ESGとは何か?重視する企業に転職するにはどうすればいい?

ESGという言葉を耳にするようになりました。本記事では、ESGに関心を持った人のために、その意味やSDGsとの関係、ESGに取り組む企業への転職事情などについて、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタント・粟野友樹氏が解説します。
ESGとは何か?
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(企業統治/Governance)の3つの英語の頭文字を組み合わせた言葉です。企業が長期的に成長するためには、この3つの観点をもって課題解決に取り組むべき、とされています(※)。
【ESGにおける課題例】
- 環境(Environment)
気候変動、生物多様性、廃棄物(海洋汚染)、水資源(安全な飲み水)など - 社会(Social)
ダイバーシティ、労働(過労死)、人権、格差(所得・貧困)、人口(少子高齢化・集中と過疎)など - ガバナンス(企業統治/Governance)
法令順守、情報開示、権利保護、取締役会(経営の透明性・公平性)など
※出典:令和2年度障害者差別の解消の推進に関する国内外の取組状況調査報告書│内閣府
SDGsとの違いと関連性について
近年、企業が取り組むべき目標としては他にSDGsがあります。SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のこと。2015年の国連サミットで採択された国際目標で、2030年までに貧困や格差の解消、環境問題の解決など、持続可能な社会を実現することを目指しています(※)。
ESGは企業による経営上の取り組み、SDGsは世界全体での取り組み、という違いはありますが、「企業がESGに配慮した経営を行うことで、SDGs目標の達成に貢献できる」という点では、関連性があると言えるでしょう。
例えば Socialの観点から考える場合、
- 企業が多様な人材が活躍できる体制を整え、多様性(ダイバーシティ)を推進する
- 働きがいのある企業となり、人材のエンゲージメントやパフォーマンスが向上
- 健康経営に基づく成長・業績向上の持続
このような、経済的効果を伴うサイクルが期待できるでしょう。
※引用元:JAPAN SDGs Action Platform│外務省
ESG経営に取り組む企業が増えている背景とは
ESGに取り組む企業が増えている背景にあるのは、ESG投資(※)です。2006年、国連が世界共通のガイドライン「PRI(責任投資原則)」を提唱し、機関投資家に対してESGの観点を持つよう促したことから、ESG投資が普及し始めました。日本でも2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名しています。
欧米の企業では既にESGの取り組みがかなり進んでいるため、グローバルに展開する日本企業もESGを経営戦略のひとつとして追従する必要があった、という事情もあります。
ただ、ESG投資が株価に影響することもあって、上場企業は積極的にESGに取り組んでいる一方で、中小企業はまだESGにコストや人材を割く余裕がなく、取り組みはそれほど進んでいない、というのが日本の現状のようです。
ESG経営に取り組むメリットは?
企業がESGに取り組むメリットとしては、企業価値や企業ブランドの向上につながることが考えられます。ESG投資の普及で投資家の注目や資金を集められること、ESGやSDGsが注目される時代に合致した事業(サービス)や商品を開発することで売上拡大を見込めることもメリットと言えるでしょう。
先にも述べましたが、従業員の労働環境改善が図られることで、離職率の低下やエンゲージメントの向上(「いい会社だ」と誇りを持って働く従業員が増える)なども期待できるでしょう。
ESGに関心があるのでESG重視経営の企業に転職したい、そのような時は?
ESGに携わる求人募集をしている企業で目立つのは、外資系企業や大手メーカーなど。また、ESG経営についてコンサルを依頼する企業が増えていることから、コンサル企業やシンクタンク、金融系企業のアナリストやコンサルタントなどの求人も目立ちます。
ESGに携わる職種として考えられるのは、広報・IR、経営企画、サステナビリティ推進担当など。ですが、こうした管理部門はそもそも求人自体が多くありません。さらに、社内には専任担当を置かず、コンサル企業などに業務委託する企業もあります。また、中小企業にはESGの専任者を募集するほどの余裕がありません。
いずれにしても、そこに求められるのは即戦力であり、経験者が優遇されるので、その難易度はかなり高いのが現実です。
【優遇される経験の一例(領域別)】
- E(環境):総務・調達(資材の購買など)、IT、エンジニア(物流、電力、建築土木、自動車、化学、電機等の製造業)、データ分析など
- S(社会):人事労務+コンサルなど
- G(ガバナンス):経営企画、経理財務、広報IR、IT、金融領域+コンサルなど
まずは自分がどう関わりたいのかをしっかり考える
ESGを意識して転職を目指すなら、まずは「自分はE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)のどの領域に興味があるのか」「自分の経験・専門性をどの領域で発揮していきたいのか」を明確にしておくことが基本です。なぜなら、環境、社会、ガバナンスは専門性がそれぞれ異なるので、転職活動の方向性が変わってくるからです。
また、「どんな立場でESGに携わりたいのか」を考えておくことも大切です。広報IRや経営企画など企業の管理部門なのか、製造部門などの現場なのか、外部のコンサルタントなのか、NPOなどな公共的立場なのか、なども明らかにしておくといいでしょう。
ESG経営の企業を探すには
求人情報の収集は、転職サイトなどにESG、SDGs、サステナブル推進担当、ESG推進担当、D&I、脱炭素などのキーワードを入力して候補企業を探すのがベーシックな方法です。
とはいえ、現状は「ESG」というキーワードで多数の求人がヒットするものの、「企業としてESGを重視しています」というアピールにとどまっていて、求人職種とは特に関係のない求人も多くあります。ですから、例えばビジネス誌などに特集される「ESGに優れた企業ランキング」などの情報も参考にするなどして、根気よく情報を精査していく必要があります。
また、転職エージェントによっては、経営企画室やサステナブル推進担当などの求人を持っている可能性があるので、相談してみるといいでしょう。
ESGに取り組んでいるといっても、企業によってかなりレベル差があります。取り組み実績は、IR資料を読み込むなどして判断しましょう。その企業に勤務している人から実情について話を聞くことも、有効な判断材料となります。
転職した企業で社内異動する方法も
ESGの取り組みに関わる即戦力としてアピールできるような経験を積んでいない人は、次の2ステップでESG職に就く方法も視野に入れておくといいでしょう。
【STEP1】ESGに熱心に取り組んでいる企業に転職し、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)に関連するような部門で経験を積む。 【STEP2】社内異動でESGの取り組みに直接関わる職に就く。 |
ESGを重視しての転職は、現状ではまだ狭き門ですが、今後さらにESGが浸透していけば、チャンスは広がっていくだろうと期待しています。
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