パラレルキャリアとは?取り組みのヒントや事例を紹介
パラレルキャリアに関心を抱いている若手社会人に向けて、「パラレルキャリアとはどういうものなのか」「副業とはどう違うのか」などについて、既に実践している人の事例も交えながら、Segurosの粟野友樹氏が解説します。
パラレルキャリアと副業の違いは?
パラレルキャリアと副業との線引きは、明確ではありません。「複数の仕事・活動を同時並行で行う」という意味では、ほぼ同じと考えていいでしょう。実際に、転職サイトでも「副業OK」という表現もあれば、「副業OK(パラレルキャリア制度)」という表現もあり、厳密なルールはないようです。
あえて違いを挙げるとすれば、その目的や仕事・活動への取り組み方が異なること。
副業は、本業を持ちながら、空いた時間や休日などに行う仕事であり、主な目的は収入です。
一方、パラレルキャリアの主な目的は副業とは異なり、スキルアップや自己実現、社会貢献など。本業に結び付くような仕事・活動をする以外にも、将来の新しいキャリアを視野に、まったく違う仕事・活動を選択することもあります。また、収入を得ることがメインの目的ではないので、無報酬(ボランティア)であることも少なくありません。
複業やダブルワーク、プロボノとの違いは?
似たような言葉として、複業やダブルワーク、プロボノなどがあります。
複業は、本業とも言えるレベル感の仕事を複数並行して行うことであり、その点ではパラレルキャリアと似ているかもしれません。
ダブルワークは、仕事を2つ以上持っている状態であり、副業的なケース(例えば日中は本業である営業アシスタント、夜間や休日はWebライターなど)もあれば、複業的なケース(会社員×個人事業主、アルバイト×アルバイトなど)もあります。
プロボノは、専門性を活かして社会貢献するボランティア活動のこと。例えば、「弁護士が無料相談を提供する」「経理や広報のスキルを生かしてNPO活動や地域活動をサポートする」といった活動です。無償提供という意味では、パラレルキャリアに近いケースもあります。
パラレルキャリアにどんな人に向いている?
近年は、特に若手社会人の間でパラレルキャリアに対する関心が高まっているようです。
その背景として考えられるのは、厚生労働省が2018年に副業・兼業の促進に関するガイドラインを作成したこともありますが、人生100年時代と言われる中、従来の「教育・仕事・老後」(学校での教育を終え、定年まで勤めて仕事を引退し、働かない老後を暮らす)という3ステージ型の人生が送りづらくなり、人生・キャリアが多様化してきている状況があります。
また、VUCAという言葉が聞かれるように、企業は生き残るために様々な変化対応を求められています。それに併せて、個人も企業・組織に依存せずに新しいスキルの習得を行うなどといった、変化に主体的に対応できるキャリア自律が求められている背景もあります。
今後増えていくであろうパラレルキャリアには、どのような人が向いているのでしょうか。リクルートが実施した『兼業・副業に関する動向調査2021』を参考に、パラレルキャリアに適した資質をまとめてみました。
目的意識が明確である
パラレルキャリアを行うと仕事量や労働時間が増え、プライベート(家族との時間や休息時間)が少なくなり、心身への負荷が増える可能性が高くなります。そのような状況下でも投げ出さないためには、明確な目的意識を持って臨むこと、そして自分に合ったパラレルワークを見つけることが必要です。
自己管理ができる
複数の仕事を同時進行していくので、作業の優先順位付けやスケジュール管理などの自己管理能力が問われます。
倫理観を持っている
自分が所属する企業と競合する会社・組織に属したり、自ら競合する会社を設立したりする行為を禁ずる「競業避止義務」や、労働契約に付随して負うことになる「秘密保持義務」などのルールに反しないよう、倫理観を持って行動できることが重要です。
コミュニケーション力がある
複数の環境で多様な人に対応したり、調整や交渉、事務手続きなどに対処する場面が増えるので、高いコミュニケーション力が求められます。それに加えて、家族にパラレルキャリアを行う理由や現在の状況を説明したり、家族の気持ちを汲み取ったりする家庭でのコミュニケーション力も必要となるでしょう。
パラレルキャリアを実践するメリット
パラレルキャリアを実践することで、どのようなメリットが考えられるのでしょうか。
本人にとってのメリットは、「本職では叶わない体験ができる」「スキルが身につく」「人脈が広がる」「収入がある場合なら収入が増える」など。リスクの少ない環境で、将来の独立・起業も視野に入れたキャリアを構築できることも、メリットといえるでしょう。
企業側も、「社員が自ら成長してくれる」「優秀な人材の確保や離職の防止につながる」「社員の社外ネットワークが形成されたり、発想が豊かになったりして事業の拡大・成長に寄与してくれる」などのメリットが期待できます。労働管理や情報漏洩などの課題はありますが、こうしたメリットに着目し、パラレルキャリアを推奨する企業は増えつつあります。
パラレルキャリアを検討する上で気をつけたいこと
パラレルキャリアが可能な環境かどうかの確認から開始後の事務手続きまで、気をつけたいポイントについていくつか紹介します。
パラレルキャリアが可能な企業かどうかを確認する
まずは、パラレルキャリア(副業・兼業)が可能な企業であるかどうかの確認が必要です。
現在勤めている企業で検討する場合は、人事に確認しましょう。転職活動中であれば、採用ぺージで応募企業の情報を確認するか、面接時に聞するといいでしょう。“パラレルキャリア可”である場合も、実際に行うことへの障害がないかどうか、会社や上司の理解度などを確認しておくと安心です。
パラレルキャリアを行う目的を明確にする
前項でも述べましたが、目的を明確にしておくことは重要です。
パラレルキャリアを経験することが目的になってしまうと、単なる小遣い稼ぎで終わってしまったり、精神的・肉体的負担にくじけて長続きしないことが予想され、本業や今後のキャリアに良い影響を与えません。
その内容と時間に本当に対応できるのか検討する
一時的なモチベーションで始めると、つい無理をしてしまいがちです。携わる仕事・活動の内容とそれに費やす時間を見積り、体力的・精神的に対応できるのかを慎重に検討しましょう。
家族がいる場合は、家族に事情を説明して理解を得ておくことも大切です。
開始前に手続きや禁止事項について確認する
パラレルキャリアをスタートさせる前に、現職やパラレルワーク先との手続きや禁止事項などについて、きちんと確認しておきましょう。収入が発生する場合は、確定申告などの事務手続きが必要となる可能性があることも知っておきましょう。
パラレルキャリアの事例
最後に、パラレルキャリアを実践している人たちの事例を紹介します。
【事例1】 30代・商社・Yさんの場合
本業[商社・営業]×パラレルキャリア[グループの人材サービス会社・事業企画]
新卒で商社に入社以来、営業一筋だったYさんは、「キャリアの幅を広げたい」と考え、社内で試験導入されたパラレルキャリア推進制度に応募。社内のグループ会社、提携籍のNPO法人などの中からパラレルキャリア先を選択することができ、障がい者向け人材サービスを提供するグループ会社での事業企画部門を希望した。
社内制度なので手続きはスムーズだったが、初めての試みということもあり、社内では「メイン業務に支障が出るのでは…」「周囲に負担がかかるのでは…」「そのまま異動や転職してしまうのでは…」という懸念が広がっていた。上司や同僚も100%賛成という状態ではなかったが、Yさんは周囲への説明や不在時の業務の引き継ぎ・分担などを丁寧に行い、周囲の理解を得てスタートすることができた。
【事例2】 20代・コンサル系シンクタンク・Kさんの場合
転職先での本業[シンクタンク系コンサルティング会社・コンサルタント]×パラレルキャリア[NPO法人や学生団体を無報酬でサポート]
学生時代にボランティアに携わっていたKさんは、その頃から地域活性化の活動をライフワークにしたいと考えていた。新卒入社した人材サービス企業にも副業の制度はあったが、業務が多忙であること、利用実績がほとんどなかったことから、実際に利用するのは難しいと判断した。
そこで、Kさんはパラレルワーク実現のために転職を決意。副業が可能で、自分が取り組みたい活動に近い地方自治体向けコンサルティング事業を行っているシンクタンク系コンサルティング会社に転職し、仕事に慣れた時点で本業に活かせるパラレルワークをスタートした。現在は、NPO法人の地方での地域活性化プログラムの開発、学生団体の研修事業、学生向けキャリア教育的なイベントなどを無報酬でサポートしている。
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