テレワークとは?テレワークの種類や行政・企業側の考え方などを解説
テレワークという働き方は、転職先を検討していく上で注目の選択肢の1つとなっています。
「まだ経験はないけれど、興味がある」という若手社会人のために、テレワークとはどのようなものなのか、そのメリットや導入の現状(2021年8月時点)などについて、組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏に話を聞きました。
テレワークとは?リモートワークとどう違う?
厚生労働省によると、テレワークとは「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されています。テレ(tele)は「離れた」「遠隔での」といった意味を示す接頭辞で、テレワークとは「遠く、離れて働く」を意味する造語です。
参考:テレワークとは│厚生労働省テレワーク総合ポータルサイト
「リモートワーク」も、「隔たった」「遠い」という意味のリモート(remote)との造語で、テレワークとほぼ同義で使われています。
本記事では、厚生労働省や総務省、日本テレワーク協会(テレワークを推進する公的団体)などが使用しているテレワークという表現で統一します。
テレワークの主なタイプ
テレワークには、「在宅型」「モバイル型」「施設利用型」という3つのタイプがあります(総務省の分類に基づく)。併せて、近年注目されている「ワーケーション」についても、簡単に紹介しましょう。
参考:テレワークの動向と生産性に関する調査研究報告書(PDF)
在宅型(在宅勤務)
在宅勤務とは、「自宅で仕事を行う」働き方です。
事務職や営業職、Webエンジニアなど、テレワークが可能な仕事に広く取り入れられていて、なんらかの理由で自宅のほうが作業しやすい人、通勤が困難な人などに便利な働き方といえます。
さらに東京都は終日テレワークに加えて半日・時間単位のテレワーク(テレハーフ)を推奨するなど、1日の一部を在宅勤務とする“部分在宅勤務”を導入する企業も出ています。こうした部分在宅勤務なら、「午前中に近所の病院に行き、午後は出社せずに在宅勤務にする」など、半日休暇と組み合わせて効率的に働くことが可能となります。
モバイル型(モバイルワーク)
モバイルワークとは、オフィス外、つまり顧客先や出張時の移動中などに仕事を行う働き方です。
出先で仕事を済ませたあと直行・直帰できれば、効率良く働くことができます。営業職やサービス・メンテナンス職、SE職などに便利な働き方といえるでしょう。
施設利用型(サテライトオフィス、コワーキングスペース)
サテライトオフィスは、企業が本拠から離れた場所に設置したオフィスのこと。
各企業によって運用ルールは異なりますが、基本的には、従業員が自分の本拠オフィスに出社するかわりに、例えば出張先に近いなどの理由で活用できる場所になっています。
コワーキングスペースは、所属先企業を問わずさまざまな人が共有するワーキングスペースのこと。民間事業者だけでなく、自治体が提供するサービス・スペースも存在しています。企業がコワーキングスペースの一部を借り上げて、自社の従業員のためのサテライトオフィスとして活用しているケースもあります。
こうした施設利用型の働き方は、職場がリモートワーク化しても自宅に適切な仕事環境が整っていない人や、本社に通勤する代わりに自宅最寄りの施設で仕事を済ませ、速やかに保育園に迎えに行きたい子育て中の人などに便利です。
また、新規事業部門だけを切り離し、サテライトオフィスで仕事を行うなどの活用法も見受けられます。
その他(ワーケーション)
近年注目されているのが、リゾートなどで「働きながら休暇を楽しむ」ワーケーションです。ワーケーションとは、Work(ワーク)とVacation(バケーション)からなる造語です。
ワーケーションの魅力は、自然環境豊かな場所やリゾートでリラックスしながら働きたい人にとって、通常の環境では味わえない気分転換ができるので、業務効率が上がったり、普段とは違う発想が生まれるなどの効果を期待できます。
子どもを自然の中で遊ばせながら仕事を行う“子連れワーケーション”を実践している人もいるなど、育児と仕事との両立にも一役買っています。
勤怠管理の基準などさまざまな壁をクリアする必要があるため、いまは多くの企業・人が導入する状況ではありませんが、地域振興の側面もあり、これからさまざまな形で展開する可能性があります。
国も推奨するテレワーク、その理由とは
新型コロナウイルス感染症対策で注目されるようになったテレワークですが、日本政府は、それ以前から下記のような理由で推奨しています。
1つは、少子高齢化対策です。
時間や空間の制約にとらわれず働けるテレワークは、多様な働き方を実現できたり、多様な人材が能力を発揮できたりと、労働人口の確保につながるからです。
2つ目は、働き方改革の推進です。
テレワークが普及することで、子育てや介護との両立、趣味や副業の時間の確保などのケースが増え、ワークライフバランスの実現が可能となります。
3つ目は、地方再生です。
働く場所の制約を受けないことから地方移住が促進されたり、ワーケーションを誘致することで観光業が活気づいたりと、地域活性化の推進に役立ちます。
4つ目は、環境負荷の軽減です。
テレワークの導入によって、従業員の通勤や出張などで利用する交通機関、オフィスの光熱などから排出されるCO2の削減が期待できます。
テレワークのメリットについて
企業側のメリットとしてまず考えられるのは、業務改善が進むこと。
メンバーが離れて仕事を行うテレワークを導入するにあたって、業務範囲や納期をより明確化するなど業務プロセスが見直されたり、システムの刷新・新規導入、書類のペーパーレス化が進んだりすることが考えられます。
テレワークで業務プロセスが改善され、従業員が自分の業務だけに集中できる環境で働けるようになれば、生産性アップも期待できます。
また、企業にとっては、コスト削減になれば大きなメリットです。
従業員の通勤や出張などの交通費を節約できるだけでなく、テレワーク&フリーアドレス化によってオフィススペースが削減でき、賃料や光熱費の削減も可能となります。
さらに、事業継続性を確保できるというメリットも見逃せません。
テレワークを導入することで、自然災害時やパンデミック発生時などの非常事態時にも、事業の完全停止を避ける手段となり得ます。
一方、従業員側のメリットのひとつは、通勤時間を節約できること。通勤の精神的ストレスや疲労から解放されるので歓迎だ、という人もいるでしょう。
節約した分の時間は趣味や自己啓発、家族とのコミュニケーションなどの時間に充てることができますし、人によっては育児や介護との両立もしやすくなります。
また、テレワークなら突然話しかけられたり、急な仕事を依頼されたりすることが多少なりとも減るでしょう。この点も、メリットと考える人にとっては自分の業務に集中でき、仕事の効率アップが望めそうです。
テレワークの現状と将来
企業側にも従業員側にもメリットがあり、魅力的に感じられるテレワークですが、導入の実態はどうなのでしょうか。
東京都が発表した『2021年6月の都内企業のテレワーク実施状況』によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は63.6%とのこと。
また、リクルートワークス研究所が2021年5月に発表した『全国就業実態パネル調査2021臨時追跡調査』によると、1回目(2020年4月~5月)の緊急事態宣言下で32.8%と急速に伸びたテレワーク実施率は、宣言解除後に18.1%まで減少し、2回目(21年1月~3月)の宣言下でも25.4%にとどまっています。
政府は、テレワークで出勤者を7割削減するよう経済団体に協力を要請していますが、データが示すように、現段階ではテレワークは思ったほど普及していません。
その理由のひとつとして考えられるのは、経営層にとっては企業カルチャーの醸成や維持が難しいこと。管理職も、「出社して顔を合わせているほうが教えやすい」「困っているときにすぐ手を差し伸べることができる」など、マネジメントやコミュニケーションに難しさを感じているようです。
また、従業員側にも、好みや家庭の事情等でテレワークよりも出社(拠点に出向くこと)を望む人はいます。
とはいえ、人材採用のしやすさという観点からは、テレワークを導入している企業と、導入していない企業では、差が出てくることになりそうです(テレワーク環境が不向きな職業は除く)。
実際、求人案件をみると「テレワーク(リモートワーク)可」と入れる企業が増えてきた、という印象です。
テレワーク環境を希望する・しないに関わらず、今後は「テレワークを導入しているか否かや、その導入度合い」が企業選びの重要なキーワードのひとつとなりそうです。
自分に合った職場環境を探す際などは、検討材料として加えてみるといいでしょう。
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