自律的に働ける職場を探すには?見極め方と転職のポイント

職場にはさまざまなカラーがあります。「自律性の高い会社」に行きたいと考えたとき、どのような情報からその特徴を見極めるとよいのでしょう。
組織人事コンサルタントの粟野友樹さんが、転職時に確認すべきポイントを含め解説します。
目次
職場の自律性とは
そもそも「自律性」とはどんな意味なのか、その定義から確認しましょう。
「自律」とは文字通り、「自分で自分を律する」ことです。
目標やルールなど自分で決めた規範に沿って行動することを指し、「自律した人」は自ら仕事の価値ややりがいを見出していける人とも言えるでしょう。
似た言葉に「自立」があり、こちらは「他者に依存せず、自分の力で成り立たせる」ことを指します。
「自立した人」という言葉は、例えば「仕事のやり方を習得し一人前の営業として仕事を担当する」「他者から経済的な支援を受けずに生活をしている」などの場面で使われます。
「自律性」とは、他者からの影響や力を借りることなく、自らの考えや意志、立てた規範によって仕事の目標を設定したり、仕事の進め方を決めて行動したりする性質やその度合いを指します。
職場の自律性が高い会社とはどんな状態?特徴は?
では、「職場の自律性が高い会社」とはどんな組織なのでしょうか。
大きな特徴は、組織の上下関係がない、あるいは少ないことです。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパスなどの共通の判断基準はある一方で、意思決定権限が分散し、各メンバーや各プロジェクトで自主的に意思決定を行っていく組織だと言えます。
その代表的な組織形態が、メンバーが裁量権を持ち、新入社員から経営層までフラットに意見を言い合える「ホラクラシー型組織」です。
誰かが指示や命令を出すのではなく、組織の目的をメンバー全員で共有しながら行動する「ティール組織」や、アジャイル開発の柔軟さやスピーディな意思決定のやり方を取り入れた「アジャイル型組織」もまた、自律的な組織だと言えます。
ただ、組織によっては、個人主義や成果主義が非常に強い場合もあり得るでしょう。
自律性の高い組織は、IT系など新しい産業にある会社で比較的多く見られ、スタートアップ・ベンチャーなどの創業期・成長期にある企業にも多く当てはまります。
職場の自律性が低い会社とはどんな状態?特徴は?
一方、自律性が低い会社にはどんな特徴があるのでしょう。
組織体制は、ピラミッド構造の「ヒエラルキー組織」が多く、階級や役職が明確にあります。上の役職から下へと仕事の指示を出すトップダウン型で、上になればなるほど管理責任が重くなっていきます。
「自律性が低い」というとネガティブな印象を抱かれるかもしれませんが、必ずしも悪いことではありません。自律性が低いことは、「定型性の高い状態」とも言い換えられます。
組織の中で階層や役割が整備されているからこそ、業務が分業化されたり精緻にマニュアル化されていたりするので、決められた範囲で業務をコツコツ遂行したいというタイプにはマッチしていると言えます。
官公庁や自治体などの公的な組織、大企業やオーナー系企業、社歴が長い企業・老舗企業、安定期・成熟期にある企業に比較的多い傾向があります。
転職する場合、職場の自律性は働き方やキャリアにどう影響する?
自律性の高い職場・低い職場で働くことは、キャリア形成にどう影響するものなのでしょうか。具体的な働き方や、向いているタイプや性格特性を見ていきましょう。
職場の自律性が高い会社に転職した場合
自律性の高い職場は、一人ひとりへの裁量権が大きいため、早期の成長を志向するタイプに合っています。
「裁量と責任をもって仕事をする経験をしたい」「トライアル&エラーの挑戦がよしとされる場で、自ら意思決定をしながら成長したい」「実力や実績で評価されて昇進を早期にしていきたい」などの思いが強いほど、自律性の高い会社で成果を発揮しやすくなるでしょう。
また、独立自営/個人主義志向タイプで、「仕事を自分で創意工夫したい」「他人に指示されたくない」「自分の仕事の成果をダイレクトに享受したい」「自分のペースで働きたい」という人も、自律性の高い環境での働き方が向いていると言えます。
職場の自律性が低い会社(=定型性の高い会社)に転職した場合
一方、定型性が高く、自律性の低い環境の場合は、着実な成長を志向するタイプが合っていると言えます。
「経験年数などに応じて仕事や役割を担当し着実に経験スキルを高めていきたい」「段階的にステップアップして力をじっくり蓄えたい」「体系的・網羅的に仕事を学んでいきたい」といったタイプです。
また、「(個人としてというより)組織としての力を発揮したい」「顧客や市民などに奉仕したい、黒子として役立ちたい」「組織の総合力として社会に貢献したい」など、チームワークを重視する性格特性も、定型性の高い職場でのパフォーマンス発揮につながります。
転職活動で自律性の高い職場を探す方法と、本当に自律性の高い組織かどうかを見極める方法
では、“自律性の高い職場”を求めて転職する場合、どのように自律性の高さを見極められるのでしょう。選考前、選考中、内定承諾前それぞれのフェーズで確認できる方法を考えていきます。
選考に応募する前の探し方:求人票で確認すると良いこと
求人票や採用ホームページに出てくる文言から、自律性の高い職場かどうかが垣間見えるでしょう。
- MVVやパーパスなど含め、自律性、裁量権、責任、主体性など、フラットで自律型組織を志向する言葉や組織体制の説明があるかどうか
- 自律的キャリア形成支援/キャリアオーナーシップなどの人材育成・研修の仕組みがあるか
- 働き方の自由度の高さ(リモートワーク、フレックス制度、週休3日制など)があるかどうか
などが、自律性を表す観点になります。
選考中の見極め方:面接で確認すると良いこと
面接は、具体的な働き方、職場のカルチャーを知れる貴重な機会です。ぜひ、次のような逆質問で、職場の理解を深めましょう。
評価基準から、自律性が求められているか確認する場合: 「採用HPに掲載されている御社で高く評価される人材は、具体的にどういった取り組みをされて、何を評価されたのか、具体例を教えていただけますでしょうか」 |
働き方の自律性度合いを確認する場合: 「フレックス制度が導入されていると思いますが、私が配属予定の部署の方々の具体的な1週間の動き方をいくつか教えていただけますか」 |
組織内で日常的に重視されていることを確認する場合: 「MTGや社員総会などで経営陣や管理職の方が社内向けに話をされるときに大事にされていることや、人材を評価するときに重視している指標はどういったものでしょうか」 |
自分の事例を出して度合いを確認する場合: 「現職では、Qごとの目標設定をメンバー各自が作成して上司との面談で合意をとっていくスタイルでしたが、御社の目標設定の形はどのような形でしょうか」 |
教育体制から職場環境を確認する場合: 「自律型キャリア形成を支援するとIR資料にありますが、どういったキャリアパスや研修、成長機会となるプロジェクトなどの取り組みを導入されているのでしょうか」 |
内定承諾前の見極め方:確認すると良いこと
内定承諾前には、上司や同僚となる可能性がある社員との面談を希望し、上記のような逆質問を複数回して確認するといいでしょう。
現場のリアルな話から、より詳細かつ具体的に確認することができます。
オフィス見学や社内のイベントに参加することで、面談や面接の説明だけではわからない、組織の日常風景を肌で感じることもできます。
現職や選考が進む他社との比較も大切です。
例えば、「自律性」という観点で比較表を作成するのも一つ。「A社は自律性を大事にすると言っているが、単に組織体制オペレーションが整備されていないだけでは?B社は、自律型人材の育成に組織的に取り組んでいるな」などと、比較するからこそ分かる点を整理していきましょう。
ほかに、転職エージェントや知人友人、クチコミサイトなど、第三者の意見や情報を集めたり、IR資料(有価証券報告書の中の人的資本開示)を確認したりして、企業としての取り組み実態を確認しましょう。
自律的に働ける職場の探し方(まとめ)
・MVVやパーパスなど含め、自律性、裁量権、責任、主体性など、フラットで自律型組織を志向する言葉や組織体制の説明があるかどうかをチェック ・変革、改革、チャレンジなど、成果実力主義的な言葉が語られているか、経営者や社員の語りから感じられるかをチェック ・自律的キャリア形成支援/キャリアオーナーシップなどの人材育成・研修の仕組みがあるかをチェック ・働き方の自由度の高さ(リモートワーク、フレックス制度、週休3日制など)があるかどうかをチェック |
・評価基準から、自律性が求められているか具体的に質問する ・働き方の自律性度合いを具体的に質問する ・組織内で日常的に重視されていることを具体的に質問する ・教育体制を具体的に質問して、職場環境を確認する ・上司や同僚となる可能性のある社員との面談でも実態を確認する |
自律的に働ける職場を探している場合には、企業から発信されている情報だけでなく、実際に働く社員に確認するなどもしましょう。
丁寧なヒアリングのプロセスを経て、転職先を決められると安心です。
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