「楽しい」と思える仕事に転職するには?
現在の仕事にやりがいや興味を感じることができない、今まで楽しいと思えたことがない…という人は少なからずいるようです。
「楽しい」と思える仕事に転職するには、どのような考え方で転職活動に臨み、どのように応募先を選べばいいのでしょう?人事歴20年超、現在は人事領域支援会社を経営する「人事・採用のプロ」、曽和利光さんに詳しく教えていただきました。
アドバイザー
株式会社人材研究所・代表取締役社長
株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。『「ネットワーク採用」とは何か』(労務行政)、『コミュ障のための面接戦略』(講談社)など著書多数。
仕事における「楽しい」とは「無我夢中で没頭できる」状態のこと
「楽しい」の定義はいろいろありますが、仕事における「楽しい」はエンターテインメントのようなその瞬間だけ感じる楽しさではなく、「無我夢中で没頭できる」状態を指すものだと考えています。
心理学者のミハイ・チクセントミハイは、物事に没頭し完全にのめり込んでいる精神状態を「フロー状態」と定義し、この状態が最も精神エネルギーに満ちていて、かつパフォーマンスが発揮できる状態、としています。つまり、仕事で「楽しい」と感じたいならば、フロー状態を目指すのが得策であると考えられます。
そして、仕事において「フロー状態」に至るには、次の4つの条件が必要とされています。
「フロー状態」の4つの条件
1:自分の能力よりも少し上の業務を行う
難しすぎても簡単すぎても業務に没頭はできず、フロー状態には至れない。「少し手を伸ばして届く」程度の難しさの業務を常に追っている状態がベスト。
2:自分の仕事や目標、成果をコントロールできる状態にある
「やらされ仕事」ではなく、自分が統制しコントロールできる状態の仕事であることが、没頭できる条件の一つ。特に「目標」は自分でコントロール(設定)できることが望ましい。
3:仕事の成果に対してフィードバックがある
例えばゲームは、その場で手応えを感じられるからこそどんどんのめり込める。手掛けたことに対して、上司などからすぐにフィードバックを得られる体制があるかどうかは、目の前の業務にのめり込むためにも非常に重要。
4:集中できる環境がある
机がパーテーションで仕切られている、「集中部屋」など集中したいときに異動できる場所があるなど、雑念を取り払い集中できる環境の存在も大事。
まずは今の職場で「4つの条件」を満たす努力をしよう
今の職場が「4つの条件」を満たせていなかったとしても、まずは「今の職場で条件を満たす努力」をしたほうがいいと思います。転職で叶えようとするよりも、断然、実現可能性が高いからです。
1の「自分の能力よりも少し上の業務を行う」が満たされていないのであれば、上司に「もう少し難易度の高い仕事を任せてもらえないでしょうか?」とお願いしてみましょう。「高い目標にチャレンジしてもっと成長したいので」などと付け加えると、その意欲を買ってストレッチ目標を設定してくれるのでは。
2の「自分の仕事や目標、成果をコントロールできる状態にある」が満たされていないならば、「目標達成に向けて自分が直接寄与できる業務に携わりたい」「成果を自分で感じられる業務を手掛けてみたい」などと直談判してみてはいかがでしょうか。
3の「仕事の成果に対してフィードバックがある」が満たされていない場合は、自分から積極的にフィードバックをもらいにいきましょう。例えば、営業担当者にコンペ用のプレゼン資料作成を頼まれたのであれば、「昨日作成したプレゼン資料はどうでしたか?」と自分から聞いてみるのです。フィードバックが得られれば自分の強みがわかり「次はこうしてみよう」と仕事へのモチベーションが醸成されます。
そして4の「集中できる環境」がないならば、「この業務に集中したいので1時間だけ会議室に籠らせてください」と申し出るなど、自分で集中できる環境を生み出す努力をするといいでしょう。
以上のような努力や工夫、働きかけで1~4を満たす、もしくは現時点よりは水準を高めることはできるはず。まずは、今いる環境を変えることに挑戦してみましょう。
転職で「楽しい」を叶えたいならば、面接の場で確認を
今いる環境の中では、いくら努力しても4つの条件は満たせない、もしくは努力してみたものの満たせなかったという場合は、転職先で叶えるというのも一つの方法です。ただ、これら4つの条件を入社前に推し量るのは難しいもの。面接の場などで質問し、4つの条件が満たされているかどうか自分で最終判断するしかありません。
1の「自分の能力よりも少し上の業務を行う」の場合は、会社説明会や面接の場で「入社後に任される業務」を確認したうえで、「この業務が高い精度でこなせるようになったら、さらに難易度の高い仕事にチャレンジさせてもらえるかどうか」を質問してみましょう。中途採用の場合は、職務範囲が限定された「ジョブ型採用」を取り入れている企業も少なくないので、あらかじめ確認しておくことが大切です。
2の「自分の仕事や目標、成果をコントロールできる状態にある」を確認するには、「業務の目標はどのように設定されるのか、仕事の成果はどのように評価されるのか」を聞けばある程度想像ができます。
3の「仕事の成果に対してフィードバックがある」を確認するには、そのままストレートに「どのようなフィードバック体制を設けていますか?」と質問してしまっていいでしょう。
4の「集中できる環境」は、企業ホームページや求人に載っている画像などからオフィス内の環境をチェックして確認を。ある程度選考が進んだら、社内見学をお願いしてみてもいいでしょう。
「楽しい仕事=得意な仕事」ではない
なお、「楽しい仕事」=「自分が得意な仕事に就けばいい」と捉えている人がいますが、得意な仕事だけこなしていてもフロー状態に至るとは限りません。
「得意な仕事」ということは、自分にとっては難易度が低く、余裕でこなせてしまう状態にある仕事ということ。余裕でできることには没頭しづらく、楽しさを感じるよりも早々に飽きてしまう可能性が大きいのです。
そして冒頭でお伝えしたように、「楽しい仕事」=「その瞬間に楽しいと思えるもの」でもありません。仕事で得られる楽しさとは、エンターテインメントで感じる楽しさのように刹那的で即時的なものではなく、他のことは何も考えずに「ただひたすら業務に没頭できる」こと。そういう状態に至ることができれば、当然スキルも磨かれ、高い成果が出せるようになります。そして高く評価され、ステップアップにもつながる…一石二鳥ではなく、一石三鳥、四鳥にもなり得るのです。ぜひ「楽しい」という言葉に引っ張られることなく、没頭できる仕事を追い求めて下さい。
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