上場企業へ転職を図る際に知っておきたいこと
「上場企業に転職したい。」「内定をもらったので、働く上での注意点があるなら知りたい。」
そんな方のために、上場企業への転職を図る場合に知っておきたいこと、働くメリット・デメリットなどを、組織人事コンサルタントの粟野友樹さんに聞きました。
そもそも「上場企業」とは?
「上場企業」という言葉を聞くと、安心感・安定感を感じる人も多いのではないでしょうか。では、なぜ上場企業は社会的信用があるとされているのか、その定義とともにみていきましょう。
上場企業の定義
「市場(証券取引所)」で株式が売買されるようになることを「上場」と呼び、その株式を発行している企業を「上場企業」といいます。
上場により株式は、日本中はもとより世界中の投資家が売買を行う対象となるため、企業には広く一般投資家から資金を調達できるほか、知名度の向上といったメリットがあるとされています。
一方でデメリットとしては、上場を維持するためのコストの増加や社会的責任の増大、株主の関与による経営面での制約などが挙げられるでしょう。
また、証券取引所では投資家を保護する立場から、企業に対して上場を許可するかどうかを、事前に明確な基準で審査をおこなっています。
一般的に上場企業に対して安心感・安定感を感じる人が多いのは、このような厳しい審査をクリアした社会的信用のある企業だからということもあるでしょう。
【上場審査の内容(一例)】
企業の財政状態・収益力
- 企業が上場後も収益を増やして業績を伸ばすことで、株主に利益を還元できるかどうか
- 財務が健全かなど
企業の継続性及び収益性
- 事業計画がビジネスモデルの特徴やライバル企業の状況など、事業環境等を踏まえて適切に作成されているか
- 仕入・生産・販売といった事業活動が、上場後においても安定的に行われるかなど
企業経営の健全性
- 大株主や取締役などとの取引等を通じて、利益を不当に供与または享受していないか
- 取締役などの構成に偏りがあることで、特定のグループに有利な判断がなされるなど、企業の適正な意思決定に支障が生じていないかなど
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
- 事故や不正、誤りが起こらない仕組みが組まれているか
- 社内ルールが整備され、守られているかなど
企業内容の開示の適正性
- 株価に影響がある情報を、投資家に対して適切に公表することができる体制が整備されているかなど
上場企業=大手企業ではない
上場企業と聞くと、大手企業を思い浮かべる人も多いかもしれません。実際には、株式を取引する市場にはいくつか種類があり、それぞれで上場している企業規模は異なります。
例えば、一般市場(東証一部・二部)には、上場審査のひとつに「純資産額10億円以上」という基準があるため大手企業が名を連ねていますが、新興市場(マザーズ・ジャスダック)ではこの基準はありません。
そのため純資産額が少なくても、大きな成長の可能性を持ったベンチャー企業や、アーリーステージの企業は、新興市場に上場をしています。
どちらの市場であっても、厳しい審査要件をクリアしていることに違いはありませんが、企業の規模は、売上額も従業員数も含めて様々だと認識しておいた方が良いでしょう。
また、純資産額10億円以上を満たしているような大手企業であっても、株主が経営に関与することを避けるためにあえて上場をしていないというケースもあります。
上場企業で働くメリット・デメリット
上場をすることで企業にとってもメリット・デメリットがあるように、社員にとっても働くメリット・デメリットがあります。
上場企業で働くメリット
一般的に上場企業には、円滑な資金調達による採用力強化や高い知名度などにより新卒・中途含めて優秀な人材が集まりやすい傾向にあります。優秀な同僚とともに、切磋琢磨していける環境は、働く上での大きなメリットと言えるでしょう。
調達した資金を、事業開発費や研究開発費などに投資している企業では、事業成長スピードにも期待が持てます。
上場前には企業の収益性だけではなく、健全性や情報開示についても多くの審査を行うことになります。そのため、福利厚生や研修制度、労働時間なども含めた社内体制がしっかり整備されていることが多いのも特徴のひとつです。
特に、人事制度がしっかり整備されていることで、評価・賞与・報酬の基準が明確になり、昇進や昇格についての不透明感・不公平感が生まれにくくなります。このことは、キャリアアップを目指している人にとっては大きな魅力と言えるかもしれません。
上場企業は社会的信用が高く、知名度も高いことが多いため、次の転職の際に経験や実績をアピールしやすいという側面もあります。
上場企業で働くデメリット
上場企業には「企業内容の開示」が求められ、経営活動についても、方針や実績、今後の見立てなど様々な内容を株主に報告しなくてはなりません。
そのため売上、利益、経費といった数字の管理が厳格になります。株主によっては企業の思い通りに経営することが難しい場合もあり、コスト意識が強くなりすぎて失敗しそうな挑戦をしづらいといった側面もあるでしょう。
また、メリットであげた「優秀な人材が集まりやすい傾向にある」という観点は、「社内競争が激しい」というデメリットにもなり得ます。入社前には採用に至るまでの競争があり、入社後にも管理職になるためには優秀な人材との競争が待ち受けている場合が多いでしょう。
上場企業への転職を図る場合のポイント
基本的に、上場企業であっても非上場企業であっても、転職活動においての準備は変わりません。どちらもしっかりと自己分析や企業研究が必要です。敢えて違いをあげるとすれば、上場企業は情報が多く開示されているので企業研究をしやすいという点でしょう。
上場企業はIR(インベスター・リレーションズ)情報として、投資家向けに財務など様々な情報を開示しています。中には、従業員構成比、平均年収、売上構成比、事業戦略に基づいた今後の展望のほか、採用戦略などが含まれている場合も。
膨大な情報のため全てを読み解くことは難しいかもしれませんが、適宜活用をして企業研究を進め、面接に活かすと良いでしょう。
逆に言うと、上場企業の面接を受ける際には少し注意が必要です。「御社のメイン事業について、今後の展望を教えてください。」「平均年収はどのくらいでしょうか。」などのIR情報に載っているような質問をしてしまうと、企業側からは「情報開示している内容なのに、全く知らないということは志望度が低いのかな」と思われかねません。
質問したい内容については、情報開示されていないかどうかを事前にチェックしておくと安心です。
リクナビNEXTで、上場企業の求人を探すには
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「上場企業のグループ会社」をチェックすると、該当企業の株式の50%以上を保有しているのが、上場企業である求人も表示されます。
まとめ
働く人にとってもメリットは多い上場企業ですが、日本全体で企業数が400万社あると言われているなか、上場企業はそのうちのわずか0.1%に過ぎません。同じ上場企業といっても、売上規模も従業員規模も多岐に渡ります。
「上場企業だから」と言う理由だけで志望をするのではなく、自己分析・企業研究をしっかりと進めて事業内容や仕事内容に惹かれる企業を探していきましょう。
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