先行き不安な仕事は避けたい。これからどんな業界・職種に転職すべきか迷っています【転職相談室】
景気低迷を受け、業績不振に悩む企業が増えています。そんな中、少しでも将来有望な業界・職種に転職したいけれど、どこを選べばいいのかわからない…という人もいるようです。
そんな人たちに向けて、人事歴20年超、現在は人事領域支援会社を経営する「人事のプロ」曽和利光さんにアドバイスをいただきました。
アドバイザー
株式会社人材研究所・代表取締役社長
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略』(講談社)など著書多数。
目次
先行き不安な仕事は避けたい。これからどんな業界・職種に転職すべきか迷っています(Mさん/サービス業・経理職/28歳/男性)

観光系の事業を行っている会社で働いていますが、コロナ禍で勤務先の業績が悪化しています。将来不安から転職を検討しているのですが、先行き不安定な業界や職種は避けたいと思っています。これから視野に入れたい業界や職種はありますか?
今しか経験できない業務をやり尽したほうが、キャリアにとってプラス
アドバイザー
Mさんは経理の仕事に就いて5年目なのですね。経理や人事や、総務など事務スペシャリストは、どの会社でも絶対に必要な役割であり、別の業界にも転身しやすいのが特徴。特に経理は、会社ごとの特徴はあるものの、基本的には共通ルールに則って行う普遍的な仕事なので、どの業界でもつぶしが効きますよ。
相談者
なるほど、経理の経験は活かしたほうがいいのですね。では、お勧めの業界などはありますか?就活のときは観光系ばかりに応募していて、他の業界知識があまりないので、これから視野に入れたほうがいい業界を知りたいです。
アドバイザー
その前に…。転職はもう少し先延ばしにして、もう少し今の会社で頑張ってみたほうが、経理としての希少価値が高まりキャリアの選択肢が増えると思います。
相談者
え!どういうことでしょうか?
アドバイザー
Mさんの勤務先は、コロナ禍で業績不振に陥っているとのこと。平時のときにはなかった、「こんな状況だからこそ」の業務が今、増えているのではないでしょうか?
例えばですが、利益をねん出するためにコスト削減できる余地はないかあらゆる経費を見直したり、テレワークシフトによる残業代や交通費の減少と通信費の増大を比較して、今後のオフィスのあり方を他部門とともに検討したり、今まで紙で行っていた請求書発行業務のペーパーレス化に取り組んだり、いよいよ業績が悪化し経営自体が厳しいのであれば、借り入れを検討し必要な手続きを行ったり…など。
相談者
確かに、増えています。うちの会社は業界的に大打撃を受けているので、この冬のボーナスを減額せざるを得ず、その準備に時間がかかりました。現在は経費削減を目的に、オフィスの移転・縮小や営業所の統廃合なども検討していて、毎日とても忙しいです。
アドバイザー
大変かとは思いますが、今しかできない貴重な経験を積んでおられると思います。先ほど「経理は普遍的な仕事」と申し上げましたが、それだけ他者と差別化しにくい仕事でもあります。だからこそ、厳しい状況下で危機を乗り越えるために努力を尽くした経験は、Mさんのキャリアにとってプラスになります。先行きが不安とは思いますが、月々の給与が今まで通り支給されているうちは、今しかできない経験をし尽したほうがいいと思います。
相談者
でも、もし会社が潰れてしまったらどうすればいいでしょう?そこから転職活動するのは大変だし、応募先企業の印象も悪いのではないかと思うのですが…。
アドバイザー
言葉は悪いかもしれませんが、倒産こそめったにできない希少な経験です。再建するにしても、清算するにしても倒産手続きが必要であり、経理の出番は非常に多いはず。事業譲渡やM&Aなどの業務も経験できるかもしれません。何より、沈みそうな船から逃げ出すことなく最後までやり切った経験は、武勇伝になりこそすれマイナスに働くことはありません。「困難なことがあっても逃げることなく、自社のことを考え乗り切ってくれそうだ」と高く評価されるはずですよ。
景気や社会環境が変化している状況でも採用を強化している企業は、視野に入れたほうがいい
相談者
経理としてのキャリアにつながり転職市場での評価につながるなら、もう少し頑張ってみようかな…。ただ、いよいよ業績が厳しくなって給与カットなどが始まり、「これ以上い続けるのは金銭的にも精神的にも限界だ」と思ったら転職に踏み切りたいと思います。
アドバイザー
あくまで無理のない範囲で、頑張ってみてください。そして、「もう限界」という事態に陥ったとき、転職先として視野に入れたほうがいいのは、「今、この状況下でも採用を強化している企業全般」です。
景気がいいときは、多くの企業が人材採用を強化するため求人数が増えます。ただ、その中には事業内容や企業体質に問題があるなど、将来性が高いとは言えない企業もどうしても含まれてしまいます。
一方で、景気が低迷しているときは、こうした企業はそぎ落とされ、将来を見据えて勝負に出ようという企業の採用が増えます。すなわち、この時期に積極的に求人を行っている企業は、所来有望であると言えるのではないでしょうか。
相談者
なるほど!転職情報サイトを見ると、このご時世でもいろいろな企業が採用しているのですね。うちの会社と同じ観光関連の求人も、いくつかあるようです。
アドバイザー
新型コロナウイルスの影響をもろに受け、厳しいとされている業界で採用を強化しているところは、特に有望だと思います。「業界全体は厳しくても、うちは踏みとどまれる」と判断し、勝負に出られるだけの体力がある企業だからです。今すぐ転職しない場合も、今求人しているのはどんな企業かチェックし、記録しておくといいでしょう。
相談者
わかりました。転職サイトをチェックしつつ、まずは現在の会社で今しかできない経験を積み、知見を広げたいと思います。ありがとうございました。
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