエストをしてくれるケースもあるはずです。
人事評価基準を質問するときのコツ
先述のとおり、昇給や昇進、給与・賞与の決定には、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」が複雑に関係しあっています。
そのため、単純に、人事評価基準について質問しただけでは、自分が本当に欲しい情報に辿り着けない可能性もあります。
たとえば、早く昇進をしたいという希望がある求職者がいたとしましょう。
「人事評価基準について具体的に教えてください」と聞いただけでは、等級表や人事評価基準のシートなどを見せて概要を教えてくれるだけにとどまるかもしれません。
これでは、その社内で働いたことがない求職者にとっては、具体的なイメージがつけにくいでしょう。
ここで、「マネジャーになるには、どういった基準を満たす必要がありますか?」と具体的に質問をすれば、
一般的には、約20名のメンバーを持つことになります。担当組織に対して、営業目標の設定や管理、コスト管理をする能力が求められます。部下の指導育成も必要なので、最低でもチームリーダーとして10人以上のマネジメントをした経験が求められます。また、企業理念の浸透度合いもみられていますね。 |
などと、具体的な回答が得られるかもしれません。
- 自分が活躍できる環境なのかを見極めたい
- 昇進のために必要な要件や一般的に必要となる期間を知りたい
- 年収をあと50万円アップするには何をすれば良いのか知りたい
- 能力目標には具体的にどんな項目が設定されているのか知りたい
など、自分が知りたい情報や背景を明確にしてから、質問すると良いでしょう。
具体的な質問をすればするほど、人事や採用担当者も回答をしやすくなるはずです。
「評価基準」だけではなく、「評価方法」が自分にあっているかも要確認
転職する際に、人事評価について気になる場合は、「評価基準」だけではなく、「評価方法」についても確認しておくと良いでしょう。
評価基準が同じであったとしても、誰がどうやって評価するのかといった「評価方法」によっても、評価結果が変わる可能性があるからです。
例えば、評価方法には以下のような種類があります。
目標管理制度: 社員が目標を設定し、上司はその目標を部門目標などと連携しながら達成に向けて助けていくMBOや、企業やチームで目標を共有し、達成に向けて個人目標を設定するOKRなどが使われる。組織としての目標・要望と、従業員個人の目標・意向をすり合わせ、目標設定・管理を行っていくのが特徴。 360度評価: 上司だけではなく、同僚や部下などからも評価を受ける手法。異なる立場の複数人から、多面的な評価を受けることになる。評価の客観性や納得性の担保を目的に導入されるケースが多い。 コンピテンシー評価: 高業績者の行動特性を分析し、評価する項目を特定・設定する。時代や状況によって変わる「行動」ではなく、その時時の状況や課題に応じて最適な行動と判断を取れる「動機や意識」が大事とされる(「何を軸に行動しているか」「どのようなことを意識して仕事に取り組んでいるか」など)。 バリュー評価: 情意、行動を中心にみる。企業が求める人材像や行動規範(バリュー)に基づいて評価を行う。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)や、行動指針となるクレドをどれだけ体現できているのかなども重要になる。 ノーレーティング評価: 年単位などでの年次評価をせず、ランク付けもしない評価方法のこと。リアルタイム評価など、1〜2週間といった短い間隔で、上司が部下に業務の振り返りやアドバイス、評価をするケースもある。 |
例えば、1人で黙々と目標達成に向けて動くことが好きな人が、360°評価をメイン手法にしている企業に転職してしまうと、「成果はしっかりと出しているのに、同僚から協調性がないと誤解され、評価が伸び悩んでしまう」といったこともあるかもしれません。
多くの企業では1つだけの評価手法ではなく、さまざまな手法を掛け合わせているので、極端に評価が下がるということは考えにくいですが、多少のグラデーションはあると考えておくと良いでしょう。
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