試用期間とは?試用期間中の解雇や本採用、給与にまつわる知識を紹介
転職活動をしていると、求人票に「試用期間」について書かれている場合があります。
そもそも試用期間とは何なのでしょうか。
試用期間は解雇されやすいのか、その後正社員になれるのか、試用期間の給与、また試用期間中に退職できるのかなど、改めて確認をしておきましょう。
ここでは、数々の転職支援を実現してきた組織人事コンサルティングSegurosの粟野友樹氏と社会保険労務士の岡佳伸氏に、試用期間についてお伺いしました。
監修
社会保険労務士法人 岡 佳伸事務所
岡 佳伸氏
アパレルメーカー、大手人材派遣会社などでマネジメントや人事労務管理業務に従事した後に、労働局職員(ハローワーク勤務)として求職者のキャリア支援や雇用保険給付業務に携わる。現在は、雇用保険を活用した人事設計やキャリアコンサルティング、ライフプラン設計などを幅広くサポート。特定社会保険労務士(第15970009号)、2級キャリアコンサルティング技能士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士など保有資格多数。
「試用期間」とは?
試用期間とは、企業が人材を本採用する前に、社員としての勤務態度や仕事への適性を判断するために用いられています。
試用期間については、現行法上、明確な法的規制は存在せず、試用期間の長さは、一般的に1〜6カ月、最長1年が限度と、企業独自に設定されています。
企業は、就業規則や労働契約書(雇用契約書)に、試用期間についての内容を明記する必要があるため、入社の際には事前に内容をよく確認する必要があります。
試用期間が設けられる理由
一般的に、数回の面接で勤務時における適性を判断することは難しいとされており、採用後の一定期間、企業側が面接の中で見抜けなかった人材の適性などを見極めるために設定されています。
試用期間中の給与や福利厚生は?
試用期間中の給与、残業代
試用期間中は賃金を安く設定している企業もありますが、契約開始時に、労働条件通知書等で明示していれば、これ自体は違法ではありません。
ただし、試用期間中といってもあくまで雇用契約は締結されている状態であるため、最低賃金を下回ることはできません。
最低賃金は都道府県別に設定されており、例えば、東京都の最低賃金は2021年1月18日時点では時間額1,013円です。
給与は月収で支払われますので、「月給額 × 12か月 ÷ 年間総所定労働時間 ≧ 最低賃金額」で最低賃金比較額を算出が可能です。気になる場合は、企業のある都道府県の最低賃金と比較してみるとよいでしょう。
また、試用期間中に残業や休日出勤などの時間外労働が生じた場合、企業に本採用されている社員と同様に、勤務実績に応じた割増賃金が支払われることになります。
試用期間中の社会保険
試用期間中の社会保険について、試用期間中といってもあくまで雇用契約は締結されている状態であるため、社会保険の加入対象になります。
ただし、社会保険の除外対象に該当する方は加入できません。これは試用期間かどうかは関係ありません。
社会保険には健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険があり、適用除外の要件はそれぞれ異なります。健康保険・厚生年金保険の適用除外を例示すると、以下に該当する方は健康保険・厚生年金保険には加入できません。
– 臨時に2か月以内の期間を定めて使用され、その期間を超えない人
– 臨時に日々雇用される人で1か月を超えない人
– 季節的業務に4か月を超えない期間使用される予定の人
– 臨時的事業の事業所に6か月を超えない期間使用される予定の人
– 所在地が一定しない事業所に使用される人
– 後期高齢者医療の被保険者等(75歳以上):健康保険の場合
– 70歳以上の者:厚生年金保険の場合
– 短時間労働者(1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3未満)
適用除外要件に該当しないのに対応してもらえない、など問題が残る場合は、年金事務所に相談することをお勧めします。
そのほかの労働条件についても、書面で確認することが必要です。書面が交付されていなければ、人事部門に「労働条件通知書を作成してください」とお願いしてみましょう。
気になる試用期間中の解雇と本採用
試用期間中の労働契約
法的性質として、試用期間は「解約権留保特約のある雇用契約」であるという考え方が判例で確立されています。つまり、「企業側が、採用した人材を解雇する権利を留保している期間」とされており、企業側には、通常の解雇よりも広い範囲の解雇の自由が認められるということです。
そうは言っても、企業側と社員側には正式な労働契約が結ばれています。 客観的・合理的な理由がない限りは、解雇は認められていません。以下のような場合には解雇が認められた事例があります。
– 採用決定後における調査、または、試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合であり、
– 引き続き企業に雇用しておくことが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に相当であると認められる場合
「期待していたスキルではなかった」「社風に合わない」という理由では、試用期間とは言え、正当な解雇理由とは認められないと理解して問題ありません。
試用期間中に解雇されるケース
通常、企業が社員を解雇する場合には、少なくとも30日前に予告する、もしくは30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。ただし、例外として入社後14日以内の場合は、企業はいずれの義務も果たさなくてよく、解雇予告なしで解雇することができることになっています。
試用期間の延長が認められる条件
試用期間が労働契約に基づく以上、延長に関しても、企業側の一方的な意思ではできず、労働契約に根拠がある場合に延長が有効となります。次の3点が満たされている場合は、試用期間の延長が認められます。
- 就業規則や雇用契約書に延長規定が明示されている
- 合理的な理由がある
- 企業側から事前の通知と当人の合意がある
企業側の一方的な都合で、事前連絡なく試用期間が延長されることはありません。一方で、就業規則や雇用契約書に延長に関する記載有無は確認しておきましょう。万が一、事前通知なく試用期間が延長されるなど、本採用が履行されない場合は、理由を明確にするように企業に要求しましょう。了承できない場合は企業と話し合うことが必要です。
試用期間中に解雇された場合の履歴書「職歴欄」への書き方
試用期間中に解雇された場合、次の就職活動のための書類には、通常の入社・退職歴と同じように書いてください。
【例】
「令和○年〇月 ***(社名)入社」
「令和○年○月 ***(社名)退職」
職務経歴書の主な職務内容の欄には、新入社員研修の内容や試用期間中に担当した業務の内容などを書き、短いながらも経験したことや学んだことについても書き添えるようにしましょう。
試用期間中に解雇された場合の面接での説明の仕方
まずは、解雇の理由を明確にしてから、反省・改善点を述べましょう。
解雇された理由が全く思い当たらない場合は、理由を記載した証明書の発行を、以前の企業に請求しましょう。試用期間中でもすでに労働契約は成立しているため、従業員として解雇の理由を知る権利があります。
企業側からの解雇の理由が納得できるものだった場合は、「転職後は同じことを繰り返さないように注意したい」といった旨を面接時に伝えるとよいでしょう。
中には、本人には非がないにもかかわらず、例えば企業の経済状況などを理由に企業側の一方的な都合で解雇するケースもあります。その場合は、事情を率直に伝えるようにしてください。
ただ、企業側から提示された理由が納得できないものだったとしても、面接時に自分に非がないことを主張しすぎない方が賢明です。今後は解雇の原因となった点を反省・改善をし、成長の糧にして働きたいという意思を伝えたほうが、プラスの印象になります。
試用期間中に退職したい場合は?
実際に働いてみたら、自分が思っていた仕事内容・社風と異なっていたため、退職をしたいと感じたら、どうしたらいいのでしょうか。
就業規則の規定に従う
退職を希望する場合、企業の就業規則に従った退職手続きを取ります。
試用期間中か正式採用後かにかかわらず労働者には退職の自由があり、試用期間中に退職することも問題はありません。ただし、企業の就業規則には従う必要があります。
たいていの企業の就業規則には、「1カ月前に退職を申し出なければならない」など退職の申し出に関する規定がありますので確認のうえ、規定に従った手続きを取るようにしてください。
民法では、退職予定日の2週間前に申し出を行うことが定められていますが、企業側も退職後の後任者が必要になるため、なるべく早めに、直属の上司に伝えるのがよいでしょう。
また、退職理由を伝える際は、企業側に非があるという伝え方はせず、「自分には合わない」と言い換えましょう。「営業方法が時代に合っていない」など、ストレートに理由を伝えてしまうと、その職場で働いている人への批判と受け止められると、感情的になり円満な退職をしづらくなるかもしれません。退職後に仕事で接点がある可能性もありますので、円満に退職できるのが無難です。
待遇が悪い場合は相談
試用期間中であっても、労働基準法や最低賃金法などは適用になります。
企業に労働条件について相談しても改善が見られず、劣悪・不当な労働条件(最低賃金額を下回る給与など)の場合は、労働基準監督署に相談するのが妥当です。
困ったら、一人で抱えずにまずは相談をしましょう。
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